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セミナー:中国の農業分野におけるバイオテクノロジーの発展・インパクトと持続可能性

バイテク情報普及会は10月4日、都内にてセミナー「中国の農業分野におけるバイオテクノロジーの発展・インパクトと持続可能性」を開催しました。中国科学院農業政策センター長・黄李焜氏を講師にお招きし、中国における遺伝子組み換え作物への投資開発や栽培状況、経済インパクトについてご講演いただきました。

中国では2003年に農業分野全体で、バイオテクノロジーの研究に対して2億米ドルが投資され、公共部門におけるバイテク研究投資額としては世界最大規模となっています。さまざまな作物の研究が進められており、中国の生物安全性委員会が受け付けた栽培試験や商品化の申請は2006年までに1500件を越え、安全性審査の結果、これまでにワタ、ペチュニア、トマト、甘トウガラシ、ポプラ、パパイヤが商品化を認可されました。そのうち実際に栽培されているのはワタと、ポプラ、パパイヤです。

中国における遺伝子組み換え作物の作付面積はワタが360万ヘクタールと最も多く、国内ワタ作付面積の3分の2を占めます。害虫抵抗性のBtワタの栽培によるベネフィットは、従来のワタに比べて収穫量が9.6%増、農薬使用量が60%減、労働力が7%軽減し、1ヘクタールあたりの純利益は225米ドルに達すると算出されています。中国のワタ生産者の年収は300米ドル程度とされており、黄氏は「生産性向上は大きなメリット」と述べています。

Btワタを栽培し続けるとBtに耐性を持つ害虫(ボールワーム)が増えてしまうのではと懸念されていましたが、実際にはBtワタの栽培時はもちろん、周辺の非Btワタの栽培においてもボールワーム駆除農薬の使用量が大幅に減少しています。これにより、Btワタの普及に伴いボールワームの生息数は減少傾向にあると示唆されます。

遺伝子組み換えイネに関して黄氏は、中国ではコメが生産過剰であるためすぐに商品化される可能性は低いものの、「研究開発は商品化可能な段階まで進んでおり、人口増加と食糧不足への対策としては大変重要な意味を持っている」との考えを述べました。また、中国では経済発展に伴って食肉の需要が増加しており、遺伝子組み換えトウモロコシの商品化により生産性が向上すれば、「飼料作物の輸入依存割合を減らすことができる」との期待を語りました。

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