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セミナー:2010年世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培に関する最新状況
バイテク情報普及会は3月3日(木)、ISAAA(国際アグリバイオ事業団)会長のクライブ・ジェームズ博士、ISAAA国際コーディネーター兼東南アジアセンター理事長のランディ・A・ホーティ博士を講師に迎えて「2010年世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培に関する最新状況」と題したセミナーを都内で開催しました。
講演の中でジェームズ会長は、2010年の世界の遺伝子組み換え作物の作付面積が1億4800万ヘクタールに及び、2009年と比較して10%、1400万ヘクタール増加していると報告しました。栽培国は2009年の25カ国から29カ国に増加し、新たな栽培国としてはパキスタン、ミャンマーと、北欧で始めてスウェーデンが加わりました。また、ドイツでも遺伝子組み換えジャガイモの栽培を再開しました。
2010年の栽培面積を主要遺伝子組み換え作物別にみると、ダイズが7330万ヘクタール、トウモロコシ4680万ヘクタール、ワタ2100万ヘクタール、ナタネ700万ヘクタールで、これら全ての作物において過去最高の栽培面積に達しています。これによって作物別の遺伝子組み換え作物の普及率は、ダイズで81%、ワタ64%、トウモロコシ29%、ナタネ23%になりました。また、形質ヘクタール(スタックとして導入された性質の数を反映した栽培面積)は、2009年の1億8000万から2010年には2億500万ヘクタールに増加しており、こちらは14%の増加となっています。
遺伝子組み換え農作物は1996年に栽培が開始されていますが、それ以来15年間で累計作付面積は10億ヘクタールを超えました。この面積は米国あるいは中国の総面積に相当するものです。今回発表された2010年の栽培面積は二桁の目覚ましい増加率であり、これは15年間で2番目に大きな数字となります。2010年栽培面積上位10カ国は、いずれも100万ヘクタールを超えています。なかでもブラジルは増加面積が一番高く、400万ヘクタール増加しました。増加率ではオーストラリアが最も高く184%を示し、ついでブルキナファソでも126%を示しています。
遺伝子組み換え農作物の目覚ましい増加の背景には、発展途上国における栽培面積の急増があげられます。2010年の世界の遺伝子組み換え作物の48%は発展途上国によって栽培されているものです。2010年の発展途上国の栽培面積の伸び率は17%で、先進国の5%よりも著しく高いものとなっています。講演の中でジェームス会長は“ラテンアメリカやアジアの成長によって、2015年にはこれら開発途上国が先進国を抜くだろう”と述べました。また、遺伝子組み換えを栽培する1,540万人の生産者のうち、1,440万人は途上国の小規模生産者であり、遺伝子組み換え作物によるメリットはこういった小規模生産者がより享受できることだとしています。
さらにジェームス会長は“遺伝子組み換え作物は、二酸化炭素排出量を削減し、土壌の流出を防ぐことで環境保全に貢献、また貧困の軽減にも貢献している”と述べています。レポートでは、今後の5年間でゴールデンライスや干ばつ耐性のあるトウモロコシの商業化が期待され、遺伝子組み換えコムギの開発も進められると報告しています。
ISAAAホームページ
http://www.isaaa.org/resources/publications/briefs/42/default.asp
ISAAA クライブジェームズ博士「世界の遺伝子組み換え作物ー商業栽培に 関する最新状況2010年」ハイライト参考PDF Highlights_J.pdf
同上PPT資料 参考PDF 9 Slides PPT-Jap.pdf
講師略歴 参考PDF ISAAA lecuture_bio.pdf
2010年遺伝子組み換え作物を栽培した29ヶ国における国別栽培状況
順位 | 国名 | 面積(ha) | 作物 |
---|---|---|---|
*1 | アメリカ* | 6,680万 | トウモロコシ、ダイズ、ワタ、ナタネ、テンサイ、アルファルファ、パパイヤ、スクワッシュ |
*2 | ブラジル* | 2,540万 | ダイズ、トウモロコシ、ワタ |
*3 | アルゼンチン* | 2,290万 | ダイズ、トウモロコシ、ワタ |
*4 | インド* | 940万 | ワタ |
*5 | カナダ* | 880万 | ナタネ、トウモロコシ、ダイズ、テンサイ |
*6 | 中国* | 350万 | ワタ、パパイヤ、ポプラ、トマト、パプリカ |
*7 | パラグアイ* | 260万 | ダイズ |
*8 | パキスタン* | 240万 | ワタ |
*9 | 南アフリカ* | 220万 | トウモロコシ、ダイズ、ワタ |
*10 | ウルグアイ* | 110万 | ダイズ、トウモロコシ |
*11 | ボリビア* | 90万 | ダイズ |
*12 | オーストラリア* | 70万 | ワタ、ナタネ |
*13 | フィリピン* | 50万 | トウモロコシ |
*14 | ミャンマー* | 30万 | ワタ |
*15 | ブルキナファソ* | 30万 | ワタ |
*16 | スペイン* | 10万 | トウモロコシ |
*17 | メキシコ* | 10万 | ワタ、ダイズ |
18 | コロンビア | <10万 | ワタ |
19 | チリ | <10万 | トウモロコシ、ダイズ、ナタネ |
20 | ホンジュラス | <10万 | トウモロコシ |
21 | ポルトガル | <10万 | トウモロコシ |
22 | チェコ | <10万 | トウモロコシ、ジャガイモ |
23 | ポーランド | <10万 | トウモロコシ |
24 | エジプト | <10万 | トウモロコシ |
25 | スロバキア | <10万 | トウモロコシ |
26 | コスタリカ | <10万 | ワタ、ダイズ |
27 | ルーマニア | <10万 | トウモロコシ |
28 | スウェーデン | <10万 | ジャガイモ |
29 | ドイツ | <10万 | ジャガイモ |
*上位17国は遺伝子組み換え作物を5万ヘクタール以上栽培している
出典: クライブ・ジェームズ(2011年)