GMO Answers

質問

質問者 esyme (コネチカット州、イースト ウィンザー) 

遺伝子組み換え技術は私たちにどのような利益をもたらしますか?

回答

遺伝子改変とも呼ばれる遺伝子組み換え技術は、私たちの暮らしに様々な形で貢献します。

遺伝子組み換え技術は、農作物の栄養価を高め、更には、乾燥耐性や害虫抵抗性を付与することにより作物の生育をサポートします。以下に、遺伝子組み換え技術を使って、作物や植物に付与することのできる形質をリストアップしました。

  • 害虫抵抗性:この形質により、栽培農家は、栽培期間を通し、対象害虫による被害を防ぐことが出来ます。そして、殺虫剤使用量の削減、生産コストの節約が可能となります。
  • 乾燥耐性:この形質を持つ組換え作物は、非常に乾燥した条件下においても栽培が可能であるため、水資源やその他の環境資源の保全につながります。
  • 除草剤耐性:栽培作物にある特定の除草剤に対する耐性を持たせることで、除草剤の使用が必要な場合のみで済むようになります。また、不耕起栽培が可能となるため、表土の保全、土壌流出の防止、そして炭酸ガス放出量の削減にも有効です。
  • 病害抵抗性:ハワイのパパイヤ農家は、遺伝子組み換え技術を使い病害抵抗性を持つパパイヤが開発されたおかげで、かつてパパイヤ生産に壊滅的な打撃を与えていたパパイヤ・リングスポット・ウィルスの被害から立ち直ることができました。
  • 栄養成分の強化:オリーブオイルのように、安定性に優れ、またトランス脂肪酸を含まない、油脂組成が改良された遺伝子組み換え大豆が現在開発段階にあります。

 

遺伝子組み換え技術は、様々な環境下においても生育できる植物や作物の開発のみならず、私たち人間の生活にも大いに役立っています。カリフォルニア大学デービス校PIPRA(Public Intellectual Property Resource for Agriculture)科学技術ディレクターであるセシリア・チハム(Cecilia Chi-Ham)氏は、この質問と同様の質問に対し、「社会は、科学を利用する役割を担っています」と説明しながら次のように返答しています。

「バイテク作物は、何百万人もの消費者に著しい経済的ベネフィットをもたらし、農業由来の温室効果ガスの排出量を削減し、表土流亡を防ぎ、そして、毒性のある多くの農薬の使用量を大幅に減らしてきました。」

カリフォルニア大学デービス校Seed Biotechnology Centerセンター長を務めるケント・ブラッドフォード(Kent Bradford)氏もまた、遺伝子組み換え技術が、人間社会ならびに農業に貢献することを強く訴えています。

「農業の規模を拡大すれば生産量が増えます。しかしそれには、生物多様性への負の効果や、大気への炭酸ガスの放出、表土流亡、そして様々な土壌養分の損失が伴います。農地を拡大することなく、食料生産を増加するには、効率良く生育する作物が必要です。例えば、肥料や水を効率的に利用できる作物、あるいは、病害虫に対する抵抗性が強化された作物、そして、可食部分(種や果実)により多くの栄養分を貯える作物などです。」

「遺伝子組み換え技術は、これらの全ての目的の達成に貢献することが出来ます。養分利用効率を改善した作物、干ばつあるいは湿害への耐性を高めた作物、病害虫抵抗性を強化した作物、そして、栄養価の高い高収量の作物。この様な作物の開発が可能であることは、すでに研究により証明されています。食料生産による地球環境への負荷を最小限に抑えようと努力しながら、いまだ増加し続ける世界人口に十分な食糧を供給するためには、我々が、この作物改良技術を積極的に利用すべきではないでしょうか。

遺伝子組み換え技術が環境保護にどのように役立っているかについてご興味がある方は、クロップライフ・インターナショナルによる以下の資料をご覧ください。遺伝子組み換え技術が農業の持続可能性にどのように貢献しているかについて、詳細な情報とインフォグラフィックを用いて説明されています。

 

出典:https://www.isaaa.org/resources/infographics/biotechcropsbenefits/ISAAA-Infographics_Benefits.pdf

回答者 コミュニティ・マネジャー

回答者

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コミュニティ・マネジャー

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GMOAnswers.comのモデレーター

回答

概要:バイオテクノロジーは、医療、工業、および農業まで、様々な分野で実用化されています。科学者たちの努力により、遺伝子組み換え技術は、これまでに、特定の病気に対する治療や環境問題解決への取り組み、そして食料やエネルギーの生産などに応用され、私たち人間に多大な利益をもたらしてきました。

