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農林水産省、遺伝子組み換え作物の長期的栽培は生物相に影響を及ぼさない
農業環境技術研究所は「遺伝子組み換え作物の栽培と生態影響評価」と題した公開セミナーを開催しました。2000年度に行われた「遺伝子組み換え農作物についてのコンセンサス会議」における市民パネルからの提言を受け、2001年度より生物多様性影響評価に関する研究が開始されました。今回のセミナーでは、遺伝子組み換え作物の長期栽培による生物相への影響や近縁植物との交雑に関する研究成果が報告されました。
生物相への影響については、遺伝子組み換えの大豆、ナタネ、トウモロコシを試験圃場内で複数年にわたって栽培し、後作、雑草、節足動物、土壌微生物に与える影響が調査されました。その結果、従来作物を栽培した場合と比較して明瞭な差はなく「生物相への特別な影響はない」ことが報告されました。(農業環境技術研究所吉村泰幸氏、畜産草地研究所黄川田智洋氏)
近縁植物との交雑については、遺伝子組み換え作物の繁殖様式は同種の従来作物と変わらないことに着目し、トウモロコシの白色粒品種と黄色粒品種やイネのモチ性品種とウルチ性品種をそれぞれ従来作物と遺伝子組み換え作物に見立てて栽培し、その交雑状況から花粉(遺伝子)の流れが解析されました。得られたデータを基にした交雑予測モデルが示され、実測値から予測値を検証する仮説検証型の交雑のモニタリング手法が提案されました。(農業環境技術研究所芝池博幸氏)
セイヨウナタネの輸入港である鹿島港周辺において、2004年4月から2005年12月にかけてセイヨウナタネの生育地特性と発生消長の調査が行われました。その結果、除草剤耐性を持つ遺伝子組み換えセイヨウナタネと従来のセイヨウナタネの生育地嗜好性に差がないことが確認されました。また、鹿島港周辺の個体は自生して繁殖しているのではなく、こぼれ落ちた種子による短期的な発生の繰り返しと考えられることが報告されました。(農業環境技術研究所松尾和人氏)
講演後に、「遺伝子組み換え農作物についてのコンセンサス会議」の市民パネリスト4名が今回の発表を受け、今後の情報提供やコミュニケーションのあり方について意見を述べました。「今回の研究結果を遺伝子組み換え作物に不安を感じている消費者に分かりやすく伝えていく必要がある」「地方の農業や環境関連の組織にも情報提供をして欲しい」「きめ細かなPRを行えるような組織や仕組みが必要ではないか」「もっと農業従事者が集まりやすい場や機会を提供して欲しい」などの要望が出されました。