環境への安全性

遺伝子組換え (GM) 作物の利用による環境への影響、例えば農薬使用量の変化や生物多様性への影響は、詳細に調べられています。GM作物は、環境負荷がより低く、持続可能な農業を可能にしていることが明らかになっています。

遺伝子組換え作物の利用は農薬使用量を減らし、環境負荷を低減します

農業と環境を取り巻くキーワードの一つに、農薬があります。農薬は、農業に欠かせない資材の1つですが、一方で環境へ負荷を与えていることも事実です。遺伝子組換えの除草剤耐性作物や害虫抵抗性作物を利用することで、農家は使用する農薬の種類や量を減らすことができます。実際のところ、このようなGM作物の利用は、農薬の使用量にどのような影響を与えているのでしょうか。

1995年から2014年までの147報の論文を精査したメタアナリシスによると、GM作物の利用は農薬使用量を37%、農薬コストを39%減少させ、同時に収量を21%上昇させる効果があることが分かりました1。別の報告書によれば、1996年以降、GM作物の導入により農薬の有効成分使用量が6億1870万kg (8.1%) 減少したと算出されています2

この報告書はさらに、農薬の使用が環境ひいては動物や人へ与える影響を、環境影響指数Environmental Impact Quotient (EIQ) という指標を用いて分析しています。EIQは、主として毒性に着目した指標であり、個々の有効成分の主要な毒性および環境暴露データを用いて計算されています。これによれば、1996年以降、GM作物の利用によりEIQが18.6%低下したと報告されています。すなわち、従来の農業よりも、GM作物は農薬使用量を減らし、より環境負荷の低い農業を実現しているのです。

遺伝子組換え作物からの「遺伝子流入」が環境へ悪影響を与えた事例はありません

ある集団に、別の集団由来の新しい遺伝子が広がる現象を、遺伝子流入gene flowと呼びます。GM作物の利用の結果、GM作物に導入されている新しい遺伝子が、他の作物や野生種に遺伝子流入して生態系を「汚染」してしまわないのか、これは多くの方が懸念される点の1つです。そもそも、GM作物は、元の作物の繁殖特性と差異は無いと認められたもののみが栽培されていますので、元の作物との交配自体は起こり得ることです。重要な点は、交配の結果移行した遺伝子が、その個体の競合性を向上させ、他の個体を駆逐して繁殖するような事態をもたらすか否かです。果たしてそのようなことは起こり得るのでしょうか。

米国科学・工学・医学アカデミーによる報告書がこの点について精査しています3害虫抵抗性 (IR) 遺伝子は、害虫の食害から身を守る手段を提供するので、自然環境下でも一見すると有利そうです。しかし、IR作物からの遺伝子流入が、自然環境において近縁野生種の競合性を高めたという報告はありません。また除草剤耐性 (HT) 作物の場合は、除草剤の使用の有無という選択圧を考慮する必要があります。除草剤の散布を定期的に受ける環境においては、HT遺伝子を持つ個体がその繁殖の範囲を拡大することは起こりえます。しかし、除草剤の散布を受けない自然環境下で、HTの遺伝子流入が近縁野生種の競合性や雑草性を高めたという報告はありません。この報告書は、「GM作物から近縁野生種への遺伝子流入が、環境へ悪影響を及ぼした例は無い」と結論しています。

自然環境の保全に貢献しています

GM作物は環境に対して安全なだけではありません。むしろ、従来の農業よりも様々な面で環境保護に貢献しています。

GM作物の利用は、二酸化炭素の排出量を削減します。GM作物を利用した農法では、農薬散布や耕起のためのトラクターの利用頻度を減らすことができます。トラクターの利用が減れば燃料使用量も減少し、大気中への二酸化炭素放出量も減少します。その量は、2015年1年間で10億5,600万リットルの燃料消費が抑制され、結果として28億1,900万kgの二酸化炭素放出量が抑制されたことに相当します2。GM作物の利用による二酸化炭素の放出抑制効果はこれだけではありません。従来の農法では、除草のための耕起が必要ですが、耕起によって土壌に閉じ込められていた二酸化炭素が大気中に放出されることになります。一方で、GM作物を利用すると不耕起栽培が可能になりますので、結果として二酸化炭素は土壌に隔離されたままとなります。この炭素隔離による潜在的な二酸化炭素放出量の抑制効果は、2015年1年間で239億kgに上り、これは約1,000万台の自動車が1年間に排出する量に相当します。

GM作物の利用は、耕地面積の拡大を抑制しています。国連によれば、世界人口は2050年までに30%上昇し、97億人に達すると予想されています。人口が増え都市化が進めば、より多くの食料や繊維、燃料が必要になります。その需要に見合う作物を生産するための、私たちの選択肢は限られています。すなわち、手つかずの森林や草原を農地に開拓するか、それとも既存の農地の生産性を高めるかです。多くの方が、後者の選択肢をより好ましいと思われるでしょう。そして、バイオテクノロジーは農地の生産性を高める極めて有効な手段です。事実、2015年の農業生産をGM作物を利用せずに達成するには、1,950万ヘクタール多い農地を必要とした計算になります2。これは、北海道(835万ヘクタール) 2つ分以上の面積です。

他にも、GM作物は環境保護につながる様々な可能性を有しています。不耕起栽培は、土壌の浸食やそれに伴う水系の汚染を防ぎます。窒素利用効率を高めたGM作物は、窒素の流出により水系の汚染を軽減します。褐変しにくいGMリンゴやGMジャガイモは、食品の無駄な廃棄を減らすことができるでしょう。

1Klümper W, Qaim M (2014). A Meta-Analysis of the Impacts of Genetically Modified Crops. PLoS ONE 9(11): e111629.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0111629
2Brookes G, Barfoot P (2017). GM crops: global socio-economic and environmental impacts 1996-2014. PG Economics Ltd, UK. 3The National Academies of Sciences?Engineering?Medicine (2016). Genetically Engineered Crops: Experiences and Prospects. The National Academies Press.
http://nas-sites.org/ge-crops/

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