バイテク情報普及会について

セミナー・イベント

2011/12/15更新

バイテク情報普及会、セミナー「EUにおける遺伝子組み換え作物の最新事情と今後の展望」を開催

 バイテク情報普及会は2011年12月2日、ヨーロッパのバイオテクノロジー産業を振興する欧州バイオ産業協会(EuropaBio)植物バイオテクノロジー・規制担当部長のマニュエル・ゴメス‐バルベロ(Manuel Gomez-Barbero)氏を講師に迎え、「欧州連合(EU)における遺伝子組み換え作物の最新事情と今後の展望」と題したセミナーを都内で開催しました。

 今回のセミナーでゴメス‐バルベロ氏は、先ごろ欧州委員会(EC)がまとめた「EUが出資した10年間のGM作物の研究」について解説しました。この報告書は、ヨーロッパにおける遺伝子組み換え作物について1985年~2000年と2001年~2010年の2期20年にわたって調査したもののうち、後期の10年間の研究結果をまとめたものです。

 ゴメス‐バルベロ氏は「近年、農業でのバイオテクノロジーの導入は急速に進んでおり、世界の遺伝子組み換え作物の作付面積は、ここ15年足らずの間に40万ヘクタールから1億4000万ヘクタールにまで急速に拡大した」と言います。このように急速に拡大する遺伝子組み換え作物市場はEUにおいてはどのような状況にあるでしょうか。ゴメス‐バルベロ氏によると、「EUでは現在、37品目(トウモロコシ、ワタ、ナタネ、ダイズ、テンサイ)の遺伝子組み換え作物の輸入が承認されているが、EUでの栽培が承認されている遺伝子組み換え作物は食用と飼料用のBt害虫抵抗性)トウモロコシ(1998年承認)および工業用のジャガイモ(2010年承認)の2品目にすぎない」とのことです。

 ECが2010年に発表した「バイオテクノロジーおよび一般認識の調査」によると、遺伝子組み換え作物への不安を感じる人はEU市民の8%である一方、77%の人々は農業におけるバイオテクノロジーの使用に賛成であると回答しています。このように一般消費者は遺伝子組み換え作物に強い拒否反応があるわけではないにもかかわらず、EUで遺伝子組み換え作物が広まらないのはなぜでしょうか。ゴメス‐バルベロ氏は、EUにおける承認プロセスにその問題があると指摘します。

 他国と比較して、EUの遺伝子組み換え作物の品目数はどのくらいあるのでしょうか。EUにとって重要な貿易相手国である米国、ブラジル、カナダを例にとってEUとの違いを比較します。現在、輸入および栽培が認められている遺伝子組み換え作物の品目数は、EU:39品目、米国:90品目、ブラジル:28品目、カナダ:89品目となっています。ここで、ゴメス‐バルベロ氏は「ブラジルの場合、確かにEUよりも承認されている遺伝子組み換え作物の品目数は少ないが、EUと比べて承認までに要した時間が圧倒的に短いという違いがある。ブラジルでは、28品目のうち27品目は5年以内に承認を得ているが、EUでは39品目が承認されるのに15年を要している」と話し、EUにおける承認プロセスの遅れを強調しました。

 EUでは遺伝子組み換え作物の輸入が承認されるまでに、他国と比べて1年半~2年余分にかかります。「承認に時間がかかる原因は、ECで過半数の承認を得ることが難しいためだ」とゴメス‐バルベロ氏。実際、EUでは承認投票の際に反対する国が多く、スウェーデンのように常に賛成票を入れている国もありますが、オーストリアのように常に反対票を入れている国があるのです。また、これらの国が反対票を投じる理由は、科学的な根拠というより、むしろ各国の政治的な理由に因るところが大きく、こうしたEU各国での意見の相違により、「投票において過半数を得ることが大変難しくなっている」とゴメス‐バルベロ氏は主張します。

 遺伝子組み換え作物の栽培の承認の遅れにより、EUの農家は他国で栽培可能な遺伝子組み換え作物を栽培できないため、他国の農家に対して不利な立場にあるとのことです。実際、ある調査報告によると、遺伝子組み換え作物が承認されなかったことによる経済的損失は4億4300万~9億2900万ユーロに上るという試算も出ており、「承認の遅れによるEUの経済的損失は大きい」とゴメス‐バルベロ氏は指摘します。

 それでは、将来の遺伝子組み換え作物の各国の商品化の状況はどのようになるのでしょうか。2009年のECの予測によると、2008年の時点で商品化された遺伝子組み換え作物はEUと米国で合わせて24品目あるのに対してアジアでは9品目のみですが、2015年にはEUと米国で67品目へと約3倍に伸びるのに対し、アジアでは54品目へと6倍もの大きな伸びを示すとのこと。アジア、特に中国の台頭が注目されてくるようです。

 最後に、ゴメス‐バルベロ氏はバイオテクノロジーの農業への導入における科学的なリスク管理と承認プロセスの明確化の必要性を強調して、講演を締めくくりました。





セミナー当日の説明資料はこちらからダウンロードできます。→ PDF