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2008/03/28更新

バイテク情報普及会 セミナー「世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培に関する状況:2007年」を開催

バイテク情報普及会は2月25日、「世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培に関する状況:2008年」と題したセミナーを開催しました。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)会長のクライブ・ジェームズ氏と、ISAAA国際コーディネーター兼東南アジアセンター理事長のランディA・ホーテア氏を講師に迎え、世界の遺伝子組み換え作物の栽培状況と世界に与えるインパクトについてご講演いただきました。

日時:2008年2月29日 10:30-12:00
会場:大手町ファーストスクエア
講師:クライブ・ジェームズ氏(ISAAA会長)
ランディ・ホーテア氏(ISAAA国際コーディネーター兼東南アジアセンター 理事長)
講演資料:ISAAA概要書(ランディ・ホーテア氏)
遺伝子組み換え作物の過去・現在・未来(クライブ・ジェームズ氏)
※資料の転用・転載はご遠慮ください

セミナーのポイント

  • 2007年の遺伝子組み換え作物(GMO)の栽培面積は前年比12%増加し、1億1,430万ヘクタールに達した。
  • GMO栽培国にはポーランドとチリが加わり23カ国となった。生産者は1200万人に達し前年より200万人増加した。
  • GMOの普及により穀物価格の高騰を沈静化、貧困や飢餓の軽減、農業による環境影響の低減などが期待される。
  • 開発途上国でGMOを栽培する世帯では、女性や子供が社会的恩恵を受けている。
  • 2015年には40カ国、2億ヘクタールでGMOが栽培されると将来予測されている。

はじめに、ランディ・ホーテア氏よりISAAAの活動について紹介が行われました。

●ISAAAの活動

ISAAAは1991年に設立された国際的非営利団体です。開発途上国の貧困軽減を目指し、バイオテクノロジー技術の移転や、知識・情報の共有化するための活動を行っています。ISAAAは政府組織や民間企業と共に、開発途上国のニーズを満たすことのできるバイオテクノロジーを特定し導入を支援しています。例えば、東南アジアではウィルス抵抗性パパイヤの開発、アフリカでは成長の早い樹木の栽培やバナナの改良などが行われました。

続いて、クライブ・ジェームズ氏より、2007年の世界の遺伝子組み換え作物の作付動向に関する報告書をもとに、世界の受け入れ状況、12年間のインパクト、将来予測の3つを焦点とした講演が行われました。

●世界の食糧・飼料・繊維・燃料の安定確保と貧困・飢餓の軽減

世界人口は2050年には90億人に増加し、1人当たり耕作可能地は1966年の3分の1にあたる0.15ヘクタールまで減少すると予測されています。現在、食糧・飼料・繊維の主原料となる作物は年間65億トン生産されている一方、貧困や栄養失調に苦しむ人は8億5千2百万人、貧困に苦しむ人は13億人にものぼります。

ジェーズ氏は、こうした人々を救うためには「同じ土地面積で食糧、飼料、繊維の生産量を持続的に2倍にする必要がある」と述べました。従来の作物改良技術だけでは不可能だが、遺伝子組み換え技術と組み合わせることで相乗効果が生まれ、食糧供給の倍増に近づくとの考えを示しました。さらに原油価格や穀物価格の高騰により食料や飼料価格の上昇問題を指摘し、価格安定のためにも遺伝子組み換え技術は不可欠であるとその重要性を訴えました。

また、農業は2015年までに飢餓と貧困の半減を目指す国連ミレニアム開発目標(MDG)の達成にとっても重要な手段であるが、「世界でこうした状況を認識している人はまだ限られている」と指摘しました。

●世界の遺伝子組み換え作物受け入れ状況

世界の遺伝子組み換え作物の作付面積は1996年以来12年連続で二桁成長を続け、2007年には1億1430万ヘクタール(前年比12%増加)となりました。生産者数は1200万人に達し、その90%は開発途上国の小規模農業生産者であることが報告されました。栽培国にはポーランドとチリが加わり、現在23カ国で商業栽培が行われています。世界人口の55%にあたる36億人が遺伝子組み換え作物栽培の恩恵を受けており、日本を含めた52カ国で遺伝子組み換え作物の輸入が承認されています。

開発途上国における栽培面積の伸びは、先進国の6%に対して21%と顕著であることが示されました。中でも特に、主要栽培国である中国、インド、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカの5カ国は世界人口の40%を占めており、農業GDPは6500億ドルに達することから、世界的な影響は大きいと述べました。

遺伝子組み換え作物12年間のインパクト

遺伝子組み換え作物の導入によって農業の生産性や所得が向上し、1996~2006の11年間で世界の農業所得が340億ドル増加しました。この恩恵は先進国175億ドル、開発途上国165億ドルとほぼ同レベルでした。ジェームズ氏は、遺伝子組み換え作物の栽培が単なる生産性や所得の向上にとどまらず、様々な恩恵をもたらすことを次のように示しました。

