遺伝子組換えの基本情報

実用化されている遺伝子組換え作物

害虫に強い作物

農業は虫との戦いだ、とよく言われます。せっかく丹精こめてつくった作物が、一夜にして害虫に食い尽くされてしまったという話を多く耳にします。
遺伝子組換え技術によって可能となった「害虫抵抗性」という性質は、特定の害虫に対して被害を受けない、つまり害虫に強い性質のことをいいます。このため害虫抵抗性作物は、殺虫剤をまかなくても、害虫によるダメージを軽減することができます。
害虫抵抗性作物は、もともと土壌に生息しているバチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)という微生物から、害虫に強い性質をもつBtタンパク質をつくる遺伝子が導入されたもので、害虫の被害から作物を守ることができます。現在、トウモロコシ、ワタ、ナタネ、ジャガイモなどが実用化されています。

写真の左側の大きいトウモロコシが遺伝子組換え品種(Btトウモロコシ)、右側の倒れて生育が悪いトウモロコシが従来の品種です。Btトウモロコシの方が害虫の被害を受けずに、より大きく育っているのがわかります。

害虫アワノメイガはトウモロコシの茎の中を食害する。トウモロコシは直立できずに茎が途中で折れてしまったり、生育が阻害されてしまう。

米国では、毎年アワノメイガ(ヨーロピアン・コーンボーラー)という害虫によるトウモロコシの被害が発生し、多い時には50%を枯死させてしまいます。ヨーロピアン・コーンボーラーの幼虫は、トウモロコシの茎の中に入り込んでしまうために、殺虫剤も効きにくく、被害が甚大なものになってしまうのです。一方、Btトウモロコシを食べた幼虫は、Btタンパク質によって消化管にダメージを与えられて、餓死してしまいます。このため、農家にとっては農薬散布の手間が省けて、作業、コストとも減るというメリットがあります。
害虫抵抗性トウモロコシは、アメリカをはじめカナダ、アルゼンチン共和国、南アフリカ、スペイン、そしてフランスなどの世界各国で実用化されています。

アワノメイガの幼虫は、茎の中に入ってしまうと、外から農薬を散布しても防除できない。

害虫に食害されたトウモロコシは実りが悪い。食害された部分はカビ毒が発生するリスクが高まる。

10年間(1996~2005年)の遺伝子組換え作物栽培による農薬使用の減少(全世界)

遺伝子組換え作物の形質 農薬の有効成分量の変化(千t)
除草剤耐性ダイズ -51.4
除草剤耐性トウモロコシ -36.5
除草剤耐性ワタ -28.6
除草剤耐性ナタネ -6.3
害虫抵抗性トウモロコシ -7
害虫抵抗性ワタ -94.5
合計 -224.3

害虫抵抗性作物のワタの写真です。
写真(右)の従来のワタは、害虫の被害を受けていますが、
写真(左)のBt遺伝子を組み込んだ品種はほとんど被害を受けていません。

ワタは非常に害虫の被害を受けやすい作物です。そのため、通常は、栽培期間中に複数回にわたって農薬を散布していました。遺伝子組換え作物の栽培によって、農薬の散布にかかる手間やコストを大幅に削減することが可能となりました。

Brookes, G. & Barfoot, P. (2006). Global impact of biotech crops: Socio-economic and environmental effects in the first ten years of commercial use.AgBioForum, 9(3), 139-151