GMO Answers

質問

質問者 JamieR (オハイオ州、Navarre)

GMOはこの先どうなるのでしょうか?将来的にはすべての作物が遺伝子組み換えになるのでしょうか?

回答

将来全ての作物が遺伝子組み換えになるか。この質問にお答えすることは容易ではありません。当初、遺伝子組み換えの対象は主要な穀物(例えば、トウモロコシ、ダイズ、ワタなど)に限られたものと考えられていました。遺伝子組み換え作物の研究や開発、そして商業化のための承認獲得には膨大な費用がかかるため、主要な穀物以外のほとんどの作物は、そこまでの投資をするに値しなかったためです。しかし、革新的で有用な新技術の登場により、そのようなコスト面におけるハードルが徐々に低くなってきています。これらの技術の大部分が、医療や工業分野における遺伝子組み換え技術の幅広い応用を目的として開発されたものです。最近では、主要作物以外の農産物、例えばオレンジ、トマト、ジャガイモ、リンゴなどについても遺伝子組み換え品種が開発され、承認間近のものもみられます。これらの作物を開発したのは、小企業、もしくは、農業生産者団体からの寄付金を得た大学の研究グループです。発展途上国の農家の助けとなる代表的な遺伝子組み換え作物は、政府機関、あるいは非営利団体、もしくは両者の協力により、開発されてきました。現在「ゲノム編集」の分野では、従来技術に比べ迅速かつ低価格での開発を実現する、素晴らしい最新ツールのいくつかが注目を集めています。従来型のバイテク技術にかけられた特許の多くが切れ始めているため、新規参入が今後ますます容易になるでしょう。技術的な面から言えば、今後さらに多くの遺伝子組み換え作物が開発される可能性は大いにあります。

これらの技術が実際に商業化されるかどうか、つまり、農家が実際にこの技術を活用できるかどうかについては不確実です。科学的研究によりこれらの技術の安全性が立証されており、そして、国内の農家がこれらの技術による利益享受を望んでいるにもかかわらず、多くの国々(EU諸国のほとんど)で、規制当局が今なお技術の導入を妨害しています。発展途上国では、反GMO活動家の圧力が規制機関に影響を与えることがよく見受けられます。その為、発展途上国の小規模農家は、組換え作物をほとんど利用できずにいます。

工業先進国の食料システムにおいて大きな力を持つ企業(製造加工業者や食品製造業者、食品小売業者など)は、食品原料として一般的に良く使われる作物が遺伝子組み換えで作られるようになった場合に、反対派の抵抗にあい、自社のブランドが傷つくことを恐れています。多くの場合そのような企業は、独自のサプライチェーンを支配し、遺伝子組み換え作物の商業化を拒絶するだけの十分な影響力を有しています。反GM活動家たちは、かねてから、その影響力を行使するよう、企業に大きなプレッシャーをかけています。農業生産者は往々にして、目に見えて起こる反GM活動家による反対運動が、消費者の恐怖心をあおり、栽培作物のイメージが悪くなることを懸念しています。

将来的に、遺伝子組み換え技術を応用した作物が増えていくか、あるいは、この技術の応用が数種類の主要な作物に限られたままなのかは、現在ある遺伝子組み換え作物の事例が今後どのような展開を見せるかに大きくかかっています。フロリダ州のオレンジ農家は、新種の外来バクテリアによる病害発生を防ぐ手段として、遺伝子組み換え技術を導入するでしょうか?カットしても変色せず、ビタミンが失われないという遺伝子組み換えリンゴは、消費者に受け入れられるでしょうか?アンデス地域原産のジャガイモの野生種からの遺伝子を導入し病害抵抗性を持たせたジャガイモの栽培に、農家は踏み出すでしょうか。またこのジャガイモの利用が広がった場合、物理的損傷による変色、あるいは貯蔵中の糖の蓄積が原因で破棄されるジャガイモの量は低減されるでしょうか?

ここで、「将来的にはすべての作物が遺伝子組み換えになるのか」という質問への答えをもう一度考えてみたいと思います。技術的観点、特許、そして、コストの面から申し上げますと、答えは「イエス」です。しかし、依然として法規制が科学的原理に則っていないこと、そして「ブランドイメージが傷つく」という脅迫力が働いていることを考慮すると、この質問への答えが「ノー」となる可能性は十分にあります。

回答者 スティーブ・サヴェージ

回答者

スティーブ・サヴェージ

Steve Savage

サベージ&アソシエイツ社、コンサルタント

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