新着情報

オーストラリア開発の高鉄分の遺伝子組み換えイネ IRRIで試験栽培を開始

 オーストラリアの植物機能ゲノムセンター(Australian Centre for Plant Functional Genomics)は、遺伝子組み換え技術を用いて、通常の2倍の亜鉛および4倍の鉄分を含むイネの開発を行い、このほどIRRI(国際イネ研究所)と共同で試験栽培を開始しました。

 オーストラリアの研究は、南オーストラリアおよびメルボルンにある3つの大学による共同研究チームによるもので、既に温室レベルの実験段階を終了させています。今回行われる試験栽培は、さらに実用化に向けたステップに進めるもので、実際に鉄分が土壌からどの程度吸収できるかを確認、濃度などを確認します。

 試験栽培は、フィリピンに本部を置くIRRI(International Rice Research Institute:国際イネ研究所)で行われます。IRRIは1960年に創設されて以来、世界の稲作農家と低所得層のコメ消費者の生活を改善するための研究機関で、イネに関する様々な研究(遺伝資源の収集、農薬・肥料の効率的な使用法の普及、新品種の開発など)において成果を挙げてきました。遺伝子組み換え技術についても研究・開発を行っており、ビタミンAの前駆物質であるβカロテンを含み、ビタミンA不足の解消につながるコメ「ゴールデンライス」の研究・開発でも知られています。

 また、IRRIは1971年に設立された国際農業研究協議グループ(CGIAR)の一員でもあります。CGIARは、15の研究センターがあり、現在100カ国以上の国々で8,000人を超える科学者やスタッフが活動を展開しています。日本もCRIARにおよそ20億円の資金供与を行っています。質の高い農業の国際的研究、貧困と飢餓の緩和、人々の健康と栄養向上、より回復力のある生態系育成というビジョンを掲げて、貧しい人々に恩恵をもたらす農業を持続可能な形で発展させるために最先端の科学技術を活用しています。

 CGIARの共同研究から生まれた新しい品種、知識、その他の産品は、世界各地で持続可能な農業開発に携わる人々や組織に広く開放されています。さらに、これらの研究センターは、政策立案や研究活動に携わるだけでなく、研究結果が実験室から農家へと確実に伝わるよう、国家や地域の研究所、政府、市民社会団体、と協力しています。

 今回のIRRIの研究はゴールデンライスと同様に、多くの発展途上国において深刻な問題になっている鉄欠乏症とそれによる貧血の解決策として、期待されています。

参考記事
http://www.fnbnews.com/article/detnews.asp?articleid=30677§ionid=1
http://www.adelaidenow.com.au/scientists-find-way-to-put-iron-in-rice/story-e6frea6u-1226131761704
IRRIウェブサイト
http://irri.org/

Pagetop