GMO Answers

質問

質問者 Christopher For...

現在、トランスフェクション・ベクターを作成する際には、標的が定められておらず、よって宿主ゲノムへの遺伝子挿入はランダムに行われていると理解しています。 コーディング領域やDNA調節ユニットへ挿入する遺伝子型を選択するにあたって、研究者はどのような手法を用いているのでしょうか。また、非コーディング領域だけに挿入した場合は、トランスフェクション後に、どのようなことが起こるのでしょうか?

回答

お答えするにあたり、先ず背景として知っておくべきことは、一万年以上もの農業の歴史の中で、作物にはランダムなゲノム導入が、自然に起こっていたということです。 作物によっては、90%以上のゲノムが、このようなランダムな導入によって構成されています。ヒトや動物は、長い年月にわたり、これらの「改変された」作物を安全に摂取してきました。私たちには、このような形で改変された作物を安全に摂取してきた長い歴史があることを忘れてはなりません。

遺伝子組換え作物の場合、ご指摘の通り、現在、植物に遺伝子を挿入する際に用いられている典型的な手法(トランスフェクションシステム)は、標的を定めた挿入とはなりません。しかしながら、全体のプロセスの後半の部分に目を向ける必要があります。研究者たちは、いくつかの特性評価技術を用いて、遺伝子が挿入された位置を把握し、正確に特定します。そして、最も有効な箇所に挿入された(最適な分子特性をもつ)作物だけを選び、更なる研究に供するのです。

他の育種方法を用いて新たな作物品種を開発する場合と同様、研究者たちは、遺伝子組換え作物についても、分子レベルで完全にその特性を明らかにします。より技術的な説明を、次に示します。

  • どのような「イベント」(イベントとは、形質転換された個々の製品のこと)に対しても、研究者たちは、様々な分子生物学的手法(例えば、PCR法やサザンブロット法などのゲノム配列解析手法)を用いて、明らかに形質転換によって挿入されたと考えられる部位の数を調べます。 一般的には単一挿入が含まれるイベントが最善と考えられるため、それ以外のイベントについては同定した上、以降の検討からは除外されます。
  • 研究者たちは、どの挿入部位であれ、ゲノム配列解析手法によって、挿入されたDNA及びゲノム上の挿入位置を特定することができます。これには、イベントのゲノムDNAの正確な遺伝子配列、すなわち、A(アデニン),C(シトシン),G(グアニン)、T(チミン)の核酸塩基配列の同定も含まれます。挿入されたDNAを分析することで、意図した通りに挿入が行われたか否かを確認することができます。 また挿入部位を囲む、あるいは隣接するゲノム配列を分析することにより、生来の遺伝子コードや制御領域が破壊されたか否かがわかります。繰り返しになりますが、意図した通りに挿入され、生来の配列が破壊されていないイベントだけが選ばれ、さらなる作業に供されるのです。
  • 以上の説明の通り、形質転換による挿入の数やそれらの性質について完全に把握することで、私たちは、好ましいイベントのみを同定、選抜し、その他を排除することができるのです。
  • さらに、新らたな品種の開発過程において、研究者たちは、意図しない効果が植物の外形に現れていないことを確かめるため、何千もの植物をスクリーニングしているのです。しかしながら、研究者たちは、このような確認を、遺伝子組換え技術であれ、伝統的育種技術によるものであれ、新たな品種を開発する際には、必ず行っているのです。

最後に申し上げておきたいことは、研究者たちは遺伝子組換え生物をDNAレベルで完全に評価していますが、同様の「挿入」は、作物栽培・消費の長い歴史のなかで、自然界に何度も何度も起こってきた、ということです。そのようにして今に至った作物は、「挿入」による変化にも関わらず、食べても安全であり続けてきたのです。

回答者 デーブ・コバリック

回答者

デーブ・コバリック

Dave Kovalic

モンサント社、規制新技術部門、リーダー

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