GMO Answers

質問

質問者 Sorgfelt (米国、ペンシルベニア州、ニュータウン)

ドイツの研究によれば、たとえGMOを含んでいそうな食品やGMOに係りのあるような農薬を避けたとしても、都市に住むすべての人々の尿からはグリホサートが検出されるという。放射性物質が体の中にあるよりは、はるかに良いことだとは思うものの、これは喜んでいいことなのでしょうか? それとも、グリホサートは何世代か後に不妊症をもたらすと言われているので、もっとよい環境やビジネス・リーダーのいる別の惑星に引っ越しした方がいいのでしょうか?

回答

ご質問にある尿中のグリホサートについての研究は、BUND(環境と自然保護団体;Friends of the Earthのドイツ支部)というドイツのNGOが実施したもので、その報告書は「欧州18ヵ国のヒトの尿サンプルの残留グリホサート定量分析」と題されています。欧州18ヵ国から集められた182のサンプルについて、グリホサートの残留量を調べたものです。集められた多くのサンプルは、グリホサート陰性で、残留が認められたサンプルでも、その量は欧州連合が定めた一日摂取許容量をはるかに下回っていました。この報告には、サンプルの採取方法やサンプルを採取した人々の食生活の状況、あるいはグリホサートの散布による被ばく量などの詳細が記されていないため、この研究結果から、何か特筆すべき新事実や驚きの事実が見つかったとは言えません。また、食品中のわずかな残留グリホサートは許容されており、安全であると考えられているのです。むしろ食品中のわずかな残留グリホサートを摂取した場合、尿中にグリホサートが検出されるのは当然のことなのです。それはなぜか?そうでなくてはならないからです。グリホサートを摂取すれば、わずかな量が吸収され、残りは糞便として排泄されます。 吸収されたグリホサートは、体内では代謝されず、尿の中に排泄されるのです。さらに、過去40年にわたって、欧州や国際的な公的機関が其々独自に健康評価を行っていますが、一貫して、グリホサートは人の健康に許容できないようなリスクをもたらすことはない、と結論づけているのです。

以上の説明でもまだ尿中にグリホサートがあることが心配でしたら、この研究報告の詳細を探ってみると良いでしょう。例えば、研究報告で示されたグリホサートの量をみてみましょう。既に述べた通り、分析されたサンプルの多くは陰性で、グリホサートが含まれていたサンプルでも、その最大値は、1リットル中に2マイクログラム(10億分の2)以下でしかありません。

これは、欧州連合が定めた一日摂取許容量(0.3mg/体重kg/日)の1000分の1以下で、世界保健機関が定めた許容量(1.0mg/kg 体重/日)の3500分の1以下にすぎないのです。これらは、人が毎日、一生涯にわたり経口摂取しても、健康にリスクを及ぼすことがない安全な量なのです。

[計算方法は後述]

さて、グリホサートは男性の不妊症の原因になると書かれていますが、そのことについて説明しましょう。そんなことは全くありません。これは、クレアらによって行われた研究のことかと思います。この研究は、グリホサート製剤が精巣から採られた細胞に与える影響を調べたものです。この研究報告でなされた一連の実験は、私たちが既に知っていることを実証しています、すなわち、どのような物質を与えても、試験管の中の無防備な細胞は傷ついてしまう、ということです。 実験室の中のペトリ皿で行われた実験は、必ずしも生きた動物にあてはめることは出来ませんし、実際にヒトに及ぼすリスクを把握するには十分ではありません。更に、グリホサートの製剤には界面活性剤(洗剤)が含まれており、これは家庭で使われる洗剤やパーソナルケア製品(例えば入浴剤や手洗い石鹸、シャンプー、洗濯用や食器用洗剤など)に入っている洗剤成分と同様なものですから、細胞膜に影響を与えたとしても驚くにはあたりません。細胞膜には脂質が含まれ(油脂のようなもの)、洗剤は油脂を洗い落とすように作られていますから、そのような洗剤を細胞に直接触れさせれば、細胞は壊れてしまうのです。

別の視点からみれば、私たちは、普段から界面活性剤に触れています。私たちは、大人であれ子供であれ、細胞膜を壊す作用のある食器用洗剤の残さ(洗い残し)を、調理器具や皿、ガラスコップなどを通して、摂取しているのです。にもかかわらず、私たちには、毎日飲んで食べても何の害もありません。私たちはシャンプーで髪を洗っても平気です、しかしながら、そのシャンプーを、実験室のペトリ皿にある細胞に与えれば、その細胞は死んでしまうのです。同じシャンプーで毎日髪を洗ったとしても、私たちが不妊症になることはありません。

計算方法:

研究報告に示された尿中のグリホサートの最大値は、1リットル中に2マイクログラム(10億分の2)以下でした。簡単に計算してみますと、ヒトは一般的に一日あたり2.5リットルの尿を出します。ですから、この最大値は、ヒトの体内にグリホサートが5マイクログラムあったことを意味します。体内の量が5マイクログラムになるようなグリホサートの経口摂取量は(30%は胃腸内で吸収されるとして)、16.7マイクログラムで、これは体重60kgの人の場合、体重1kgにつき0.28マイクログラムのグリホサート量(または、1kgにつき280ナノグラムのグリホサート量)に相当します。この数値は、欧州連合が定めたヒトの一日摂取許容量*の1000倍も低い(1000分の1以下の)数値なのです(*生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出 ないと考えられる一日あたりの量)。

以上の説明の通り、欧州連合が定めた一日摂取許容量に比べ1000倍以上も低く、また、世界保健機関の定めた許容量に比べ3500倍以上も低いということは、グリホサートが健康に何らかの影響を及ぼすことは極めて考えにくいということです。一日摂取許容量というのは、最も脆弱な人々を含め、誰でも何の心配もなく毎日摂取できる量のことで、この許容量自体にも極めて大きな安全係数がかけられているのです。

  • 欧州連合が定めた一日摂取許容(ADI)は0.3 mg/kg/日あるいは、300μg/kg/日です。
  • BUNDの研究報告にある5μgという数字は、体重60kgの人の場合、体重1kgあたり、一日の体内摂取量が0.083μg/kg/日ということであり(5/60)、経口によるグリホサート摂取量に換算すれば、0.083×100/30 = 0.280μg/kg/日となります。
  • 300μg/kg/日を0.280μg/kg/日で割ると、体重60kgの人の一日摂取許容量(ADI)よりも1000倍以上も少ない数値になります。
  • 体重10kgの子供にこの式を当てはめても、一日摂取許容(ADI)より176倍も低い数値となります。
回答者 ジョン・スワースアウト博士

回答者

ジョン・スワースアウト博士

John Swarthout, Ph.D

科学アウトリーチ・課題管理部門、リーダー

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