世界の遺伝子組換え

世界各国の法制度

オーストラリア連邦・ニュージーランド

【生産の状況】
 オーストラリアでは科学分野でも商業分野でも非常に積極的にバイオテクノロジーに取り組んでいます。遺伝子組換えワタは、国内のワタ生産のほぼ100%を占めています。また、ワタ以外にも、ナタネ、カーネーションなどの遺伝子組換え作物が栽培されており、全体で50万ヘクタールの栽培がなされています。安全性審査は連邦政府が行うものの、生産に関する認可は、州政府が判断しています。
 他方、ニュージーランドでは、遺伝子組換え作物の野外試験や商業栽培はなされておらず、オーストラリアとは対照的な状況となっています。

【安全性審査】
 オーストラリアにおいて遺伝子組換え作物の環境安全性に関わる審査は、遺伝子技術規制官(Gene Technology Regulator、GTR)が担当しています。またGTRの事務を支える部局として、遺伝子技術規制官局(Office of Gene Technology Regulator)が保健省のもとに設置されています。GTRは強い独立性と権限を有しており、遺伝子技術法(GT法、2000年制定)とその施行規則(GT規則、2001年制定)のもとで、遺伝子組換え生物の審査と認可(免許交付)、監視、認可取り消しなどを行っています。原則として、環境へ放出されるものはすべてOGTRの許可が必要になります。
 また遺伝子組換え生物の国内管理に関しては、連邦政府と州政府との間での「政府間合意(Inter-Governmental Agreement)」が締結され、関連政策の基本方針を検討する機関として「遺伝子技術に関する立法府ガバナンス・フォーラム(Legislative & Governance Forum on Gene Technology, LGFGT)」が設置されています。このフォーラムを支える組織として、「遺伝子技術常設委員会(Gene Technology Standing Committee)」、「遺伝子技術助言委員会(Gene Technology Technical Advisory Committee, GTTAC)」、「遺伝子技術倫理・社会協議委員会(Gene Technology Ethics & Community Consultative Committee, GTECCC)」が設置され、各種の助言を提供しています。
 なお、GTRは遺伝子組換え生物の安全性認可に責任をもっていますが、実際に商業栽培を認めるかどうかの権限は、各州政府が有しています。連邦を構成する各州もそれぞれ独自の遺伝子技術法を制定しており、これらの法律のもとで栽培等に関する規制を実施しています。またGTRは法令を執行する機関としての位置づけられており、遺伝子組換え生物に関する基本政策は、上局である保健省が策定しています。オーストラリアは、カルタヘナ議定書の非締約国です。

 ニュージーランドにおける遺伝子組換え生物規制は、1996年に制定された「危険物質・新生物法」(HSNO法)およびこれに関連するいくつかの規則(HSNO規則など)に基づいています。遺伝子組換え生物は新生物として規定されており、例外を除いて本法律と規則のもとで安全性審査の対象となっています。商業栽培や環境安全性に関しては、ニュージーランドの環境保護庁(EPA)が担当しており、上記のHSNO法により規制を行っています。なお、EPAは環境省(MFE)の下位部局であり、基本的政策立案の役割は、環境省にあります。また遺伝子組換え生物を用いた食品の安全性認可に関しては、下記に述べるFSANZのもとでオーストラリアと連携して実施されています。
 ニュージーランドでは2000年代前半に反遺伝子組換え生物の国民的な運動が盛り上がり、それ以降、反遺伝子組換え生物規制が強化されています。商業利用されている遺伝子組換え生物は生ワクチンのみであり、遺伝子組換え作物は栽培されていません。また野外試験に関しても過去10年間実施されていません。
 またHSNO法では、遺伝子組換え生物の認可を判断する際、費用便益分析の実施を義務付けています。分析結果において、プラスの影響がマイナス影響を上回らない限り、輸入や放出に関する認可がなされません。ニュージーランドはカルタヘナ議定書の締約国です。

 食品としての安全性審査は、オーストラリア・ニュージーランド共通食品基準規範(Australia New Zealand Food Standards Code)にもとづき、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ、1999年設置)が評価等の実施を担当し、オーストラリア・ニュージーランド食品基準審議会(ANZFSC)が最終承認を行います。オーストラリアでは遺伝子組換えトウモロコシと遺伝子組換えダイズダイズの商業生産は行われていませんが、食品としては多くの品目が認可されています。なお、FSANZは基準設定機関であり、基準を執行する権限は、FSANZではなく州政府にあります。

【表示】
 オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)では、両国の食品の規格や表示の基準を共同で策定しています。全ての遺伝子組換え食品の申請を個別に評価する責任を負っています。
 オーストラリア・ニュージーランド食品基準規範のうち、基準1.5.2(1999年制定)が、遺伝子組換え食品の販売を規制しています。(1)市場導入前の安全性評価の義務および(2)表示の義務を規定しています。2001年12月から、遺伝子組換え由来の作物および加工食品について表示が義務付けられました。そのうち、組み込まれたDNAや、それによって作られるタンパク質が製品中に残らない植物油や砂糖などの加工食品には表示する必要はないとされています。ただし、組換えによって成分や特性に変化が見られる場合は表示が義務付けられています。
 なお、基準1.5.2は遺伝子組換え生物フリー表示に関する規定は明示されていませんが、表示は虚偽や誇張などにより、公正な商取引を阻害してはならないとされ、遺伝子組換え生物フリーに関しても厳格に解釈されると考えられています。例えば、分別された非組換え原材料を使用している場合に、表示として組換えではない旨の「非組換え」「遺伝子組換え生物フリー」等の表示をすることは、検出される可能性がまったくない(ゼロ)といえる場合以外は、虚偽表示ということで罰金が科せられる可能性があると受け取られています。分別されていても、実際には組換え材料が混ざってしまうことは避けられませんので、基本的に「非組換え」等の表示は許されていない、と考えた方がよいと思われます。なお、家畜飼料に対しては、表示は義務付けられていません。