2007年には1100万人の小規模農業生産者の貧困を軽減し、出産前の診察数や予防接種率、就学率の上昇など「女性や子供の社会的恩恵」につながりました。

同じ栽培面積で作物生産量を倍増することができれば、焼畑農業や熱帯林伐採を食い止め、開発途上国で損失がすすむ「森林や生物多様性の保護」にも良い影響を与えるだろうと述べました。

農薬使用の必要性が低減することにより散布のための化石燃料使用が減少したり、不耕起栽培を導入したりすることが二酸化炭素排出量の減少につながるとし、「温暖化問題にも貢献している」と主張しました。

遺伝子組み換え作物の将来予測と課題

2015年には、遺伝子組み換え作物の栽培国は40カ国に、栽培面積は2億ヘクタールとそれぞれ約2倍増加し、生産者数は約10倍の1億人に増加すると予測されています。今後は、消費者に健康面でメリットのある作物、気候変動に対応した作物、低コストでバイオ燃料を生産に適した作物などの実用化が期待されています。

ジェームズ氏は今後の課題として、開発途上国の負担にならないような「責任ある規制と効果的な管理」と「社会とのコミュニケーションの向上」を挙げました。メディアに対して、「既に5000万人の生産者が遺伝子組み換え作物の栽培を行うと判断している」という常識に基づいてメッセージを発信していくことが重要であると訴えました。

最後に、ジェームズ氏は、13億人の命を脅かしている貧困の緩和に向け、「日本がバイオテクノロジーによる持続可能な農業の実現に取り組むことを望む」と述べて講演を締めくくりました。

両氏の講演後、質疑応答が行われました。

●質疑応答

【Q1】:北海道では遺伝子組み換え作物の栽培が許可されていないが、政府のコモンセンスを変える良い手段はないでしょうか。
【A1】(ジェームズ氏):テクノロジーの導入についての最善の策は実際に栽培している国を訪れることです。立案政策者、科学者、バイオテクノロジーの専門家、生産の専門家などがチームを組み、インド、アメリカ、オーストラリアなど現地を訪問し、問題に直面した際どのように対応したのか、実際に聞くことが大切だと思います。

【Q2】:昨年のデータではイランがコメを栽培していたと思いますが、現在は栽培されていないのでしょうか。
【A2】(ジェームズ氏):現在、イランが遺伝子組み換えのコメを生産しているというデータはありません。イランはトランモライという高品質のコメを開発し、2006年には栽培をしていました。当時の政権はバイオテクノロジーのコメに誇りを持っていましたが、政権が交代して政策が変わってしまったためですが、農業生産者はこれを非常に受け入れたとのことです。

【Q3】:規制が足を引っ張った事例はあるのでしょうか。
【A3】(ジェームズ氏):いくつかの新たなデータが出ていますが、ブラジルの遺伝子組み換え大豆導入率の調査では、規制や承認の遅延がもたらしたコスト的影響について、損失利益は約45億USドルと試算されています。アフリカの事例としては、南アフリカ共和国では10年間Btワタが栽培されていますが、地理的環境・栽培環境がほとんど同じケニアでは導入されておらず、ワタ栽培地域の貧困は深刻です。議会に対し、南アフリカ共和国の経験の蓄積、貧困削減についての科学的根拠などに基づいて議論を展開することができるでしょう。もしアジア地域でゴールデンライスがすぐに導入されていれば、現在50万人が失明し、数百万の人々が命を失っていますが、こうした人々に恩恵をもたらすこともできたでしょう。

【Q4】:ロシアでは遺伝子組み換え作物を栽培していないのでしょうか。
【A4】(ジェームズ氏):ウィルス耐性と害虫抵抗性のジャガイモを開発しており、これは現在評価段階にあるため近い将来商業化されるでしょう。

【Q5】:遺伝子組み換え小麦の認可はどのような見通しでしょうか。
【A5】(ジェームズ氏):除草剤耐性、カビなどの毒素への耐性、干ばつ耐性などの形質を持った小麦が現在開発されており、5年以内には入手できる見通しとされています。

【Q6】:遺伝子組み換え作物がバイオ燃料に使用されることに対し、食糧になる作物が燃料として使われるため、もったいない等の意見はありますか。
【A6】(ジェームズ氏):食糧・飼料・繊維のために生産された作物がバイオ燃料に転用されるということは確かに大きな課題で、例えば一つの政策として中国では、政策でトウモロコシをバイオ燃料へ転用することを禁止しています。ただし、バイオ燃料と、食糧・飼料とのこの間の駆け引きはおそらく第一世代の作物のみの問題と考えます。今後10年で、スイッチグラスやポプラのような食糧にならない、いわゆる「エネルギー作物」が実現すると考えられています。この場合は食糧向けの農地がバイオ燃料向けに使われるということはなく、むしろ農業に適さない土地が有効活用されるものと考えられます。