更新日:2023年9月25日

日本での利用状況

日本では、トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタなどの主要作物は海外からの輸入に大きく依存しており、その大部分が遺伝子組み換え品種と推定されています。国内では食用油やデンプン、家畜の飼料として利用されており、私たちの食に欠かせないものとなっています。

輸入の状況

日本には毎年多くの遺伝子組み換え(GM)作物が輸入されています。日本における自給率は、トウモロコシ、ワタおよびナタネでは0%、ダイズでは6%となっており、国内需要を海外からの輸入により賄っています。日本への主要輸出国では、これらの作物にGM品種が高い割合で使用されています。ここから計算すれば、日本に輸入されるこれらの農産物の9割程度がGM品種であると推測されます。日本人が1年間に消費するGM作物の量は、コメの年間消費量(約800万トン1)の2倍以上に相当します。

日本の遺伝子組み換え(GM)作物の輸入量推定(2019年)

「農林水産物輸出入概況(R1)」、「ISAAA Brief54」「令和元年度食料需給表」をもとにバイテク情報普及会とりまとめおよび試算 輸出国のGM作付比率と輸入量を掛け合わせることで算出した推定値になります。日本国内へは非遺伝子組み換え作物を分別管理して輸入する場合があり、実際の数字とは異なる可能性がございます。
作物 日本への主要な輸出国
※カッコ内は各国の
2018年GM作付比率
作物の総輸入量
(単位:千トン)
うち組み換え作物の
推定輸入量
(単位:千トン)
組み換え作物
推定輸入比率
トウモロコシ
(自給率0%)
米国(92%)、
ブラジル(89%)、
アルゼンチン(97%)
15,983 14,476 91%
ダイズ
(自給率6%)
米国(94%)、
ブラジル(96%)、
カナダ(95%)
3,392 3,178 94%
ナタネ(採油用) カナダ(95%)、
オーストラリア(22%)、
中国(0%)
2,359 2,153 91%
ワタ(採油用) 米国(94%)、
ブラジル(84%)、
オーストラリア(100%)
93 76 82%
  合計 21,827 19,883 91%

消費の状況

2023年3月現在、日本で食品として安全性が確認され使用が認められているGM作物は、9種類333品種あり、様々な形質が付与されています。1996年以来、毎年多くのGM作物が日本へ輸入されています。食品としてGM作物が多く使われているのは、コーン油、ダイズ油、ナタネ油、綿実油などの食用油、コーンスターチ、コーンシロップなどです。また、GM作物は家畜の飼料としても多く使われています。

日本で使用が認められている遺伝子組み換え作物(2023年3月24日現在)

トウモロコシ
トウモロコシ
品種:210種類
特徴:害虫抵抗性、除草剤耐性、高リシン形質、乾燥耐性、耐熱性α-アミラーゼ産生、生産性向上など
ダイズ
ダイズ
品種:29種類
特徴:除草剤耐性、害虫抵抗性、高オレイン酸形質、ステアリドン酸産生など
ナタネ
ナタネ
品種:24種類
特徴:除草剤耐性、雄性不稔性、稔性回復性、DHA産生、EPA産生
ワタ
ワタ
品種:48種類
特徴:害虫抵抗性、除草剤耐性
テンサイ
テンサイ
品種:3種類
特徴:除草剤耐性
ジャガイモ
ジャガイモ
品種:12種類
特徴:害虫抵抗性、ウイルス抵抗性、疫病抵抗性、アクリルアミド産生低減、打撲黒斑低減
アルファルファ
アルファルファ
品種:5種類
特徴:除草剤耐性、低リグニン
パパイヤ
パパイヤ
品種:1種類
特徴:ウイルス抵抗性
カラシナ
カラシナ
品種:1種類
特徴:除草剤耐性・稔性回復性
※カラシナはセイヨウナタネの近縁種である。
厚生労働省 資料「安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧」より

経済的貢献

日本はGM作物の栽培国ではないものの、年間数千万トンのGM作物を輸入する輸入消費大国です。しかし、その実態はあまり知られておらず、安全性やその必要性について国民の理解も十分得られていません。遺伝子組み換え作物の栽培による経済的インパクトに関する研究論文は少なくありませんが、輸入による日本経済へのインパクトに関する論文はほとんど見当たりません。その実態を探るべく、輸入国としての日本から見たGM作物の経済的インパクトについて、東京大学大学院農学生命科学研究科農業・資源経済学専攻経済学研究室の本間正義教授・齋藤勝宏准教授のチーム(所属・肩書は当時のもの)が当会の資金援助のもと調査を実施し、2016年10月23日に環太平洋産業連関分析学会で発表しました。

報告書によれば、日本に輸入されるGMダイズおよびGMトウモロコシにより、1兆8,000億~4兆4,000億円のGDPが生み出されています。これは、日本のGDPの約0.93%に相当します。所得に換算すると、1世帯当たり年間約25,000~60,000円の所得増加に貢献しています。これらの経済的貢献度は、同一モデルで算出したコメ産業の約3分の2の規模に相当します。日本ではGM作物としてワタやナタネも利用されていますので、これらを算入するとGM作物の潜在的な経済的貢献額はより大きなものになるでしょう。

報告書ではさらに、仮にGMダイズおよびGMトウモロコシの輸入を停止した場合の影響を調査しています。代替品の調達がなければ、国産トウモロコシの価格は約 2.5 倍、国産ダイズは約 1.9 倍、国産の鶏肉、卵は約 2倍、国産動植物油脂は約 1.9 倍に上昇し、結果として実質 GDP を約 0.61%押し下げると試算されています。もちろん、現実には代替品の調達によりこのような結果になる恐れは低いと思いますので、あくまで私たちの日常生活への浸透度としてご参考にして頂ければと思います。

研究報告書(PDF)
「遺伝子組み換え作物の社会的便益の評価に関する研究」
遺伝子組み換え作物の日本経済への貢献度の計測
https://cbijapan.com/wp-content/themes/cbijapan/pdf/2017031401CBIJ.pdf
プレスリリース本文(PDF)
https://cbijapan.com/wp-content/themes/cbijapan/pdf/2017031402.pdf
調査結果に関するお問い合わせ
東京大学農業・資源経済学専攻経済学研究室 准教授 齋藤勝宏
asaito●mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
(●を@に変更してメールを送信してください。)
1農林水産省(2020). 令和元年度食糧需給表

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