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東京大学医科学研究所 注射・冷蔵のいらないコメ型粘膜ワクチンの開発に成功

東京大学医科学研究所・清野宏教授らの研究チームは、遺伝子組み換え技術を用いてコメにコレラのワクチン成分を作らせることに成功し、研究成果を米科学アカデミー紀要(PNAS)電子版にて発表しました。注射や冷蔵管理の必要がなく、多くの感染症への理想的な予防法、治療法として注目されています。

このコメに含まれるワクチン抗原はデンプンに保護されているため、胃などの消化器官では消化されずに腸まで届く仕組みになっています。同研究チームが、このコメを粉末にしてマウスに経口投与したところ、腸の粘膜からワクチン成分を吸収してコレラ免疫を獲得することが確認されました。コメに組み込む遺伝子を変えれば、コレラ以外の感染症にも広く対応することが可能です。
今回開発されたコメ型粘膜ワクチンは、食べられるコメの中にワクチン成分が作られるので、そのまま製剤化することが可能です。そのため、遺伝子組み換え微生物などを使ってワクチンを作らせる従来の方法よりもコストを抑えることができます。また、常温で長期間安定しているため冷蔵管理がいらず、注射器を使わずに経口投与できるため二次感染などの心配もありません。これらの理由から、発展途上国でも扱いやすく、世界的な感染症予防対策として実用化が期待されています。

粘膜ワクチン
インフルエンザ、エイズ、SARSなどの感染症の多くは、呼吸器、消化器、生殖器などの粘膜面を介してヒトに感染することが知られ、これらの感染症対策には、感染の入口である粘膜面での防御が理想的とされています。粘膜ワクチンは、粘膜面での感染侵入阻止と全身系免疫による体内防御の両方に効果があり、操作性・安全性・経済性の観点においても、従来の注射によるものより優れた、理想的な感染症の予防・治療法として期待されています。

米国アカデミー紀要ホームページ

http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/0703766104v1?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=rice&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

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