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東京大学、石川県立大学らの共同研究 鉄分豊富な遺伝子組み換えコメを開発

東京大学と石川県立大学、韓国の浦項工科大学、デンマークのコペンハーゲン大学の共同研究グループが、遺伝子組み換え技術を用いて鉄分を多く含むコメの開発に成功したことを発表しました。このコメを貧血症のマウスに食べさせて症状が回復したことも研究で確認されており、人間の鉄欠乏性貧血症に効果が期待されています。

研究の目的である可食部の鉄含有量を高めるためには、土壌中からの鉄の吸収を高めるとともに、鉄の体内移行の促進が重要となります。研究グループは、イネ体内の鉄輸送に働くニコチアナミンの合成を強化することによって、種子中の鉄含量が高いイネを作出することに成功し、白米の鉄含有量は3倍まで増加しました。

イネ科の植物は、土壌中の鉄分を吸収するために、キレート(*1)物質である「ムギネ酸類(*2)」を根から分泌して、土壌中の鉄を溶かして吸収しています。このムギネ酸類の生合成中間体であるニコチアナミンは、ムギネ酸類と同様に鉄をキレートすることができ、植物体内の鉄輸送において重要な働きをします。研究グループでは、このニコチアナミン合成酵素(*3)遺伝子に注目し、これを遺伝子組み換え技術を用いて高発現させることによって、ニコチアナミンの合成能力を高めて鉄輸送能力を強化し、白米の鉄含有量を増加させたものです。

通常コメ中の鉄の多くは、生体にとって利用されにくい「フィチン酸鉄」として存在しますが、今回開発したイネでは、利用されやすい「ニコチアナミン鉄」として存在することが明らかになり、食品として鉄の供給にさらに効果的であると考えられます。

これらの成果は、イネだけでなくコムギやトウモロコシなど他の主要な穀物にも応用できます。また、ニコチアナミンはイネ科以外の植物も含めてすべての植物に存在することから、鉄分が豊富な高い栄養価の食品(ダイズや野菜など)を作ることができるかもしれません。この研究によって、世界人口の半分にのぼる鉄欠乏性貧血症の克服に貢献することが期待されています。

参照サイト
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/nisizawa100113.html

(*1)キレート : 蟹のはさみを意味することばで、配位中の2個の原子が、ちょうど蟹がはさみで獲物を持つような形でで、中心の金属原子に配位してできた錯体。
(*2)ムギネ酸類 : 「ムギの根から分泌される酸」に由来する。イネ科植物が土壌中の難溶性の鉄を溶かして吸収するために根から分泌するキレート物質。土壌からの鉄吸収だけではなく、体内の金属元素輸送にも関わることがわかってきている。
(*3)ニコチアナミン合成酵素 : 3分子のS-アデノシルメチオニンからニコチアナミンを合成する酵素。ニコチアナミン合成酵素(NAS)の遺伝子は、1998年に東京大学のグループによって最初にオオムギから単離された。その後、イネ、トウモロコシ、トマト、シロイヌナズナなど多くの植物から単離されている。

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