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世界初シダ植物のゲノム解読 遺伝子を利用した品種改良に期待
これまで、地球環境や私たちの生活に欠くことのできない陸上植物について、被子植物以外ではほとんどゲノム解読が行われてきませんでした。特にシダ植物は、コケ植物と被子植物の中間にあり、前者2種はすでにゲノムが解読されているのに対し、ゲノムの大きさが大きく解読が難しいとされてきました。また、このゲノム解読が進まないことで、陸上植物がどのような遺伝子によって進化してきたかも謎となっていました。
今回研究チームは、シダ植物の中でもゲノムの大きさが小さいイヌカタヒバを用い、ゲノムの解読に成功しました。また、被子植物・シダ植物・コケ植物に共通に存在する「発生に関わる遺伝子のリスト」を作り、その中に細胞分裂、細胞の形、遺伝様式に関わる遺伝子があり、これらの機能は植物全体に共通であるらしいことを確認しました。
加えて、シダ植物に比べ被子植物では、遺伝子の発現を制御する遺伝子の数が増加していることを確認し、単純な形であるシダ植物から複雑な被子植物への進化を引きこした可能性があることがわかりました。
動物よりも植物のゲノムの方が変化が大きく、植物ホルモンの合成や、昆虫を引き寄せる働きを持つ二次代謝産物に関わる遺伝子は、被子植物、シダ植物、コケ植物でそれぞれ独自に数を増やしたり減らしたりして、多様性を生み出していることも分かりました。
シダ植物は、乾燥耐性能力や再生能力、耐病害虫性などで、被子植物よりも優れた有用な性質を持っています。今回の研究成果によって、これらの働きを司る遺伝子を解析することが容易になり、今後、それらの遺伝子情報を利用して、作物に有用な性質を付与し品種改良することに役立つことが期待されています。
(独)科学技術振興機構ホームページ
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110506/index.html
Scienceホームページ
http://www.sciencemag.org/content/early/2011/05/04/science.1203810