GMO Answers

質問

質問者 Wilko Schutzendorf

このサイトに掲載される回答はなぜGMO賛成論ばかりなのですか?GMO食品が、伝統的食品やオーガニック食品と比較して劣る点は全くないのでしょうか?

回答

一目で分かる回答

  • GM作物は、20年前に市場化されて以来、大きな成功を収めています。とは言え、特段の問題がないわけではありません。
  • GM作物についての、論じるに値する様々な問題に着目すると、そのほとんどはGM作物に特有のものではなく、他の農業形態にも同様に当てはまる問題であることが分かります。
  • 以下の回答では、一般的に懸念されていることの幾つか、例えば高額な種子や規制のコスト、生殖系列の生物多様性、他家受粉、肥料の使用、そして除草剤抵抗性の雑草など、について触れています。

 

GM作物は、20年前に市場化されて以来、大きな成功を収めています。全米科学アカデミーが2010年に発表したレポート「GE作物が米国における農場の持続可能性に与える影響」には、GE作物に関する詳細な分析が紹介されています。 その結論には:

 「遺伝子組み換え技術は、総じて、従来の農業における非GE作物に比べ、米国の農家に、環境的にも経済的にも著しいベネフィットをもたらしている、と委員会は判断している。」と記されています。 

 とは言え、特段の問題がない、ということではありません―全くないわけではありません。しかしながら、GM作物についての論じるに値する様々な問題に着目すると、そのほとんどはGM作物に特有のものではなく、他の農業形態にも同様に当てはまる問題であることが分かります。以下では、考慮すべき幾つかの問題について触れたいと思います。

 

高額なGM種子

GM種子が他のほとんどの種子に比べ高額であることはよく知られています。GM種子を生産する企業は、市場化をめざす全ての種子製品について、何千万ドルもの費用を費やして試験を行わなければなりません。このために、彼らは、顧客すなわちGM作物の栽培を選択する農家に、割増の料金を請求しています。当然ながら、農家はより安価な種子を望んでいます。しかしながら、彼らは、高価なGM種子とGM種子から得られるベネフィット(雑草管理のし易さ、燃料の節約、時間の節約、汎用殺虫剤の使用に頼らない害虫防除など)を天秤にかけるのです。その結果、商品作物を生産する農家の90%以上は、ベネフィットを得るために、割増料金を支払う選択をしているのです。除草剤耐性(HT)ダイズの特許期限は、まもなく切れます。そうなれば、農家は、初期の除草剤耐性(HT)ダイズ製品には、技術使用契約(TUA)費を支払う必要がなくなります。種子の特許化、それら種子の使用制限や、繁殖目的での植付けは、GM種子に特有なものではありません。種子の特許化は1930年代から行われています。農家は、従来から、特許を受け入れてそれら種子のベネフィットを手に入れるか、あるいは、他の特許化されていない種子を代わりに購入するかの選択を、常にしてきたのです。つまり、この特許問題はGM作物に特有のものではないのです。

 
規制のコスト

市場化には多額の費用を要するため、誰でも簡単に市場に参入できるわけではありません。規制プロセスを経てGM作物が承認されるまでには、何千万ドルもの費用がかかるのです。このため、二通りの結果がもたらされることになります。一つ目は、規制をクリアする費用を賄えるのは、大企業以外にはごく少数であるため、GM作物を市場に送り出しているのは、これらの限られた企業のみであることです。二つ目は、費用が高額に上るため、有益な形質をもつ組換え作物の種類が限定されてしまうことです。小さな会社や大学の研究室の棚には、人々に役立つような遺伝子組み換え作物であふれています。しかしながら、規制に係る費用の負担がどうしても出来ないため、これらの作物が陽の目を見ることはないのです。皮肉なことに、より厳しい規制を求めている人々が、一部の企業によるGM作物の市場の寡占化を推し進めているのが現実なのです。

 
生殖系列の生物多様性

農業とは、いつの時代にあっても常に「最善の生殖系列」である作物を栽培することでした。より良いゲノムをもつ作物は、より高い収量をもたらします。種子の市場では、栽培品種の平均寿命が4年であると言われる事実からも分かる通り、ほとんどの場合、最良の栽培品種を生み出す遺伝子の組み合わせは、複雑で不安定なのです。市場の栽培品種は、より新しい「よりよい」品種に、次々にとって代わられます。これは、将来、様々な遺伝子の源となるかもしれない貴重な生殖系列を、失ってしまう効果をもたらすことになります。しかしながら、このような効果はGM作物に限ったことではありません。どのような形態の植物育種でも起こります。1900年には、7,000種類の生殖系列があると考えられていました。最新の推定では6,500種類とされています。すなわち、一世紀以上にわたる選択育種を経ても、世界で失われた作物の固有生殖系列は、約500種類に留まっていることになります。幸いにも、現在では、現存する生殖系列を保護しようとする幅広い取り組みが世界中で行われています。これに関連する懸念としては、過度に単一栽培が行われていることです。しかしながら、これもGM作物特有のものではありません。一つの畑には全面に一種類の作物が栽培されているのは事実ですが、郡や州、そして世界の国々に広がる農地には、様々な作物が植えられ、多様性に富んでいることが分かります。多くの場所でGM形質が同じであったとしても、それはそれぞれの植物の遺伝的背景が同じであることを意味するものではありません。異なる生殖質は、それぞれ別の場所で最善の効果を発揮するのです。そして、多くの場合、その地方の生産者に役立つ形質を用い、その地方固有の栽培品種が作られます。繰り返しになりますが、遺伝的な多様性は、世界中に広がっているのです。

