遺伝子組換えの基本情報

実用化されている遺伝子組換え作物

除草剤の影響を受けない作物

農業にとって大敵なのは病害虫だけではありません。作物の周辺にはびこる雑草との戦いでもあります。現在、雑草を防除するために、安全性が高いさまざまな除草剤が開発されており、農家は通常、雑草や作物の種類に合わせて、いくつかの除草剤を組み合わせて使用し、肝心の作物にはダメージを与えないように気をつけています。
そこで、除草の手間を軽減するために開発されたのが除草剤耐性作物です。除草剤の影響を受けない作物としてダイズやナタネ、トウモロコシ、テンサイ、ワタなどがあります。
除草剤耐性作物は、ある特定の除草剤をまいても枯れないよう、遺伝子組換え技術によって作られた作物です。栽培中に除草剤を1~2回散布するだけで、作物に被害を与えることなく雑草だけを枯らすことができるため、効率的な除草が可能となり、農作業の負担を軽減することができます。これによって、農薬の使用量も大幅に削減できるようになりました。(①の表を参照)
たとえば、除草剤の一種であるグリホサートは、植物の生育に必要なアミノ酸の合成経路に関わる酵素タンパク質(EPSPS)の働きを阻害することによって、植物を枯らします。
そこで、EPSPSと同様の働きをしますが、グリホサートの影響を受けないmEPSPS酵素をつくる遺伝子を作物に組み込みます。すると、この作物は、グリホサートをまいても、その影響を受けることなく育ち、雑草だけが枯れます。
現在、グリホサートの他に、グルホシネートやオキシニル系除草剤など、特定の除草剤に影響を受けない作物があります。
1996年から除草剤耐性ダイズの栽培が進められ、栽培面積は年々増加しています。これは、農家自身が除草剤耐性作物のメリットと、栽培しやすさを実感していることを示しています。

不耕起栽培にも有効

除草剤耐性作物は、不耕起栽培(耕さない農業)にも有効です。日本人の感覚では、耕さない農業というと不思議な感じがしますが、表土の流失が深刻な問題となっている米国では、耕さない農業が推奨されています。
米国では、毎年20億トンという膨大な表土が流出のために失われています。土を耕すと、富み肥えた表土が失われやすくなり、耕地が荒地に変わって、農業面でも環境面でも大きなダメージを受けます。そこで、耕さない農法への転換が求められますが、耕起は雑草防除の手段としても有効であるため、耕さないと雑草がはびこってしまうという問題があります。
除草剤耐性作物を栽培すると耕さなくても、効率的な除草が可能となります。また、耕耘作業やトラクターの燃料を削減でき、より効率的な農業ができるようになりました。

除草剤耐性ダイズに特定の農薬を散布すると、作物に被害を与えることなく、周囲に生えている雑草だけを確実に枯らすことができます。除草の手間が減って栽培コストも削減できます。

除草剤を散布する前の除草剤耐性ダイズ畑ダイズとともに雑草も芽吹いてはびこっている。

除草剤を1回散布して10日後雑草だけをきれいに除草できる。この後、ダイズはすぐに成長して地表を覆うため、日光が届かず新たな雑草はほとんど生えてこない。