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2006年の遺伝子組み換え作物、世界的に栽培面積が拡大
13パーセント増(昨年比)で1億ヘクタールを超過
調査報告は2015年までに2億ヘクタール、農業生産者2,000万と予測
デリー(インド)-(2007年1月18日) 本日発行された国際アグリバイオ事業団(ISAAA)年次報告書によると、2006年も引き続き、世界的に農業生産者は急速に遺伝子組み換え作物を導入し、食料、飼料、繊維、燃料の生産量を高める作物栽培について多くの画期的な進歩が遂げられた。
導入から最初の10 年間を過ぎ、遺伝子組み換え作物栽培面積は昨年に比べ1,200万ヘクタールまたは13パーセント増大の1億200万ヘクタールとなり、初めて1億ヘクタールを超え、過去5年間で2番目に高い成長率を記録した。1996年から2006年の間の成長率は過去最高の60倍に増大し、これは作物に関するどの栽培技術においても最高の導入率である。さらに、遺伝子組み換え作物を栽培する農業生産者数は、2005年の850万から初めて1,000万を超える1,030万となった。
ISAAA 創始者であり現会長、そして報告書の著者でもあるクライブ・ジェームズ氏は、これらの導入水準は商業化開始から第2期目の10年間も急成長を続けると期待している。また2015年までには、約40カ国で2,000万の農業生産者が2億ヘクタールの遺伝子組み換え作物を栽培するとISAAA は予測している。
ジェームズ氏は「昨年遺伝子組み換え作物を栽培した930万の農業生産者のうち、9割以上は発展途上国の小規模な資源に乏しい農業生産者で、バイオテクノロジーが彼らの困窮を緩和する一助となっています。何百万もの小規模な、資源に乏しい生産者が、今後10年間に遺伝子組み換え作物の持つ可能性に目を向けるであろう」と語っている。
事実、報告書によると、遺伝子組み換え作物導入の成長率は開発途上国において21パーセントと、成長率9パーセントの先進工業国に比較して著しく高い。現在、開発途上国は世界の遺伝子組み換え作物栽培面積の40パーセントを占めている。
インドで遺伝子組み換えワタ栽培に携わる、未亡人で2児の母ラヴィンダー・ブラー氏は、開発途上国の農業生産者には、環境面と時間節減の利点とともに遺伝子組み換え作物がもたらす生産量と収入の増加が必要だと語る。「遺伝子組み換え作物で農薬散布作業のコストが軽減でき、収穫の増加に繋がりました。遺伝子組み換え作物栽培で利益がアップし、私たち家族がより良い生活を送ることができるようになると思います」。
インドの農業科学者採用委員会会長でもあるISAAA 理事C.D. マイー氏もブラー氏の意見を裏付ける。「Bt(害虫抵抗性)ワタは、2001-2002年に生産量が1ヘクタール当り308キロであったものが2005-2006 年には1ヘクタール当り450キロと、インドのワタ生産量増加に大きく貢献している。同様に、Bt ワタの生産量の増加はインドのワタ輸出増加の主要な要因となっており、2005年の90万ベール*が2006年には470万ベールに増大し、インドのこれまでの最高を記録した」。
こうした利点が促進力となって、遺伝子組み換え作物は世界的に幅広く成長している。2006年には、主要大陸ごとの中心となる成長拠点各地が、今後10年間の広範かつ安定的な遺伝子組み換え作物栽培の基盤となっている。また、昨年は22カ国が遺伝子組み換え作物の作付けを行う一方、さらに29カ国が遺伝子組み換え作物の食料・飼料輸入と栽培を認可したと報告書は述べている。
「今や65億人の世界人口のうち半数以上の人々が遺伝子組み換え作物が栽培されている国々に住み、36億人が遺伝子組み換え作物によって得られる経済的、社会的、そして環境的な恩恵を被っています」とジェームズ氏は語る。「計51カ国が遺伝子組み換え作物を経験するなか、今後も受け入れの度合いは高まっていくでしょう」。
*ベール(bale) : 収穫したワタを一定の大きさの長方形に固めた塊を「ベール」と呼ぶ。
■主要成長拠点
アメリカ地区: 480万ヘクタール増加し2006年最大の面積増を担ったアメリカ合衆国が引き続き北米および世界的な成長の原動力である。ブラジルは、22パーセント上昇し、大豆と遺伝子組み換えワタ(後者は2006年に初めて商業化)の栽培面積が1,150万ヘクタールに及ぶなど南米の成長を主導している。
アジア地区:インドがアジアの中心的リーダーとして頭角を現している。同国は最大級の増加率192パーセント、250万ヘクタール増を記録し、計380 万ヘクタールに達した。その結果世界ランキングで2位上昇し、初めて中国を抑え世界第5位の遺伝子組み換え作物生産国となった。
アフリカ地区:南アフリカが昨年目覚ましい成長を遂げ、遺伝子組み換え栽培面積をほぼ3倍にしてアフリカ大陸を前進させた。とりわけ、主に食料となるBt ホワイト・コーンと、家畜飼料用のBtイエロー・コーンが増加した。
ヨーロッパ地区:スロバキアがEU25カ国中6番目の遺伝子組み換え作物栽培国となりEU 圏内は引き続き成長。2006年に6万ヘクタールを作付けしたスペインが依然ヨーロッパを主導したものの、その他5カ国のEU加盟国も、栽培面積を2005年の1,500ヘクタールから2006年には約8,500ヘクタールと5倍に拡大した。
■今後の成長要因
ISAAA は、商業化10年を迎えた今後の10年間も、複数の地理的地域で多くの機会に恵まれ、さらに成長は続くと予想している。
