世界の遺伝子組換え

生物多様性条約とカルタヘナ議定書

生物多様性条約のこれから

2010年10月18日から29日まで、名古屋において開催されるCOP10において、中心的な議題となる2つの課題がありました。一つは、「2010年目標」の達成状況の検証と新たな目標(ポスト2010年目標)の策定、もう一つが、「遺伝資源へのアクセスと利益配分」に関する国際的な枠組みの策定でした。s

2010年目標が採択された経緯と達成状況

「2010年目標」とは、CBD締約国が目標として定めていた「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」というものです。この「2010年目標」は、2002年にハーグで開催されたCBD-COP6で採択されたものであり、生物多様性条約戦略計画の中に明記されています。内容は、「構成要素の生物多様性の保護」「持続可能な利用の振興」「生物多様性に対する脅威への取組」「人類の福祉の確保のための生物多様性由来の産物とサービスの維持」「伝統的知識、発明及び慣行の保護」「遺伝子資源の利用による利益の平等で衡平な利益の共有の確保」「資源移転の状況」という7つの目標分野で21の個別目標が設定されました。

CBD事務局は、2010年5月に報告書を公表し、「2010年目標」の達成状況を評価しています。それによれば、「2010年目標」は21の個別目標のいずれについても地球規模で達成されたものはなかったと結論づけています。「重要な地域の保護」のようにある程度は達成された項目もありましたが、ほとんど前進のみられなかった項目もあります。

2010年目標の達成は困難となりましたが、目標達成に向けた各国の取り組みにより、締約国において生物多様性国家戦略や行動計画が策定されました。保護地域の拡大や外来種問題への対応なども進んでいます。

次なる「ポスト2010年目標」

CBD-COP10では、「ポスト2010年目標」と呼ばれている、2010年以降 の次期目標の設定が大きな議論になりました。CBD事務局では、2020年を次期目標年とする原案を条約加盟国に提示し、「新戦略計画(2011-2020年)」は、名古屋での採択が期待されていましたが、議論の結果、保護地域を陸域17%、海域10%とするといった20の個別項目などを内容とする「愛知ターゲット(愛知目標)」が採択されました。

条約新戦略計画(ポスト2010年目標該当箇所)(環境省仮訳)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16471&hou_id=13104
【参考】ポスト2010年目標に関する日本政府案の概略は、次のように中長期の目標と短期の目標が設けていました。

(1)中長期の目標(2050年)

人と自然の共生を世界中で広く実現させ、生物多様性の損失を止め、その状態を現状以上に豊か なものとするとともに、人類が享受する生態系サービスの恩恵を持続的に拡大させていく。

(2)短期の目標(2020年)

中長期目標を達成するため、

  • 生物多様性の状態を科学的知見に基づき地球規模で分析・把握する。生態系サービスの恩恵に対する理解を社会に浸透させる。
  • 生物多様性の保全に向けた活動の拡大を図る。将来世代にわたる持続可能な利用の具体策を広く普及させる。人間活動の生物多様性への悪影響を減少させる手法を構築する。
  • 生物多様性の主流化を図り、多様な主体が新たな活動を実践する。

また、中長期および短期の目標達成に向けた個別の目標が9つ設定されています。

  • 生物種を保全する活動を拡充し、生態系が保全される面積を拡大する。
  • 生物資源を用いる農林水産業などの活動において、持続可能な方法による生産の比率を高める。
  • 生物多様性への脅威に対する対策を速やかに講じる。
  • 生態系サービスの恩恵を享受するための仕組を整備し、人類の福利向上への貢献を図る。
  • 地球規模で、生物多様性及び生態系サービスの状態を的確に把握し、その結果を科学的知見 に基づき分析評価するとともに、それに対する認識を広め、理解を促進する。
  • 開発事業、貧困対策と生態系の保全を調和させるための手法を普及・確立させる。
  • 伝統的知識の保護とABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)の取組を促進するための体制を整備する。
  • 生物多様性の保全と持続可能な利用を達成するための資金的、人的、科学的、技術的な能力を向上させる。
  • 生物多様性の保全と持続可能な利用に対する多様な主体の参加を促進する。

ABSについて

COP10で注目が集まるもうひとつの議題が、「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS: Access and Benefit Sharing)」に関する国際的な枠組みについてです。ABSとは、途上国などが保有する遺伝資源などを利用した際には、その利益の一部が遺伝資源を提供した側に配分されることを定めたものです。ここでの利益には、製品の売上による金銭的な利益だけでなく、情報や特許、能力開発、教育などの様々な便益に相当するものが含まれます。
CBDでは、遺伝資源に対する財産権の設定は、各国の法制度に従うとされています。このため、遺伝資源の豊富な途上国を中心として、ABSに関する国内法制度が整えられつつあります。しかし、ABSに関連する各国の法制度は、国ごとにばらつくことが懸念されてきました。
そこで、2002年オランダ・ハーグでのCBD-COP6において「遺伝資源アクセスと利益配分に関するボンガイドライン(通称「ボンガイドライン」)が採択されました。ところが、ボンガイドラインはABS手続きの大枠を定めるに過ぎないために、利益の確実な配分を求める途上国からの不満が高まっていました。このような経緯から、法的に拘束力のある国際レジームの議論が開始されることになりました。
COP10までにABSに関する国際レジーム策定交渉を完了すべし、とのCOP8決定に基づき、COP10開催中に、非公式協議会合において検討が行われましたが、国ごとの意見対立が続いたことを踏まえ、最終日に日本が議長案を提示、同案が「名古屋議定書」として採択されました。

ABSに関する名古屋議定書(骨子)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16472&hou_id=13104