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NCFAP 米国における遺伝子組み換え作物の栽培効果は20億ドル
米国の民間研究機関である全国食糧農業政策センター(NCFAP)は11月16日、遺伝子組み換え作物が米国農業に及ぼす効果に関する報告書を公表しました。米国における遺伝子組み換え作物の栽培面積は、栽培がはじまって10年目にあたる2005年には1億2300万エーカー(4,980万ヘクタール)にまで成長しました。この広範な導入に至った背景には、米国の生産者が遺伝子組み換え作物によってもたらされる利益を実感し、毎年選択し続けていることが理由の一つであると述べられています。
調査は2005年に米国で作付けされた遺伝子組み換え大豆、ワタ、トウモロコシ(デントコーン)、スイートコーン、ナタネ、パパイヤ、スクワッシュ(カボチャ)およびアルファルファの8作物13品種を対象に行われ、生産者や農業に与えた影響が解析されました。2005年に遺伝子組み換え作物の栽培面積が前年より4%拡大した結果、収穫量は約375万トン増加(前年より26%増)、農薬の使用量は約3万トン減少して経済効果は20億ドルに及んだことが明らかになりました。2001年のNCFAPの調査開始以来、経年的に同様の結果が示されており、遺伝子組み換え作物の栽培は確実な利益につながることが、米国の生産者の信頼を得ている所以となっています。
13品種を形質別にみると、除草剤耐性(大豆、デントコーン、ワタ、ナタネおよびアルファルファ)、ウイルス耐性(カボチャおよびパパイヤ)、害虫抵抗性(ワタ2種、デントコーン3種およびスイートコーン)の3タイプに分類され、害虫抵抗性作物は特に収穫量の増加と農薬使用量の減少をもたらし、除草剤耐性作物は雑草管理の容易さと収益の増加に大きく貢献していました。
具体的には、収穫量増加分の91%を害虫抵抗性デントコーンが占め、害虫抵抗性ワタが8%、ウイルス耐性作物(パパイヤおよびカボチャ)が1%の増産に寄与しました。
一方、経済的な効果の内訳は、除草剤耐性大豆による純収益が最も多く約12億ドルにのぼりました。除草剤耐性品種を栽培すると、従来より少ない除草剤の使用回数や種類で効果的に雑草を防除できるため、手による除草作業にかかるコストなどを抑えて収益の向上につながるためです。次いでデントコーン(5.2億ドル)やワタ(2.9億ドル)の栽培でも収益がもたらされました。パパイヤ、カボチャおよびナタネは作付面積がまだ小さいため全体の1.9%でした。
不耕起栽培の採用による環境メリット
遺伝子組み換え作物の栽培によって、生産面や経済面の利益に加え、環境面でも大幅なプラス効果がもたらされていることも示されています。土壌浸食の被害が重要な環境問題となっている米国では、土壌の流出を抑えるために耕さない栽培方法(不耕起栽培)が推奨されています。除草剤耐性作物は、耕起しなくても雑草を防除できるため、農家は以前より不耕起栽培に取り組みやすくなりました。その結果、不耕起栽培の面積は、遺伝子組み換え作物の商業利用前と比較して、大豆では64%、トウモロコシでは20%、綿花では371%も増加しました(2004年の最新データ)。
保全技術情報センター(CTIC)によると、不耕起栽培などの保全型耕作法の増加により、土壌流出が約10億トン減少し、土壌管理コストの35億ドルの節減につながったと算出されています(2002年)。不耕起栽培にはその他にも、耕運機などの燃料の大幅な節約(1エーカー当たり3.9ガロン)や温室効果ガスの減少、鳥獣類の生息環境の改善などの環境メリットがあることが報告されています。
燃料用途の需要拡大も満たすだけの収穫量UPが可能
近年、化石燃料の代替燃料として、トウモロコシのデンプンから製造されるエタノールの需要が急速に拡大しています。そのため、食物と燃料、双方の需要を満たすだけのトウモロコシを今後も生産できるかという点に関心が高まっています。この問題に対する解決策は、遺伝子組み換え技術によって得られるであろうと本報告書では示しています。米国の生産者は、遺伝子組み換え作物の商業栽培をはじめたこの十年間で、トウモロコシの収穫量を175万トン増加することができたこと、2005年の遺伝子組み換え品種の割合は、米国のトウモロコシ栽培面積全体の3分の1であることから、遺伝子組み換え技術のさらなる利用により、今後も大幅な収穫量の増加が示唆されるとしています。
NCFAPホームページ
http://www.ncfap.org/whatwedo/biotech-us.php