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セミナー:遺伝子組み換え作物の商業栽培?10年の跡と将来展望
バイテク情報普及会は12月2日、非営利公益法人・国際アグリバイオ事業団(ISAAA)会長であるクライブ・ジェームズ博士を講師に招き、セミナー「遺伝子組み換え作物の商業栽培―10年の軌跡と将来展望」を開催しました。
農業科学者であるクライブ・ジェームズ博士は25年間にわたり、アジア、ラテンアメリカおよびアフリカ諸国で、農業分野の研究開発課題に取り組み、1990年にISAAAを設立。発展途上国の飢餓と貧困の軽減を目的に、資源の貧しい農業者へバイオテクノロジーの導入や技術供与の促進活動を行っています。現在世界で13億人が貧困、8億5000万人が飢餓に苦しんでいる状況があり、博士は「バイオテクノロジーは万能薬ではないが、貧困と栄養失調の軽減に貢献する一つの解決策となる。」と考えています。
博士はまた、遺伝子組み換え作物の世界的状況に関する年次レポート(*)を毎年刊行しており、その調査結果は国際的にも認められて広く活用されています。2004年の年次レポートによれば、世界の遺伝子組み換え作物の栽培面積は8,100万ヘクタールとなり、1996年の商業栽培開始から9年間で、日本の国土の2倍相当に成長しています。また、2004年の栽培面積の伸び率が、先進国では前年比13%であったのに対して、途上国は35%となっており、途上国での栽培面積が全体の3分の1を占めています。
講演の中で博士は「これからの10年間はアジアの時代になるであろう。」との見解を述べ、世界で飢餓に苦しむ8億5000万人のうち5億2000万人がアジア地域に暮らす人であることや、中国は世界第5位の遺伝子組み換え作物の栽培国に成長し、開発に力を入れていることなどをその理由としてあげました。過去の経験を踏まえ、今後アジアにおける正しい情報提供活動やリスクコミュニケーションの重要を指摘するとともに、「日本には透明性・信頼性のあるデータや、過去の経験の蓄積があるので、アジアにその知識を伝えてほしい。」と日本のリーダーシップへの期待を寄せました。
(*)2005年度の世界での遺伝子組み換え作物栽培状況
2006年1月12日に発表され、バイテク情報普及会が日本語版を配信しました。 プレスリリース及び詳細データは、以下のページにてご覧いただけます。
世界の遺伝子組み換え作物の作付け面積 商業生産から10年目を迎える2005年も拡大
2006年米国の遺伝子組み換え農作物の栽培状況 (NASS)