遺伝子組み換え技術は、自然界で起こるプロセスから発展したもので、遺伝子組み換え生物(これらの生物は、今までにない、あるいは質の異なるタンパク質を発現するように遺伝子配列が改変されている)を開発するために科学者たちが用いるツールキットの一部です。これらの遺伝子組み換え生物は、様々な方法で利用され、人々に恩恵をもたらします。例えば、研究ツールとして:新たな治療法の研究開発のために、ヒトの遺伝的疾患を再現するように遺伝子組み換えされたマウス。あるいは、人類に有用な物質を産生する生物。

遺伝子組み換えの医療への貢献

人類に利益をもたらす遺伝子組み換え技術の初期の例として、バクテリアの細胞を使ったヒトインスリンの生産が挙げられます。この技術が開発される以前は、糖尿病患者にはブタのインスリンが投与されていました。バクテリアにより生産されたヒトインスリンが使われるようになったことで、インスリン生産のために必要となる動物の数が劇的に減少しました。また、遺伝子組み換え技術を用いて生産されるインスリンの分子構造は、実際のヒトインスリンの分子構造と変わらないため、糖尿病患者への副作用が著しく軽減されました。遺伝子組み換えインスリンの生産が成功して以来、新たに多くのヒトタンパク質が遺伝子組み換え技術を利用して生産されてきました。この技術により、何百万人もの生活が改善されたと言えます。

つい最近、ヒト体内に存在する抗体の遺伝子組み換えにより、癌などの病気を対象とした治療薬の開発が可能となりました。遺伝子組み換えされたこれらの抗体には、癌細胞に対し死滅効果のある分子が備わっていたり、あるいは、改変により癌細胞への吸着力が強められ、患者自身が持つ癌細胞を死滅させる免疫システムを活性化したりするものがあります。

遺伝子組み換えの工業への貢献

バイオテクノロジーの工業的利用により、酵素などの生体分子の生産が可能となり、製造工程の改善につながります。その一つの例が、チーズ製造に不可欠な原料であるレンニンの生産です。レンニンは、若い動物の胃の中で乳を消化するために生成される酵素で、チーズカードの製造に利用されます。元来、仔牛の胃から採取されていましたが、現在では、もっぱら、遺伝子組み換え微生物を使っての生産が主流となっています。

遺伝子組み換えの農業への貢献

農業用バイオテクノロジー(グリーンバイオテクノロジー)には、植物の遺伝子組み換えおよび、現代植物育種技術が含まれます。最も多くの遺伝子組み換え品種が作られている作物は、トウモロコシとダイズです。遺伝子組み換えした作物は、害虫に対し殺虫作用のある成分を産生するため、収量増加をもたらしますが、この成分は、動物や人間には影響しません。これらの作物は、害虫による壊滅的な被害を受けることはありません。その結果、作物収量の向上と農薬使用量の減少により、農家の増収を導きます。除草剤耐性を有する作物もまた、除草剤で処理することにより、作物と競合する雑草のみを枯らすことが出来るため、収量増加につながります。世界人口は増加し続けていますので、収量の向上は重要な課題です。そして、殺虫剤使用量の削減が、多様な種類の植物や動物が共存する環境を意味する生物多様性の維持に有益であることが示されています。将来、作物の遺伝子組み換えにより、作物収量が増加し、少量の水での栽培が可能となる、あるいは、高い栄養価の作物が作られるかもしれません。例えば、「ゴールデンライス」には、ビタミンAの前駆体(ベータカロチン)が通常のコメより多く含まれています。主要な食料源により十分なビタミンAが摂取できないような国々、そしてそのビタミンAの欠乏が視力喪失を招いているような国々において、このゴールデンライスを活用することが出来るでしょう。

今後の遺伝子組み換え

過去5年間で進展したゲノム研究の成果と、遺伝子組み換えの様々な新技術とが一体となることで、非常に精密な遺伝子改変が可能となりました。更に、これらを用いて、個々のゲノムに対し特定の変異を誘発することも可能です。その一つの例として、病気の原因となる突然変異の修復が挙げられます。これらの技術を使い、仮に、血液から細胞を分離し、遺伝的欠陥を修正し、細胞をもとに戻すことが出来れば、遺伝病患者の苦しみを緩和することが出来るでしょう。現在、多くの医師が、患者自身の細胞を使うこの治療法には、心臓移植や肝臓移植に伴う厳しい投薬計画が必要ないという利点があり、この治療法を用いて、様々な遺伝的免疫不全、あるいは、筋肉消耗疾患の治療が可能であると確信しています。

特定の疾患に対する治療法の開発や、食糧およびエネルギーの生産など、遺伝子組み換え技術は、既に、我々人間に大きな利益をもたらしてきています。技術が更に改善され、そのメカニズムの理解が進むことで、将来、人類の福祉を増進するためのプロセスが更に発展していくことでしょう。

回答者 エリザベス・ベイツ

回答者

エリザベス・ベイツ

Dr. Elizabeth Bates

バイエル社、種子・形質安全部門、部門長

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