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世界の遺伝子組み換え作物の栽培が環境や経済にもたらすインパクト1996-2011
世界の遺伝子組み換え作物栽培が環境や経済にどのようなインパクトをあたえているか、グラハム・ブルックス並びにピーター・バーフットによる最新の分析報告が公開されましたので、その概要を紹介します。
報告の概要:
遺伝子組み換え作物は、1996年に初めて大面積で栽培されて以来、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、キャノーラ(ナタネ)の4種類の遺伝子組み換え作物で、栽培面積が飛躍的に増加してきた。2011年には、遺伝子組み換え品種の栽培面積は、これら4作物の全世界栽培面積のうち44%を占めるに至っている。
商業栽培されている主要な形質には、(i) 除草剤耐性のトウモロコシ、ワタ、キャノーラ(ナタネ)、テンサイ、アルファルファなどがあり、これらはグリホサートやグルホシネートなどの非選択性除草剤に耐性をもつ。さらに、(ii) 「Bt」テクノロジーを基にした、害虫抵抗性のトウモロコシやワタがある。
本分析報告では、作物バイオテクノロジーが、極めて大きく、ポジティブな環境的、経済的ベネフィットをもたらしていることを明らかにした。環境インパクト評価では、この技術の採用の結果、農薬散布が4億7400万kg(-8.9%)減少し、環境インパクトファクター(EIQ)が18.1%低下したことが明らかになった。さらに、農薬散布の減少と不耕起栽培への移行は、温室効果ガスのレベルの低下につながっていることが確認された。
1996年から2011年の間にもたらされた農家レベルでの正味の経済的ベネフィットは、982億ドルに達し、遺伝子組み換え技術は、主要な4作物の世界的な生産量増加に大きく貢献している。
分析結果の主要ポイント:
- 除草剤耐性の遺伝子組み換え作物栽培は、除草剤の使用に変化をもたらし、より環境に負荷の少ない除草剤製品が使用されるようになるとともに、減耕起や不耕起栽培システムへの移行を可能にした。
- 除草剤耐性の遺伝子組み換えダイズ、トウモロコシ、ワタの栽培により、環境インパクトファクター(EIQ)は、其々、15.5%、 12.5%、8.9%低下し、使用される除草剤の有効成分量は、其々、0.6%、 10.1%、6.1%削減された。
- 1996年から2011年の間、除草剤耐性の遺伝子組み換えダイズ、トウモロコシ、ワタの栽培により、世界の農家の総収入は、其々、322億ドル、42.1億ドル、12.2億ドル増加したものと推定される。
- グリホサートに抵抗性を持つ雑草の発生を防ぐため、適切な雑草管理戦略が益々採用されるようになった。
- 害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシとワタの栽培により、環境インパクトファクター(EIQ)は、其々、41.7%、27.3%低下し、使用される殺虫剤の有効成分量は、其々、45.2%、24.8%削減された。
- 全世界の農家の総収入は、害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシとワタの栽培により、其々、258億ドル、313億ドル増加した。
- 害虫抵抗性遺伝子組み換え作物の栽培で農薬散布回数が減り、除草剤耐性の遺伝子組み換え栽培で減耕起や不耕起が可能となったことにより、燃料の使用量が確実に減少し、年間約650万台の自動車を削減した場合に匹敵する、146億900万kgの二酸化炭素の削減につながった。
- 害虫抵抗性遺伝子組み換え作物については、1996年以降の平均収量が、トウモロコシで10.1%、ワタで15.8%増加している。
- 2011年には1670万人の農家がバイテク作物を栽培したが、仮に、これらの農家が作物バイオテクノロジーを利用することが出来なかったとすれば、2011年の世界の生産量を維持するためには、ダイズでは540万ヘクタール、トウモロコシでは330万ヘクタール、キャノーラ(ナタネ)では20万ヘクタール、其々、栽培面積を増やさねばならなかったことになる。これらの面積の総和は、米国の全畑作物面積の9%、ブラジルの全畑作物面積の25%、あるいは、EUの穀物栽培面積の28%に相当する。
- 2011年の農家の収入増の過半(51%)は、発展途上国の農家にもたらされ、これらの農家の90%はリソース不足の小規模農家であった。累計では(1996-2011)、発展途上国の農家と先進国の農家にもたらされたベネフィットは、其々、凡そ50%であった。
報告の詳細は以下のサイトでご覧ください。
世界の遺伝子組み換え作物栽培がもたらす主要な環境インパクト1996-2011 (英語)グラハム・ブルックス、ピーター・バーフットPGエコノミクスLtd (英国ドチェスター)農業と食物連鎖における遺伝子組み換え作物と食品バイオテクノロジー 4:2, 2013
http://www.landesbioscience.com/journals/gmcrops/article/24459/
遺伝子組み換え作物による世界の収入と生産への効果1996-2011 (英語)グラハム・ブルックス、ピーター・バーフットPGエコノミクスLtd (英国ドチェスター)農業と食物連鎖における遺伝子組み換え作物と食品バイオテクノロジー 4:1, 2013
http://www.landesbioscience.com/journals/gmcrops/article/24176/