 
他家受粉

植物は、地球上に植物が誕生して以来ずっと、他家受粉をしてきました。農作物にも同様のことが言えます。 「偶発的混在」とは、ある一つの栽培品種が、別の栽培品種の畑に(花粉あるいは種子の飛散により)少量混在することを意味します。これもGM作物特有のものではありません。農家はこのことを常に認識しており、これを軽減させるために、従来から様々な方法を実践してきました。にもかかわらず、GM作物と有機栽培の作物が他家受粉したことにより(私は感情を含んだ「汚染」という表現を好みません)、有機認証を失ったとか、有機農家に対する訴訟に発展したとかの話を、良く耳にします。その可能性は無いとは言えませんが、自身の畑に微量のGMが存在したからといって、北米の有機農家が有機認証を失ったことはありません。また、有機栽培の畑や作物にGMが偶発的に混在したことで、有機栽培の農家が訴えられたという例もありません。これらは共に神話なのです。USDAのウェブサイトには共存についての説明があり、GM作物が登場して以来、あらゆるタイプの農家が成功を収めていることを示す実例が詳述されています。


肥料の使用

合成肥料の出現により(作物遺伝学の進歩とあいまって)、作物の収量は、過去70年の間に3倍にも増えました。しかしながら、大量に肥料が使われることで、マイナスの影響も生じています。肥料の流出で水圏環境に多大な悪影響がもたらされたのです。ミシシッピ川の河口付近の酸欠海域からエリー湖の藻類異常発生に至るまで、肥料の流出による影響は、十分に裏付けられています。しかしながら、GM作物への批評の多くがそうであるように、これもまたGM作物の生産に特有のものではありません。肥料の流出は、肥料(堆肥を含む)を使用するあらゆる形式の農業で問題となっているのです。研究報告によれば、地下水への窒素の滲出は、合成肥料に比べ堆肥肥料の方が多く、一方、合成肥料は一般にリンの滲出が多いとされています。また、堆肥は、病原性細菌による食品や水の汚染の重大な原因となっています。現在、窒素利用効率に優れた大変興味深い幾つかのGM作物が、実用化に向け規制プロセスにかかっています。しかし、最も優先すべきことは、どのような肥料を使用する場合でも、きちんとした使用の管理を行うことです。

 
除草剤抵抗性の雑草

抵抗性の発達は、普遍的な現象です。除草剤への抵抗性もまた、植物の歴史と同じくらい古くからあるのです。ほとんどの人は、植物自身が、除草剤活性をもつ膨大な数の天然物質を作り出していることを知りません。植物は、生長するための空間をたえず求め、互いに競争しており、自然界には何千種類もの(天然の)除草剤が存在しているのです。GM作物に使用される除草剤に関して言えば、使用管理を改善すべき余地は、間違いなく大きいと思います。何年にも亘って輪作を繰り返し、単一の作用機作をもつ除草剤に過度に依存した結果、雑草に対する選択圧が高まり、抵抗性が発達してきたのです。グリホサートに抵抗性を持つことが分っている雑草の内、ほぼ半分は農家が過度にグリホサートに依存してきたことによるものです。残り半分は、GM作物が登場する以前に、すでに抵抗性を有していたものです。現在、400種類以上の除草剤抵抗性雑草が知られていますが、その多くはGE作物やそれらに使用される除草剤とは、何らの関係もありません。

除草剤抵抗性雑草は、多くの人が言いたがる「スーパー雑草」ではありません。これらのグリホサート抵抗性雑草の多くは、市場に流通する既存の他の除草剤に感受性を有しています(これらの除草剤で防除可能です)。とは言え、グリホサート抵抗性雑草の増加は、農家がグリホサート耐性のGM作物を過度に利用した結果であり、総合的病害虫管理の実践が十分ではないことを如実に示しています。もし農家が、比較的マイルドな除草剤であるグリホサート(多くの古い除草剤よりはるかに低い環境影響指数(EIQ))を、引き続き利用したいのであれば、除草剤の選択や輪作についての使用管理手法(スチュワードシップ)を、大幅に見直す必要があるでしょう。

ヨーロッパの科学的知見については、ヨーロッパアカデミー科学諮問委員会が2013年に発表したレポート「Planting the Future」をご覧ください。そこには次のように記されています:

「植物育種で用いられる他の如何なる技術に比べても、GM作物が健康や環境により大きな悪影響を及ぼすという確たる証拠はない…GM作物が、農家や消費者、環境、経済にベネフィットをもたらし、持続可能な開発目標に貢献できることを示す説得力のある証拠はある。」

GM作物は、農業にとって比較的新しいものですが、世界中の農家に広く利用されています。実際、GM作物の栽培面積は、今や開発途上国が先進工業国を上回っています。しかしすべての技術にも言えることですが、将来これらの作物がどのように活用されるべきかについては、少なからず改善の余地があります。今世紀の中ごろには、世界の人口は90-100億人にも達すると予測されています。ですから、私たちは、あらゆる農業技術(古いものと新しいもの両方)の最善のものを活用し、現在と同様あるいはもっと少ない土地で、より持続可能な方法を用い、より多くの食料を生産できるように手助けしてゆく必要があるのです。GM作物はその解決策の一部にしかすぎません。

回答者 ロバート・ウェイジャー

回答者

ロバート・ウェイジャー

Robert Wager

カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州、ナナイモ、バンクーバーアイランド大学、生物学部、教職員

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