イベント一覧

セミナー:欧州における遺伝子組み換え作物の現状と将来像

バイテク情報普及会は9月28日、欧州バイオ産業協会(ヨーロッパバイオ)ヨーロッパ・グリーン・バイオテクノロジーのプロジェクトマネージャーであるラファエラ・コロンボ(Rffaella Colombo)氏を講師としてお招きし、都内でセミナー「欧州における遺伝子組み換え作物の現状と将来像」を開催しました。

EUにおいて遺伝子組み換え作物の利用が承認されるプロセスは、申請者が国家機関に申請書類を提出した後、EFSAでのリスク評価、欧州委員会、食品生産流通過程および家畜衛生常設委員会を経て、農業理事会または環境理事会(栽培申請の場合)で3分の2以上の賛成を得て承認に至ります。否決された場合は欧州委員会に差し戻され、EFSAで肯定的な評価が得られれば承認に至ります。

ラファエラ氏はこのプロセスの問題点として、EU域外に比べて承認に時間がかかることを挙げ、「EUでは家畜飼料の多くを輸入に依存しているのに、輸出国で既に生産されている遺伝子組み換え作物の承認が遅れれば、貿易に支障をきたし深刻な飼料不足に繋がりかねない」として、承認プロセスの迅速化をはかり、科学をベースにタイミングよく承認していくべきと述べました。未承認の遺伝子組み換え作物の混入の許容レベルを設定する必要性も指摘しました。

欧州では遺伝子組み換え作物の作付面積が年々増加しており、「農業生産者は、世界市場における競争力をつけるために、遺伝子組み換え作物の導入を望んでいる」とラファエラ氏はいいます。遺伝子組み換え作物の栽培について、特別なルールが必要なわけではなく、種まき時期をずらしたり、農業機具を洗浄したりといった従来から行われてきた方法によって、既存農業や有機農業と共存しながら十分に管理できるとの考えを示しました。実際に、スペインでは共存に関する法律は一切導入されていないにも関わらず、適正農業規範と隔離距離や緩衝地帯の導入のみで過去10年間に渡り共存に成功している事例を紹介しました。

消費者意識に関しては、Eurobarometerの2005年の報告によれば、EU市民の2人に1人は「バイオテクノロジーの応用によって生活の質が向上する」と考え、「環境や健康のためになるのであれば支持する」と答えています。EU市民の間でもバイオテクノロジーを受け入れる人が増えていることが示されています。

最後にラファエラ氏は将来の展望を語り、「EUの農業が世界市場で競争力を保つためには遺伝子組み換え技術が果たす役割は非常に大きい。農業生産者および消費者が遺伝子組み換え作物を含めた幅広い選択肢を持てるよう支援をしていきたい」と述べました。

Pagetop