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京都大学など研究チームが実証実験 イネゲノムが外部の環境変化にあわせて変化

京都大学大学院農学研究科の谷坂隆俊教授と米国ジョージア大学のスーザン・べスラ教授の共同研究チームは、環境の変化に対応してイネの染色体の中でゲノムが変化することで、適応力が強まるメカニズムを明らかにしました。この研究成果は英科学誌のネイチャーにこのほど掲載されました。

この研究は、ゲノムの中を動き回ることができる動く遺伝子「トランスポゾン」が、イネゲノムの中でどのように動いているのかを明らかにしたものです。研究チームは、突然変異のイネの染色体の中で高頻度に移動するDNAの断片を発見し、このトランスポゾンの一つをmping(エムピン)と名付けました。このイネを低温状態の塩水で育てたところ、環境の変化に対応するストレス応答遺伝子に、多くのエムピンが移動して入り込むことを確認しました。このmpingの約9割は、働きを持つ遺伝子の塩基配列の中かその近くに入っていることがわかりました。

通常は異質な遺伝子に入りこまれた場合は塩基配列が乱れて機能を失いますが、mpingの場合は逆に活性化して塩分や低温といったイネにとってはストレスとなる環境に適応するように働くことがわかりました。また、また、一つのストレス応答遺伝子にmpingが組み込まれると、同じDNA内にある環境の変化に応答する他の遺伝子も働きが活発化することもわかりました。

研究は、環境変化によってゲノムが多様化して、生物が進化することを実際のゲノムの変化から実証したものです。また、トランスポゾンをうまく使うことで塩害や乾燥に強い稲を作り出す技術につながる可能性があるとして注目されています。

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