GMO Answers

質問

質問者 TheAlchemist (ノースカロライナ州、ケーリー)

GMOの賛成派もGMO反対派も、互いに相手方の科学者を「企業に買収されている」と非難しています。それならば、両者が50%ずつ資金を出し合い、研究をすれば良いのではないでしょうか?研究費用の50%をバイオテクノロジー賛成派が出し、残りの50%を反対派が出すのです。あるいは、バイオテクノロジー賛成派、オーガニック賛成派、そして政府が1/3ずつ研究費用を負担することでも良いかも知れません。実験の手順や条件等は、両当事者(あるいは三者)が、事前に話し合って決めることができると思うのですが。

回答

これは興味深い質問です。あなたのご提案に似た試みは既に行われています。例えば、カリフォルニア州議会が設立した産学共同事業を推進するプログラムがそれです。「カリフォルニア大学開発助成金制度(UCDG)は、カリフォルニア大学の研究者たちと産業界の研究者たちによる共同研究を推進するもので、最先端の研究を支援し、カリフォルニア州の経済を活性化させ、公益に資することを目的としています。UCDGが支援する種々の研究プロジェクトは、UCDGおよび産業界の双方からの拠出金によって運営されています。」 1996年にスタートしたこの制度は、近年の景気後退によりカリフォルニア大学への予算が著しく削減されたために、2011年に一時中断されました。民間のパートナーが研究費の半分を負担する意向があれば、カリフォルニア州政府は残りの半分を負担する、というこの制度は、非常に良い成果をもたらしました。例を挙げますと、カリフォルニア大学デービス校、種子バイオテクノロジー・センター(私は同センターのディレクターを務めています)では、UCDGによる助成を受けた数々の研究が行われ、様々な作物のゲノム解読が可能になりました。特に野菜類のゲノム解読のような基礎研究には、UCDGの制度がなければ、これほど巨額な資金援助を得ることは出来なかったでしょう(2012年以前の年次報告書をご参照ください)。これらの研究により、様々な作物の品種改良が、著しい進展を遂げたのです。UCDGの助成を受けた研究の成果は全て、公有財産に帰し、様々な科学誌で発表されます。このことは、大学と産業界とのパートナーシップや協力が実現可能なものであり、産業界にも(研究成果を製品開発に活かすことができる)、大学にも(研究プロジェクトを通じての学生を支援することができる)、そして州政府にも(企業がより繁栄することで、新たな雇用が生まれ、地域社会に経済的利益がもたらされる)、ベネフィットをもたらすことを示しています。

しかし、あなたの質問の趣旨は、おそらく、カリフォルニア大学開発助成金制度が支援している、より基礎的な研究における「協力」についてではなく、リスクの評価や環境への影響、そしてバイオテクノロジーを農業に応用する上での様々な課題を評価するための「協力」のことかと思われます。そのような分野においても、やはり、同様な「協力」は行われています。例えば、私たちは、産業界のパートナーたちと協力して、バイテク・アルファルファやワタと従来の作物との間に、異系交雑が起こる可能性について研究を行いました(例:Van Deynze et al. 2011. Crop Science 51:298-305)。再度申し上げますが、この様な研究からは、科学的に信頼できる結果が得られ、それらは官民双方で活用することが出来るのです。この様に、あなたが提案くださった研究開発システムは、すでにうまく機能してきており、今後も、新たな研究成果を生み出す上でも、また、それらの研究成果に関するコンセンサスを形成する上でも、非常に有効なアプローチとなることでしょう。UCDGが成功裏に機能した要因の一つは、公的資金の投入が、民間企業の参加を呼び込んだことでした。つまり、この様な取り組みに対する政府の財政支援は、民間資金を活用して公的研究を行う上で、大きな力になるのです。

最近、そのような有益な「協力」を妨げるような、憂慮すべき事態が起こっています。産業界のパートナーとの共同研究に取り組んでいる公的機関の研究者たちに、「無意識に偏向している」、もしくは、あなたの言うように「企業に買収されている」、といった烙印を押す動きです。これは、いかなる共同研究も真実を覆す陰謀である、と言っているようなものです。しかし、考えてみてください。仮にあなたが、大学の研究者に研究資金を提供する企業だとして、もし研究者が、実際には真実ではない研究結果を提出してきたとしたら、あなたは満足しますか?企業は、公的機関で行われる基礎研究や探査研究の結果に基づいて、将来の製品開発に向け巨額な投資を行うのです。偏向した研究から得られた不正な結論を基に、将来の重大な投資を決定することが、果たして企業の真の利益になるでしょうか?私は25年以上にもわたり、産業界のパートナーとの共同研究に携わってきましたが、あらかじめ決められた結論を導き出すよう、研究を指示されたり、研究結果を偽装したりすることを、いかなる方法であれ強要されたことは、ただの一度もありません。研究の目的は、事実を明らかにすることであり、意図した結果を導き出すことではありません。私の知る科学者と呼ぶに値する人たちは皆、彼らの研究指針として、このことを堅持しています。

回答者 ケント・ブラッドフォード

回答者

ケント・ブラッドフォード

Kent Bradford

カリフォルニア大学デービス校、種子バイオテクノロジー・センター、ディレクター

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