世界の遺伝子組換え

生物多様性条約とカルタヘナ議定書

カルタヘナ議定書とは

カルタヘナ議定書の目的

生物多様性条約第19条3項において「バイオテクノロジーによって改変された生物 (LMO: Living Modified Organism resulting from biotechnology)であって生物多様性の保全および持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるもの」について、「安全な移送、取り扱いおよび利用の分野における適当な手続き」を定める議定書の必要性を検討することを求めています。LMOを巡る問題は国内だけでは解決が難しく、途上国を含む国際的な問題と関連していることから、議定書での取り組みが必要となります。

これに基づき2000年1月に、特別締約国会議(Extraordinary Meeting of the Conference of the Parties: ExCOP)再開会合において、「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(カルタヘナ議定書、Cartagena Protocol on Biosafety)が採択されました。

カルタヘナ議定書は、遺伝子組換え技術等の「現代のバイオテクノロジーによって改変された生物LMO(Living Modified Organism*)の国境を越えた移動に焦点を絞って規制の枠組みを定めています。ここでは、生物多様性の保全と持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるLMOの安全な移送、取り扱いおよび利用について、取り扱いおよび利用に対する保護が十分な水準で確保されることを目的として、輸出入時の手続きや利用などで講じるべき措置についての国際的な枠組みを定めています。LMOの潜在リスクに対処するための国際協定、それがカルタヘナ議定書なのです。

※ LMOとGMO:カルタヘナ議定書の規制対象である遺伝子組換え生物(LMO: Living Modified Organism)はカルタヘナ議定書第3条g項において「現代のバイオテクノロジーの利用によって得られる遺伝素材の新たな組み合わせを持つ生物」であると定義されています。日常的に広く用いられているGMO( Genetically Modified Organism)という文言ではないのは、GMOの定義のあいまいさに照らして、もっと明確な定義づけが必要であると考えられたためです。実際にはカルタヘナ議定書採択後、非公式の場では、LMOとGMOが類似語として用いられていることが少なくありません。ただし、LMOは「生物」である、「生きていること」が条件になります。たとえば遺伝子組換えダイズはLMOですが、遺伝子組換えダイズを用いた醤油はLMOには該当しません。

カルタヘナ議定書の内容

カルタヘナ議定書の規制対象となるLMOは次の3つに分類されます。

  • 意図的に環境へ導入するLMO(例:農地栽培用の遺伝子組換え種苗)
  • 食料、飼料用、加工用にするLMO(例:遺伝子組換え植物(食用、飼料用、加工用))
  • 封じ込めて利用するLMO(例:工場等閉鎖的環境のみで使用される遺伝子組換え微生物)

この分類にしたがって、それぞれ表のとおり異なる手続きが適用されます。なお、人間用の医薬品でほかの国際協定や国際機関が取り扱っているLMOについては、本議定書の対照から除外されています。

【 表: カルタヘナ議定書に基づく遺伝子組換え生物の輸出入手続きおよび添付書類 】

※BCH:締約国による議定書の運営を支援し、LMOに関する情報の交換や共有を行うためのメカニズム。情報はウェブ上で公開されています。わが国はカルタヘナ法により日本版BCHを設立しています。(http://www.bch.biodic.go.jp/)

事前同意手続き(AIA)

上記の表の中に出てくるLMOの輸出入の際の事前同意手続き(AIA)とは、カルタヘナ議定書第7条から10条に規定されており、同議定書の中を担うものです。
AIA手続きは、もっとも自然界に近接した場で使用される「①環境放出利用のLMO」に対して適用されます。それによると、輸出国または輸出者は、LMO輸出の意思をLMOの情報とともに、輸入国に対して文書で通知しなければなりません。輸入国はリスク評価を行い、その結果をもとに輸入の可否を判断し、輸出国あるいは輸出者およびバイオテーフティクリアリングハウス(BCH)に回答します。この輸入手続きを経て、輸入国が認めたLMOについてのみ、輸出入が行われることになります。ただし、過去に輸出を行い、上記手続きをすでに経ているLMOについては、手続きを省略することができます(図1)。
また、「②食料、飼料、加工用として利用されるLMO」については、AIA手続きは義務付けられていませんが、自国における②の利用を決定した国には、BCHに通告することが求められています。輸入国はBCHを通じて情報を入手し国内基準に従って輸入を決定することができます(図2)。
「③輸入国の基準にしたがって封じ込め利用が行われているLMO」に対しては、カルタヘナ議定書の輸出入前の手続きに関する規定は適用されません(国内法で定めることはできます)。

【 図:「①環境放出利用のLMO」に対して適用される事前同意手続き 】

【 図:「②食料、飼料、加工用として利用されるLMO」に対して提供される手続き 】