世界の遺伝子組換え

生物多様性条約とカルタヘナ議定書

生物多様性とは

生物多様性条約とカルタヘナ議定書は共に「生物多様性の保全と生物多様性構成要素の持続可能な利用」を目的に掲げています。この生物多様性とはどのような概念でしょうか。生物多様性とは、生物同士のつながり・生物の構成を表す概念で「すべての生物のあいだに違いがあること」を意味しています。

生物多様性ということば

「生物多様性 (biodiversity)」は、「生物学的多様性 (biological diversity)」を意味する造語であり、生物学者であるW.G.ローゼンによって提唱されました(1985年)。生物学者E.O.ウィルソンの著書では、「生物多様性」(1988年)が書名としても使われました。1980年代後半になると、生物多様性ということばや概念が、一般にも広まり始めました。

生物多様性という言葉からは、生物の種数が多いか少ないかといった「種の多様性」をイメージされるかもしれません。しかし、生物多様性が示す「多様性」は、生物種の種類だけではなく、遺伝子、種、個体群、群集、生態系、景観などのいくつかの階層レベルが存在しています。生物多様性とはそれらの各階層、あるいは階層を超えての多様性を表わす概念と考えられています。

CBDにおける生物多様性の定義

生物多様性条約(CBD)の条文では、「生物の多様性」を「生命に表れているあらゆる多様性」と定義しており、「種の多様性」「遺伝子の多様性」「生態系の多様性」という3つの階層レベルでの多様性として考えられています。

多様性には以下の3つのレベルがあります。

「種の多様性」

文字通り、生物の種類における多様性を表しています。現在名前がつけられている生物種は約175万種。しかし、微生物や昆虫、菌類などでは未知の種が多く、実際には5000万種に近いとの見積もりもあります。細菌から動植物まで多様な生物が存在しています。生物多様性の保全にとって、種の多様性はもっともわかりやすいものかもしれません。

遺伝子の多様性」

「種の多様性」よりも下のレベルとなり、同じ生物種にみられる遺伝的な変異のことを指しています。同じ種でも、それぞれの個体は遺伝的に異なっています。あさりの貝殻の模様に個体差があるように、異なる遺伝子を持つために、形や生態が多様になります。

「生態系の多様性」

生物種の間でのつながりの多様性や、生物が暮らす物理的な環境の多様性を表しています。森林、里山、湿原、干潟、湖沼、河川などの各地に様々なタイプの生態系があります。それらの生態系において、生物種は単独ではなく、食う、食われるという関係や共生関係などの生物間のつながりの中で生態系を構成しています。

生態系サービス

なぜ生物多様性は大切なのでしょうか? 生態系サービスという考え方の中に、一つの答えを見つけることができます。生態系サービスとは、人々が生態系から得ることのできる、食料、水、気候の安定などを指す概念であり、「自然の恵み」と言い換えることができます。生態系サービスにより、人間の生活の豊かさの基礎が提供されています。生態系サービスは、供給サービス、調整サービス、文化的サービス、基盤的サービスの4つのカテゴリーに分類されています。

「供給サービス」

生態系で生産される食糧や木材といった生活必需品などを供給する機能を指します。

「調整サービス」

生態系により環境の変化が緩和されることを指します。地球温暖化などの気候変動や集中豪雨などの急激な変化に対して、緩衝的な働きがあり、環境の安定化をもたらします。

「文化的サービス」

ハイキングやダイビングなどのように、生態系が文化的な側面から生活に豊かさを与えている機能を指しています。

「基盤的サービス」

生態系サービスの土台を築くもので、他の3つの生態系サービスが成り立つための環境を形成するような機能を指しています。

38億年にもおよぶ生命進化の産物である生物多様性は、さまざまな生態系サービスの源泉となっているのです。

生物多様性と生物多様性条約

以上のように自然界の異なるレベルにおいて生物多様性があること、それによって様々な恩恵が人類にもたらされていることがわかります。こうした生物多様性がバランスのとれた状態で維持されていくことが重要である、という考え方が生物多様性条約とカルタヘナ議定書の背景にあります。