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つくばメディアツアー:遺伝子組み換え研究開発の最前線

バイテク情報普及会は8月2日、第2回つくばメディアツアー「遺伝子組み換え研究開発の最前線を見る」を開催しました。約20名の新聞、雑誌、テレビ等メディア関係者が参加し、(独)農業生物資源研究所を始めとした最前線でバイテクを研究している4つの研究所を巡り、実験や栽培の様子の見学や研究者の説明と質疑応答を通して遺伝子組み換え技術への理解を深めました。

最初に訪れた(独)森林総合研究所では生物工学研究領域長の篠原健司氏に、樹木のポストゲノム研究についてご説明いただきました。耐乾燥性や耐酸土壌性のユーカリや表土の塩を回避する育種技術、CO2の吸収を促進させた樹木の開発など、荒地の緑地化や越境環境問題対策として期待される遺伝子組み換え樹木が紹介され、質疑応答では、環境問題やバイオエタノール生産に貢献する樹木に参加者の注目が集まり、具体的なメカニズムや今後の課題について述べられました。

次の(独)農業生物資源研究所では、開放系の圃場で実際に育てられている遺伝子組み換えダイズ、イネ、トウモロコシの見学が行われました。特定網室では花粉症緩和米が栽培されており、非遺伝子組み換えイネとの比較や、今後医薬品としてどのように開発が進められていくかなどの説明がありました。除草剤耐性ダイズの圃場では、慣行法で除草した畑には雑草が生い茂っているのに対し、組み換えダイズの畑では雑草だけが除草されている様子が一目瞭然であり、また害虫抵抗性トウモロコシの圃場では、茎に入り込んだ害虫の被害等を直に観察しました。参加者は栽培の様子を実際に見学することで、遺伝子組み換え作物のメリットを実感した様子でした。

圃場見学の後、遺伝子組み換え研究推進室の田部井豊氏に遺伝子組み換え研究の現状をご解説いただきました。2004年にイネゲノムの全塩基配列が解読されて以来、日本では、遺伝子組み換えコメの研究が進められており、その例としてウィルス病に強いイネや貧血予防、高血糖対策が期待できるコメが紹介されました。また、組み換えた遺伝子の拡散防止技術の開発や、医療分野に利用する微生物やモデル動物の生産なども紹介されました。

同研究所の石毛光雄理事長は、日本では諸外国に比べ研究の遅れが懸念されており、また消費者への理解が浸透しづらい現状に対し「今後も消費者の利便性がわかりやすく受け入れやすい作物の開発と同時に、正確な情報発信に努めていきたい」と述べました。

(独)国際農林水産業研究センター(JIRCAS)では、活動の一環として遺伝子組み換え技術による途上国への農業分野の貢献に取り組んでおり、不良環境に強い品種の開発を進めています。JIRCAS生物資源研究領域主任研究員の中島一雄氏は、環境ストレス耐性遺伝子(DREB遺伝子等)を探索し、乾燥や塩分、寒さに強い作物を開発することで、「特に途上国に多い緑地の砂漠化や異常気象などの環境劣化による農業被害に対して貢献すると期待されている」と遺伝子組み換え技術の途上国救済と環境問題改善への可能性を述べました。

最後に訪れた(独)農林水産先端技術研究所(STAFF)では、農作物に関する研究のみならず、豚の全ゲノム解読が進行中で、家畜を取り巻く疾病や飼料添加剤などの問題点を考慮した畜産物の開発が取り組まれており、交配により柔らかさ遺伝子領域を導入した豚の開発などが紹介されました。

その他、遺伝子組み換え研究で実際に使用されるシーケンサーなどの最先端の機器や閉鎖系での栽培の様子にも触れ、見学全体を通し参加者は遺伝子組み換えの有用性について理解を深めた様子でした。

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