GMO Answers

質問

質問者 Thomas_Paine07650 (ニュージャージー州、テナフライ) 

GMOは、米国だけでなく、世界の食料確保にとって必須ですか?お考えをお聞かせください。

回答

これは、国際的な開発と言う視点でGMO、もしくは遺伝子組み換え(GE)作物の利用を論じる際に、最も多く寄せられる質問です。しかしながら、この質問には、関連する様々な要素を考慮せずに、単に「はい、いいえ」だけで答えることはできません。

第一には、GE作物あるいはGMO(の定義)が年を追うごとに不明瞭になっているのは、どのようなことが考えられるのかという点です。ここ20年の商品化を振り返ると、GE作物と言えば、遺伝子を挿入することにより、新たなタンパク質を産生し有用な特徴が付与された作物に焦点が当てられていましたが、現在では種々の新たな遺伝子編集技術が状況をより複雑なものにしています。標的を定めた遺伝子編集や遺伝子発現抑制、あるいは突然変異は、自然そのものが植物ゲノムを「変更」するプロセスを、より忠実に再現しています。これらの手法が、「従来の」植物育種手法の延長線上に位置づけられるものか、あるいは遺伝子組み換え手法の一種として扱われるべきものかについては、これらの手法で作られた品種が「従来の」植物育種手法で作られた品種と見分けがつかない可能性が高いため、現在、議論の的になっています。新たな作物品種を生み出すために、将来どのような技術的アプローチがとられるかが分かりませんので、GE作物が世界の食料確保に必須であるか否かを即答するのは簡単ではありません。

第二には、第一世代のGE作物(特に害虫抵抗性形質をもつもの)のインパクトは、高品質な農薬等を入手できる所と、そうでない所では、明らかに相違がある点です。先進諸国や中国、インドの一部では、GE作物は、農家における農薬の使用量削減を可能にし、概ね、正味コストの削減(種子のコスト増は人件費や農薬等の購入費の削減で吸収可能)に役立つ技術であったと考えられます。また、これらの技術は、「不耕起」栽培の促進と言う点で革命をもたらし、燃料の削減や土壌流亡の低減を可能にしただけでなく、土壌の健全性や有機質の改善に役立ちました。発展途上諸国、例えばインドやフィリピン、ブルキナファソでは、総じて増収効果の方が際立っていました。高品質な農薬等の資材を確実には入手できない小規模農家では、生産性の向上が困難でしたが、GE作物はそれを可能にしたのです。

第三には、技術革新の必要性を論じる上で、気候変動の影響を過小評価すべきではないと言う点です。近年、降雨や気温、季節性、病害虫の発生が著しく変動するようになり、農家は作物の栽培方法の見直しを迫られています。従来とは別の作物を栽培することも選択肢の一つですが、それは、文化的な背景やそれぞれの作物に固有なバリューチェーンが既に構築されていることもあり、実際には極めて困難です。このため農家が気候変動に対応するには、より良い品種や、より適切な栽培管理方法を組み合わせて、栽培を行う必要があるのです。より良い品種については、在来型の育種技術を通じ、ある程度は生産性の向上や気候変動への対応が見込めますが、研究者たちは、GE技術を活用することによって、他の方法では実現することが困難な、著しくそして速やかな「変革」をもたらすことができるのです。場合によっては、他によい方法がないときでも、解決策を生み出すことができます。猛威をふるっているキャッサバ褐色線条病が良い例です。キャッサバはアフリカの大半が主食としている作物ですが、現在、この病気を抑える手立ては、キャッサバの遺伝子プールを探しても見つかっていません。しかしながら、この病気に抵抗性を示す幾つかのGE品種が開発されつつあるのです。

以上のような要因を基に、GE作物が世界の食料確保に必須かと問われれば、多くの主食作物において、また解決困難な問題に対応する上で、現時点での答えは、「はい」となります。GE作物が様々な貢献をなす可能性は、農場における生産性の向上と熱帯雨林や他の重要な動植物の生息地の保全との結びつきを考えれば、今後益々大きなものになるでしょう。作物の生産性の維持・向上は、農地の拡大を防ぐ上で役立ちます。農地の拡大を抑えられなければ、生物多様性や河川流域、海浜環境、そして、それらがもたらす様々な環境保全機能などの喪失につながります。GE作物は、歴史上、もっとも急速に普及した技術の一つです。その理由は、農家に、収入の増加につながる、明確で納得できる直接的なベネフィットをもたらしたからです。もし世界で1,800万人もの農家が、他の方法で同様なゴールを達成できると考えていたならば、私たちは、GE作物の過去20年にわたる継続的な成長を目の当たりにすることはなかったでしょう。単純明快な理由です。

回答者 ロブ・バートラム

回答者

ロブ・バートラム

Rob Bertram

米国国際開発局、 食品安全局、主席科学官

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