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農林水産省 「遺伝子組み換え農作物に関するコミュニケーション」で相互の情報を共有
農林水産省は9月8日、遺伝子組み換え技術を利用した研究や作物に関して、より理解を深めるため大規模な「遺伝子組み換え農作物に関するコミュニケーション」を岩手県盛岡市にて開催し、消費者や生産者など約300人が参加しました。コミュニケーションでは情報提供のほかに、消費者、生産者、研究者、マスコミそれぞれの代表者が参加するパネルディスカッションも行われました。
はじめに農林水産省技術会議事務局の瀬川雅裕氏が、組み換え農作物に関する安全性確保の仕組みや、世界的にバイオ燃料との競合や食料不足への懸念が広がる中、コストの低減や燃料消費低減等による環境への影響から遺伝子組み換え農作物の栽培が広がっているという現状を紹介しました。また、遺伝子組み換え農作物の安全性評価は、(1)食品として、(2)試料として、(3)生物多様性への影響評価の3つ視点で作物の1つ1つ膨大な項目の評価が行われていることが示されました。日本では、バイオマス利用の促進に貢献する農作物や不良環境耐性、機能性成分を高めた農作物などを重点的に「2013年の実用化を目標として開発を進めていきたい」と述べました。
続いて、(独)農業生物資源研究所の田部井豊氏は、研究者からの解説として、突然変異育種や胚培養など様々な技術を使った品種改良の流れを説明し、遺伝子組み換え技術もその一つであること、また、実際に行われている遺伝子導入の実験の様子などを紹介しました。また、毎日新聞の小島正美氏は、マスコミからの提言として、日本と比べ世界では急速にGMをめぐる技術が進歩していることや、生産者たちも自ら選択して使用している状況を紹介し、「遺伝子組み換え作物の栽培に興味を持っている日本の生産者にも、栽培するという選択が可能になるようにしていくべき」と提言しました。
パネルディスカッションでは、コーディネーターを務めた明治大学の北野大氏が、21世紀は科学的な「安全」に加えて、自らが理解し納得する「安心」の世紀であり、相互の情報共有をしっかり行い、理解を深めることが大切であると述べました。有限会社夢農業たかはしの高橋静男氏は、「休耕田の利用としてバイオマスに貢献する遺伝子組み換え作物の栽培には興味がある」と生産者からの意見を述べました。宮城大学の三石誠司氏は経済学の観点から、世界的な食糧不足や現在すでに日本へも輸入されている現状などを紹介し、「幅広い目を持って組み換え技術や農作物のこれからを考えるべきである」と提言し、また、岩手県消費者団体連絡協議会の伊藤慶子氏は、「より選択しやすい表示の仕方を求めていきたい」と述べるなど、活発な議論が交わされました。最後に北野氏は、全ての人が全く同じ意見を持つことは難しいことだが、それぞれがしっかりと理解し納得できるように今後も情報共有の機会をたくさん作っていきたい、とまとめました。11月4日には、福岡県福岡市にて同じく「遺伝子組み換え農作物に関するコミュニケーション」が開催される予定です。
農林水産省 農林水産技術会議
「遺伝子組み換え農作物に関するコミュニケーション」の開催及び参加者の募集について
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/080804.htm