GMO Answers

質問

質問者 Jay the Foodie (ニューヨーク州、ニューヨーク)

モンサント社は、人工的な遺伝子組み換え作物の遺伝子が、自然の生態系や遺伝子組み換えではない作物に拡散しないことを、どうして保証できるのでしょうか?

回答

この質問への簡単な答えは、この回答の最後の段落に書きましたが、その前に、誤解があるようですので、その点を正し、遺伝子流動について少し話をしたいと思います。

遺伝子組み換え作物の遺伝子は人工的なものではありません。自然界にすでに存在しているものです。例えば、Bt遺伝子は、バチルス・チューリンゲンシスという土壌細菌に含まれるもので、この土壌細菌は世界中のどこにでも存在しています。(賢明なオーガニック農家は、100年近くにわたり、これらの細菌を作物に散布して、Bt作物と同様に、対象とする害虫からの被害を防いできました。) 遺伝子組み換え技術を利用することにより、私たちはBt遺伝子を、正確性と予測可能性をもって、遺伝子組み換え作物の種子に組み込むことができます。作物にBt遺伝子を組み込むことにより、農家は、何回も繰り返してBtを散布する必要がなくなります。

遺伝子組み換え作物の遺伝子が自然のものであるのと同様、遺伝子の動き(遺伝子流動)もまた、自然に起こるものと同様です。当然のことながら、遺伝子の流動は、いずれの農業生産体系でも、同種の作物が隣り合わせで栽培されている場合には、常に起こっています(下に説明)。多くの人々が驚かれ、科学者が魅了されることは、自然の生態系の中でも、遺伝子流動が、異種の植物の間で、たびたび起こっているということです。

私たちは、生物の種類、例えば鳥類は、幾つか別の種類に分かれ、互いには交じり合わない、と理解しています。また、鳥類は決して哺乳類とは交わらない、と思っています。自然界の著しい多様性を仕分けし、分類することを専門にしている生物学者(分類学者)にとって、この生物間の明確な差は、とても重宝なものでした。

しかしながら、母なる自然は、人間の世界観には同意できないようです。例えば、ウイルスは、ヒトや鳥類、植物、バクテリアに感染すると、しばしば宿主の遺伝子形質に、なんらかのウイルス性遺伝子を残すのです。ウイルスがどのような働きをするかを考えれば、これは十分理解できることで、科学者にとって驚きではありませんでした。

科学者を魅了するのは、ウイルスとは関係のない遺伝子の流動量や、分類の垣根を超えて遺伝子が行ったり来たりする範囲なのです。 実際、自然界では分類上異なる生物種の間で遺伝子が移動する、と言う事実が科学者たちに、作物の遺伝子組み換えが出来るかも知れない、というヒントを与えるきっかけになったのです。

作物育種家たちが、遺伝子組み換え作物をつくる際、新たな遺伝子を作物に挿入するために用いるツールの一つに、バクテリア(アグロバクテリウム)があります。これは、自然界で、普通に植物に感染する細菌です。科学者たちが、アグロバクテリウムの遺伝子構成や自然界でこの細菌が感染する植物について、調べ始めたとき、彼らは、細菌と宿主植物がたどった進化の過程のどこかで、アグロバクテリウムが、その遺伝子の一部を植物のゲノムに残し、同時に植物の遺伝子の一部を自身に取り込んでいたことを突き止めました。

ごく最近、顕花植物の進化について論じた記事がでましたので、この記事へのリンクを添付します。ちなみに、この著者は、古来の顕花植物種は、その植物内に棲息する藻類の一種から「受け取った」遺伝子と、その植物の表面に棲息する蘚類の一種から「受け取った」遺伝子を持っている、と述べています。この記事で最も驚いたことは、「遺伝子の水平伝播」あるいは遺伝子流動が、分類上極めて異なる生物種の間で(一つは分類学上の「界」をまたがって)起こるということが、必ずしも注目すべきハイライトとして記されていた訳ではなかったことです。

むしろ、ごく当たり前のようにコメントされているのです。 このことは、自然の生態系における種間の遺伝子流動が、今や、生物学者にとっては、驚くに値しないものとなっている、ことを意味します。

http://shar.es/9TwFV すべての顕花植物の姉妹種である「アムボレラ・トリコポダ(常緑低木)」のゲノムは、この種類の植物が、なぜ優占するようになったかについて、手がかりを与えてくれます。

遺伝子流動については、流動することが問題ではなく、流動がどのような結果をもたらすのかが問題なのです。この問いに答えるため、USDAは、種子の開発者(モンサント社を含め)に対し、GMO作物種子の商業化に先立ち、GMO作物の栽培に起因する遺伝子流動が、自然の生態系に棲息する非標的生物(虫や植物)に害を与えないこと、また、他の作物に害虫リスクを与えないこと、を保証するよう義務付けています。 USDAは、これらの情報を評価するとともに、世界中で実施された関連研究の科学文献を確認した後、はじめて承認の判断を下すのです。

回答者 キャサリン・エンライト

回答者

キャサリン・エンライト

Cathleen Enright

バイオテクノロジー情報協議会 専務理事

回答

ご質問ありがとうございます。

 モンサント社がそのような保証を行う立場であるためには、栽培から消費に至るまで、植物農業を完全に管理できなくてはなりません。現代の農業やフード・チェーンは、そのような形では機能しません。また、モンサント社(あるいはGMO作物を販売するその他の種子会社)が、これらの活動を管理すべきだ、という声を耳にしたこともありません。

種子生産者には、植物品種保護法や従来の一般特許によって、自身の発明種子を、その後の不法な繁殖から守るための権利が与えられていることは、特筆すべきかと思います。このような保護は、バイオテクノロジーの出現する遥か以前から、存在しており、種子生産者には、GMOや非GMOに係らず、法的に自身の種子を保護してきた長い歴史があるのです。

さらに、市場の遺伝子組み換え作物は、USDAやEPA、FDAの要件を十分に満たしてきたことも、特筆すべき点です。 この技術は、米国医師会、高名な全米科学アカデミー、そして米国植物生物学者協会の8000人のメンバーから、支持されてきました。この技術の安全性については、疑うべき確かな理由はありません。

以上の説明が、米国の現代的農業システムに対する理解の増進に役立てば幸いです。

回答者 L.カーティス・ハナ博士

回答者

L.カーティス・ハナ博士

Dr. L. Curtis Hannah

フロリダ大学 教授

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