GMO Answers

質問

質問者 debata (フロリダ州、ウィンタースプリングス)

GMOは元々、どのようなことをめざして作られたのですか?

回答

GMO開発が目指すところ、そして、そこから生まれるプラスの効果は多数あります。その一つは、病害虫抵抗性を持つ作物や、低コストで環境負荷の少ない除草剤に対する耐性を持つ作物の開発です。これらの作物により、病害虫を防除するためにしなくてはならない厄介な農薬散布の量や回数を減らすことができます。

作物の栄養の向上もまたGMOの開発目標の一つです。例えば、「ゴールデンライス」(商業栽培未承認)は、ビタミンAを産出するよう遺伝子組み換えが行われたイネで、貧しい社会における失明者数を減らす目的で開発されました。しかし、残念なことに、ゴールデンライスの承認の進行は行き詰まっています。その他、果物や野菜の長期保存を可能とすることや、食品廃棄物の量を減らすことを目的として開発されたGMOもあります。更に、将来的には、干ばつによる被害を受けにくく、土壌からより多くの養分を吸収することのできるGM作物が開発されるでしょう。

育種の仕事に携わって初めの10年間、私は、従来の育種法を用いたワタの食害軽減に努めました。育種によりワタのゴシポール含有量を高めることで、害虫の食害を最大で10%削減することに成功しました。ゴシポールとは、ワタ植物に含まれる天然成分で、チョウ目害虫に毒性を示しますが、それはまた哺乳類に対しても有毒なのです。他の科学者たちにより、ワタ植物にバチルス・チューリンゲンシス(Bt)と呼ばれる土壌細菌の遺伝子を導入し、チョウ目害虫にのみ有効な殺虫性タンパク質を生成する遺伝子組み換えワタが開発されました。この殺虫タンパク質は、他の生物に対しては全く無害です。この様に開発された「Btワタ」は、完ぺきな害虫防除を可能とし、現在までに副作用の事例はひとつも報告されていません。一方、40年の歴史を持つ従来の育種法により実現した害虫防除率は僅か10%で、その上、有害な副作用の発生が伴いました。

従来の育種技術が非常に望ましい解決法となる場合が多々あるという事実もご承知おき頂きたいと思います。我々は、従来の育種技術を用いて、線虫被害を著しく軽減させ、白葉枯病の発生を完全に抑えることに成功しています。場合によっては、従来の育種技術を用いることで、遺伝子組み換え技術によるアプローチよりも効果的な問題解決が実現する場合があります。しかし、従来の育種技術での対応が困難な場合にも、遺伝子組み換え技術により、問題を解決し、社会や環境に対し非常に大きな利益をもたらすことが可能です。

GMO開発の由来について更に詳しい情報をお知りになりたい場合は、以下のGMOアンサーズ掲載記事「GMOは元々何のために作られたのですか?」(英語)をご参照ください。

回答者 スティーブン・カルフォーン

回答者

スティーブン・カルフォーン

バイエル社、地域育種管理部長

回答

遺伝子工学、あるいは遺伝子改変技術が開発されたのは1970年代のことで、1980年代初頭に医薬品製造分野で、そして1990年代初頭には農業分野において、商業利用がスタートしました。医療品製造分野での応用を目的とした遺伝子組み換え技術の詳細につきましては、かつてバイオ医薬品製造管理者であったリチャード・グリーン氏の記事「要約:遺伝子組み換え技術を利用した食べ物と医薬(英語)」をご参照ください。

GMOが開発された理由は様々で、その利用目的は多岐にわたります。まず、GMOの定義を明らかにします。GMO作物は、遺伝子工学を使って開発されます。遺伝子工学とは、植物への外来形質の導入、あるいは、形質改変を可能とする高精度な育種技術です。「農業バイオテクノロジー」あるいは「バイテク種子」という言葉を聞かれたこともあるかも知れません。これらの言葉が、遺伝子組み換え生物(GMO)を意味するものとして使われることもあります。

それでは、なぜGMOが開発されたのでしょうか?農業分野におけるGMOの開発目標は、作物にある有用な形質を付与するというものです。例えば、下の表に示した通り、害虫抵抗性や除草剤耐性、あるいは栄養成分の強化などがあります。農家が、彼らの農場やビジネスに最適な種子を選んでいることを思い起してください。どの種子、どの資材、どの管理方法が彼らの土地、ビジネス、栽培条件に合っているのか、決めるのは彼らです。農家は様々な選択肢から種子を選ぶことができ、その中にはバイテク種子もあれば、従来育種種子、有機栽培種子もあります。

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GMOが開発された背景をより深く理解するためには、作物の改良技術がどのように発展し、今日私たちが口にする農作物がどのように作られてきたかを見てみる必要があります。1万年前に人類が農耕や牧畜を開始して以来、農家は、すべての栽培作物と家畜に対し遺伝子構成の変更を行ってきました。有機作物や在来作物も含め、今日市販されている果物や野菜、そして穀物の全てに人為的な遺伝子改変が行われてきたのです。

20世紀後半には、科学技術の発展により、作物の遺伝的多様性を拡大することに成功しました。大学、政府、そして企業に属するそれぞれの科学者たちが、何年にもわたり、遺伝子工学の研究に熱心に取り組み、技術を進歩させてきました。そして、その最大の成果は、遺伝子組み換え種子の誕生です。遺伝子組み換え種子は、少ない耕地でのローインプット農業を可能とし、その上、作物生産量の維持または増大を実現します。広大な耕地を必要とせず、資源や労働力の投入を減らすことのできる農業は、農業生産活動による環境負荷を減らし、農家の生産コストを軽減します。

この表(出典:ヨーロピアン・バイオテック・ウィーク)には、古代エジプトから現在に至るまでの農作物の改良の歴史(英語)が示されています。また、クロップ・ライフ・アメリカが提供する動画(英語)では、近代農業がたどってきた80年の歴史を振り返ることができます

遺伝子工学は、GM作物の開発のみならず、持続可能な農業の実現など、社会への間接的な貢献もしています。カリフォルニア大学デービス校PIPRA(Public Intellectual Property. Resource for Agriculture)科学技術ディレクターであるセシリア・チハム(Cecilia Chi-Ham)氏は、この質問と同様の質問に対し、「社会は、科学を利用する役割を担っています」と説明しながら次のように返答しています。

「バイテク作物は、何百万人もの消費者に大きな経済的利益もたらし、農業由来の温室効果ガスの排出量を削減し、表土流亡を防ぎ、そして、毒性のある多くの農薬の使用量を大幅に減らしてきました。」

チハム氏の説明の全文(英語)はこちらをご覧ください

農業専門家で、農家でもあるブライアン・スコット氏は、GM作物の栽培にどのような利点があるかについて以下のように語っています。

「害虫抵抗性(Bt形質)により、トウモロコシに大きな被害を与える特定の害虫による食害から作物を守ることが出来ます。これらの害虫が経済的損害を及ぼすようなレベルで発生したとしても、Bt作物は被害を免れることが出来ます。それが害虫抵抗性形質の最大の利点です。」

「除草剤耐性はとても役立つ技術です。様々な除草剤耐性形質を持つ作物が開発され販売されていますが、現在のところ、我々の農場で栽培している除草剤耐性作物はラウンドアップ・レディーのみです。私たちが栽培しているダイズの全て、そしてトウモロコシの一部が、除草剤耐性作物です。」

ここでの情報が質問へのお答えとなれば幸いです。

回答者 コミュニティ・マネジャー

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