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(独)農業生物資源研究所 コシヒカリの全ゲノム塩基配列を解読
(独)農業生物資源研究所は、イネ品種「コシヒカリ」の全ゲノム塩基配列を解読し、日本のイネ品種改良に伴う、遺伝子の組み合わせの変化を解明したと発表しました。日本のイネの品種改良の歴史を遺伝子レベルで明らかにした初めての成果で、今後の品種育成を効率的に行うために重要な情報基盤となるとされます。この成果は、4月27日に英国の電子科学雑誌BMC Genomicsにも公開されました。
開発されて半世紀が経ったコシヒカリは、日本人にそのおいしさが好まれ、現在30年にわたって日本一の栽培面積と生産量を維持している、最も重要なイネの品種です。同研究所では、最新の遺伝子解読技術を用いて重複を含む59億塩基対のコシヒカリ塩基配列を明らかにしました。これを2004年に解読を終えているイネの品種「日本晴」のゲノム塩基配列3億8000万塩基対と比較し、約80%にあたる3億600万塩基対のコシヒカリゲノム塩基配列を決定しました。残り約20%は、繰り返し配列や遺伝子の重複・欠損など日本晴とは大きく異なる領域であることが分かりました。日本晴とコシヒカリの間には、67,051箇所の塩基配列の違い(一塩基多型:SNP)が見られ、このうち3,352個は機能を持った遺伝子(1,077個)の内部にあり、この2品種の特徴の違いとの関連が示唆されました。
さらに、品種改良の歴史において重要とされる151品種のDNAについて調査したところ、コシヒカリのゲノムの起源が、100年以上前の有名な品種を含む6種の在来種から受け継いでいることが分かりました。現在、栽培面積、生産量の多い品種では、コシヒカリを親に持つ品種が多く、ゲノム領域を大幅に共有していることが明らかとなりました。育成年別にDNA配列パターンの違いを調査したところ、最近の品種になるにつれ遺伝的多様性が減少しており、日本のイネ品種群では、品種改良によってコシヒカリの遺伝子ばかりが導入され、遺伝的多様性が失われつつあるとも推定されました。
今回の発見によって、より身近な米のDNA配列の違いを見出すことが容易になったことで、品種識別の制度が飛躍的に高まり、品種の保護やトレーサビリティーの高精度化に貢献できると考えられます。また、品種改良の歴史がより詳細となり、多様性を保ちながら品種育成を進める新しい育種法として利用するなど、品種改良の飛躍的な効率化につながると期待されています。
農業生物資源研究所プレスリリース
http://www.nias.affrc.go.jp/press/20100524/