GMO Answers

質問

質問者 peter777 (ハワイ州、ケアアウ)

Bt作物がハチに影響することを示す正式な研究報告はありますか?

回答

ご質問を頂きありがとうございます。まず、作物が産生する殺虫タンパク質は、特定の昆虫目に対して極めて特異的に作用します。 例えば、Btタンパク質Cry1Abは、特定の毛虫(鱗翅目害虫)にしか影響を与えませんし、Btタンパク質Cry3Bb1は、特定の甲虫(鞘翅目害虫)にしか作用しません。 この特異的な作用性が、遺伝子組換え作物の栽培やオーガニック作物の栽培の双方で、Btが殺虫剤として広く使用されている理由の一つなのです。 つまり、現在作物に利用されているBtタンパク質は、ハチ類(膜翅目)には影響を与えないのです。

Btの特異性については、関連した質問への回答の中で、他の専門家の方も触れていますので、こちらをご覧ください。

次に、すべての商業用Bt殺虫タンパク質は、ミツバチの幼虫(幼体)やミツバチの成虫を対象にした食餌試験で、その影響が確かめられています。 科学者たちは、Bt殺虫タンパク質を与えたハチと、そのタンパク質を除いた餌を与えたハチについて、比較検討しています。ある研究では、タンパク質を植物由来の形で与え(例えば、餌に花粉や葉組織の一部を含め)、また別の研究では、タンパク質そのもの(例えばCry1Ac)を餌に含めています。 科学ジャーナル三誌(Apidologie、 the Annual Review of Entomology、並びに PLoS ONE)が、個別に実施された32の試験から得られたデータをレビューしていますが、 三誌とも、ハチはBtには影響を受けないと結論づけています。 マロン(Malone)とファム・デリーク(Pham-Delègue)は、7件の研究報告をレビュー(2001年)した結果、 「遺伝子組換えBt製品は、ミツバチ並びにマルハナバチには極めて安全であると考えられる」、と述べています。 また、デュアンら(Duan et al)が行った大規模な研究では、25の個別の研究報告が調査され(2008年)、「毛虫や甲虫等の防除を目的とした遺伝子組換え作物のBt Cryタンパク質は、実験室でのミツバチの幼虫や成虫の生存に有害な影響を及ぼすことはない。」、と結んでいます。 さらに、オーカラガンら(O’Callaghan et al)は、「精製されたBtタンパク質が与えられたハチ、Bt植物の花粉が与えられたハチ、また、圃場のBt植物を摂取したハチについて報じた様々な研究報告を調査した結果、ハチに対するBtの無作用性を指摘した米国環境保護庁(EPA)の見解が正しいことを確認した。」(2005年)と述べています。

最後に、一見したところ、遺伝子組換え作物がハチに影響を与えることを示唆するような研究報告もない訳ではありません。 しかしながら、実際には、作物が問題なのではなく、他の生産要素が原因となっているのです。 このような例には、モランディン(Morandin)とウインストン(Winston)の研究報告(2005年)があります。 この報告には、GMキャノーラ(ナタネ)の栽培で、野生のハチが減少したとの記述がありますが、そのような減少は、従来型あるいはオーガニックのキャノーラの栽培に比べ、GMキャノーラの栽培では雑草の発生が少ないからだ、と筆者は結論しています。

回答者 クリス・サンソン

回答者

クリス・サンソン

Chris Sansone

バイエル・クロップサイエンス社、グローバル規制関係部門マネジャー、昆虫抵抗性管理(北米)担当

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