世界の遺伝子組換え

世界各国の法制度

アルゼンチン共和国

【生産の状況】
 ラテンアメリカには、遺伝子組換え作物を積極的に導入している国がいくつかあり、近い将来、品種を増やしていこうとする動きが見られます。これら諸国の中で遺伝子組換え技術の導入を先導してきたのが、世界で最も肥沃で生産性の高い土地を有する国のひとつであるアルゼンチンです。アルゼンチンでは、1990年代に遺伝子組換えダイズの栽培が開始されると、急速にその面積を拡大してきました。2013/14年度では2050万ヘクタール以上になっています。アルゼンチンで生産されるダイズのほぼ100%が除草剤耐性遺伝子組換え品種です。ダイズ以外では、遺伝子組換えトウモロコシとワタが作付され、バイテク品種は3作物で合計2,479万ヘクタールに達しています(※1)。現在はブラジルにおける栽培面積の方が上回りましたが、それまではアメリカに次ぐ遺伝子組換え栽培国として世界第2位を維持していました。

【安全性審査】
 アルゼンチン農牧漁業省(MAGyP)に所属する関連部局が、環境、食品、飼料の観点から遺伝子組換え作物の安全性審査を分担しています。省内の農牧水産庁(SAGyP)は、遺伝子組換え作物のほ場試験、限定的放出および商業的利用を全体的に規制する責任を負っています。バイオテクノロジーに関連する部局として、農牧水産庁には、バイオテクノロジー総局(Directorate of Biotechnology、DB)と農産物マーケティング総局(Directorate of Agricultural Market、DAM)があり、安全性審査と市場対応を担当しています。DBは、2009年に設置された部局で、バイオセイフティ、政策分析、規制に関わる総合調整を行っています。DBのもとで、CONABIA(農業バイオテクノロジー国家諮問委員会、環境安全性審査を担当)が組織されています。また審査に関わる関連機関として、農牧水産省の関連独立機関として、SENASA(国立食料農業品質安全サービス、食品・飼料安全性審査を担当)、INASE(国立種子検査所、野外試験・種子生産を監視)があります。
 環境安全性の審査を行うのは、DBのもとで設置されたCONABIAです。遺伝子組換え作物のほ場試験を十分に行った時点で、申請者は特定用途(輸出、品種登録までの商業生産前栽培など)に限定した作付けの承認を求めることができます。CONABIAは、遺伝子組換え作物のヒトの健康および環境に対する潜在的な危険性を評価します。CONABIAは、1991年の設置依頼、すでに1500件以上の申請を評価してきました。
 スタック品種はケースバイケースで安全性審査が行われており、導入遺伝子間で代謝上の相互作用がないかどうかなどの検討が行われます。
 2012年より農牧水産庁では規制枠組みを部分的に見直しました。この規制枠組みの見直しの目的は、認可に要する期間を短縮化し、現在42か月かかっている審査期間を24か月にすることが目指されています。新しい制度枠組みのもとでは、CONABIAによる科学的評価期間は180日と設定されました(以前は明確な期限は設けられていませんでした)。
 食品安全性および飼料安全性に関する審査は、SENASA(国立食料農業品質安全サービス)が担当しています。また種子検査・登録の観点から、INASE(国立種子検査所)による審査も行われます。
 商品化の申請はCONABIAが環境安全性の観点から審査し、SAGPyAに対して承認または却下を提言します。商品化の申請が認可された場合、申請者は遺伝子組換え生物を用いた食品の安全性に対する責任の他に、その品質を監視する責任を負います。承認は定期的に見直されます。農産物マーケティング総局(DMA)は、商業化に関する経済的影響の観点から審査を行います。申請者はINASE(国立種子研究所)に新品種登録を申請しなければなりません。病害虫抵抗性および除草剤耐性作物の商品化には、SENASAの特定の認可が求められます。
 アルゼンチンにおける遺伝子組換え規制は、決定No. 763/11(基本的枠組み)および決定No. 701/11(遺伝子組換え植物の野外試験と商業化に関する手続き)に基づいて、実施されています。なお、カルタヘナ議定書には署名していますが、批准はなされていません。

【表示】
遺伝子組換え食品に関する表示義務はありません。農牧水産庁の基本的立場は、表示を行うかどうかは、製品の製造プロセスではなく、製品の特性やリスクに基づいて判断されるべきだというものです。また遺伝子組換え由来の食品が慣行食品と性質において大きく異なる場合には、その性質の違いに関する表示を行うべきであり、用いた技術について表示するべきではないと考えられています。トレーサビリティや表示はコスト増大を伴うものと考えられており、それに見合うメリットがないかぎり導入するべきではないというのがアルゼンチンの基本方針です。

※1:USDA-FAS(2014)Argentina: Agricultural Biotechnology Annual 2014