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(財)報農会 シンポジウム「植物保護ハイビジョン2008」を開催、遺伝子組み換え作物の現状と展望を考える

農作物の保護など植物防疫の推進に取り組む財団法人報農会では、毎年シンポジウム「植物保護ハイビジョン」を開催し、農業における植物保護の情報提供、共有に努めています。9月26日に、副題を「遺伝子組み換え作物の現状と課題」として、遺伝子組み換えに関する世界の現状や実用化に向けた解説から、今後の展望を考えていく第23回シンポジウムを開催しました。
農林水産省農林水産技術会議事務局の横田敏恭氏は、海外及び日本の遺伝子組み換えの現状と農水省としての具体的な今後の実用化に向けての展望を紹介し、ある店では消費者が非組み換えの高価な食用油よりも不分別の食用油を購入する割合が高い例もあることを紹介し、消費者の意識も少しずつ変わり始めているのではないかと述べました。また、農水省が主導となり「2015年の実用化を目指し、遺伝子組み換え作物の研究開発を進める」との展望を語りました。

(独)農業生物資源研究所遺伝子組み換え研究推進室の田部井豊氏は、遺伝子組み換え作物の世界的な栽培状況と、日本における安全性評価の流れを説明しました。加えて、日本でもスギ花粉症緩和や血糖降下に効果的なコメや、いもち病などの病害に抵抗性のあるイネの開発等が進められており、世界的にも組み換え技術を利用した経口ワクチンや、バイオ医療品の開発、環境問題に貢献できる農作物の開発が進められていることを紹介し、遺伝子組み換え作物の可能性を語りました。

(独)農業環境技術研究所の松尾和人氏は、2004年から2006年にわたって行われた除草剤耐性遺伝子組み換えセイヨウナタネの生態調査の結果を発表しました。これはナタネの輸入港周辺での種子のこぼれ落ちや生育状況、分布を調査したもので、組み換えナタネの生育は認められたものの、人の手による除草や清掃管理などで世代亢進につながる種子形成をした個体は少なく、また、生育した個体も他の植物による競合が起こり消失することがほとんどで、生物多様性に大きな影響を与える可能性は低いと考えられる、と結論付けました。
サントリー株式会社植物科学研究所の田中良和氏は、遺伝子組み換えの青いバラを例として、花が色を呈する仕組みや、花の日持ちを良くするための遺伝子組み換え技術を用いた品種改良技術の開発について紹介しました。青いバラは今年1月に農水省と環境省から国内での生産と販売の認可を受けており、来年から一般への販売が予定されています。
日本モンサント株式会社の山根精一郎氏は、遺伝子組み換え作物がそのメリットから世界的に生産者に広く受け入れられてきた現状を紹介しました。遺伝子組み換え技術は限られた農地と厳しい気候への農業上のニーズに応えるとともに、消費者へ直接メリットのある機能性成分を含有した農作物の開発も可能としていることにも触れ、これからの人類、世界を守っていく上で組み換え技術の開発は重要であると位置づけました。
宮城大学食産業学部の三石誠司氏は、経済学的に遺伝子組み換え技術の世界の動向と日本の展望について検証しました。まず初めに日本がどの程度の量、種類の食料を輸入に頼っているのか現実の数字をもって把握することが重要であると主張しました。また、技術の是非を問うばかりでなく「技術やその生産品をうまく使いこなし、活用していくかの議論が必要なのではないか」と提言しました。

(財)報農会ホームページ
http://www.honokai.org/index.htm

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