「遺伝子組み換えイネの商業化だけでも、現在の控えめな推定である農業生産者数2,000万から8,000万へと遺伝子組み換え作物導入を拡大することが十分可能です。これは世界のコメ生産者2 億5,000万の3分の1 の導入率を基にしたもので、その多くは小規模で資源に乏しい農業生産者、その9割がアジアの人々です。生産量を上げるために害虫抵抗性を高めた遺伝子組み換え米は、貧困を2015年までに半減させるという国連ミレニアム開発目標に大きく貢献し、ビタミンAを強化したゴールデンライスは栄養改善に大きく貢献するでしょう」とジェームズ氏は語る。
バイオ燃料もまた主要な成長要因である。エネルギー作物から作られるセルロース性エタノールの市場への導入に関して遺伝子組み換えの選択肢が模索されるとともに、代替燃料の生産効率を高め、その増大する需要を満たすためにも、遺伝子組み換え作物が使われる。遺伝子組み換え作物は、増加を続ける食品と燃料の需要を満たすのに重要な役割を果たすのである。また、干ばつに強い性質を備える遺伝子組み換え作物が今後5 年以内に市場に登場すると予想されており、乾燥気候においての大幅な生産拡大の機会を実現することになる。
アメリカ大陸が遺伝子組み換え作物導入の最初の10年間を主導したが、今後の10年間はアジア地域、その開発途上国インド、中国、フィリピンや遺伝子組み換え新規参入国パキスタン、ベトナムなどの顕著な成長によって特徴づけられると思われる。アフリカ地域では、南アフリカの経験から、エジプト、ブルキナファソ、ケニヤなど、すでに具体化に向けた圃場試験が行われている他の国々でも遺伝子組み換え作物栽培導入が予想される。最後に、遺伝子組み換え作物導入の継続的、世界的拡大は、EU での評価が高まっている傾向と考えてよいだろう。主要加盟国フランスはその中心的な事例であり、Bt トウモロコシ栽培面積が2006年には何倍にも拡大し5,000ヘクタールに達している。
ジェームズ氏は「バイオテクノロジー導入において私たちはエキサイティングな時代を迎えています。商業化の第2 期、今後10年間を考えると、多くの要因が、初期導入時よりも遥かに大規模な成長を促すことのできる状態になっています。遺伝子組み換え作物が世界13億人の貧困層に大きく貢献し影響を与えることができるのはこれからの10年間です」と話している。
報告書は、1960年代約10億人の命を救った「緑の革命」に米国と縁が深かった慈善団体、ロックフェラー財団と、スペイン最大の銀行のひとつでありスペイン国内のトウモロコシ栽培地域に本社を置くイベルカハの資金提供を受けている。
詳細または要旨についてはwww.isaaa.org 参照。
国際アグリバイオ事業団(ISAAA) は、遺伝子組み換え作物の知識と技術の導入伝達で飢餓と貧困の軽減に寄与するため設置された国際的な拠点ネットワークを持つ非営利団体。ISAAA の創始者でもある会長のクライブ・ジェームズ氏は、過去25 年間アジア、ラテンアメリカ、アフリカの開発途上国で暮らし、遺伝子組み換え作物の技術と世界的食糧保全を中心に農業研究や開発問題に取り組む。
この件に関する問い合わせ先
バイテク情報普及会 広報事務局
担当:渥美(アツミ)・成田
el:03-5561-9192
2006年遺伝子組み換え作物を栽培した22ヶ国における国別栽培状況
国名 | 栽培面積(ha) | 対前年比 | 栽培作物 | 備考 |
---|---|---|---|---|
米国 | 5,460万 | +9.6% | 大豆 トウモロコシ ワタ ナタネ スクワッシュ パパイヤ アルファルファ |
世界の遺伝子組み換え作物の53.5% その約28%がスタック作物(掛け合わせ品種) 2006年最高の作付面積拡大 世界で始めてアルファルファの商業化に着手 |
アルゼンチン | 1,800万 | +5.2% | 大豆 トウモロコシ ワタ |
世界の遺伝子組み換え作物の17.6% |
ブラジル | 1,150万 | +22.3% | 大豆 ワタ |
世界の遺伝子組み換え作物の10.9% |
カナダ | 610万 | +5.2% | ナタネ トウモロコシ 大豆 |
世界の遺伝子組み換え作物の5.9% |
インド | 380万 | +192.3% | ワタ | 推定230万人の農業者が利用 2006年最高の増加率(ほぼ3倍) |
中国 | 350万 | +6.1% | ワタ | 世界の遺伝子組み換え作物の3.4% 推定680万の農業生産者が利用 |
パラグアイ | 200万 | +11.1% | 大豆 | 世界の遺伝子組み換え作物の2% |
南アフリカ | 140万 | +180.0% | トウモロコシ 大豆 ワタ |
世界の遺伝子組み換え作物の1.4% 2006年第2位の増加率 |
ウルグアイ | 40万 | +33.3% | 大豆 トウモロコシ |
|
フィリピン | 20万 | +100.0% | トウモロコシ | |
オーストラリア | 20万 | -33.3% | ワタ | |
ルーマニア | 10万 | – | 大豆 | |
メキシコ | 10万 | – | ワタ 大豆 |
|
スペイン | 10万 | – | トウモロコシ | |
コロンビア | <5万 | – | ワタ | |
フランス | <5万 | – | トウモロコシ | |
イラン | <5万 | – | イネ | |
ホンジュラス | <5万 | – | トウモロコシ | |
チェコ共和国 | <5万 | – | トウモロコシ | |
ポルトガル | <5万 | – | トウモロコシ | |
ドイツ | <5万 | – | トウモロコシ | |
スロバキア | <5万 | – | トウモロコシ | 2006年に初めて栽培 |