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メディアセミナー:ロシアでのラットによる生殖毒性試験を科学的に検証する

バイテク情報普及会は6月26日、都内で緊急メディアセミナー「ロシアでのラットによる生殖毒性試験を科学的に検証する」(共催:(社)日本植物油協会・油糧輸出入協議会・アメリカ大豆協会、協賛:(財)バイオインダストリー協会・日本国際生命科学協会)を開催し、メディアや食品企業などの関係者約100人が参加しました。

このセミナーは、2005年10月にロシア科学アカデミー高次機能・神経生理学研究所所属のイリーナ・エルマコバ(Irina Ermakova)博士が、「除草剤耐性遺伝子組み換え大豆をラットに食べさせたところ、生まれた仔ラットは生後3週間で過半数(55.6%)が死亡し、成長も遅かった」と発表したことを受けて企画・開催されたものです。この論文の結果について、一部の消費者団体などからは、通常の飼料を与えた場合(死亡率6.8%)や、普通の大豆(非遺伝子組み換え)を追加して与えた場合(死亡率9%)と比べて、ラットの死亡率が高まったとして、遺伝子組み換え大豆は次世代へ重大な影響を与えるのではないかとの疑問が出されていました。そこで、専門家を講師に招き、エルマコバ博士の実施した実験の疑問点などについて、情報提供を行いました。

はじめにエルマコバ博士の実験の概要を紹介し、遺伝子組み換え大豆を食べていないグループでも生育不良が多く見られ、データのばらつきが大きいこと、飼料の与え方や管理の方法などの実験条件に不明確な点が多いことなど、博士の行った実験に対する疑問点を整理し、講演の中で専門家からの意見を伺いました。

FDA(米国食品医薬品局)バイオテクノロジー安全性専門官のジェームス・マリアンスキー氏は、「国際基準に基づく遺伝子組み換え作物の安全性評価」について解説し、現在の安全性評価の手法は、世界的に受け入れられている信頼度の高いものであり、市場に出ている遺伝子組み換え作物および食品は、それに則って安全性が確認されている。遺伝子組み換え食品が世界で流通するようになって10年になるが、これまでに健康被害は確認されていないと強調しました。

(財)残留農薬研究所毒性部副部長兼生殖毒性研究室長の青山博昭氏は、「次世代への影響をみる動物実験の理論と実際」と題して、一般的なラット2世代繁殖毒性試験について紹介しました。そして一般的なガイドラインに沿った試験と比較して、エルマコバ博士の実験は試験サンプル自体が3?6組と少なく、これでは予備実験ともみなせないと指摘しました。

また、対照群のラットの体重のばらつきが大きい点に着目し、「通常は個体差が10%以内に抑えられていなければ信頼度の高い結果とはみなせない。遺伝子組み換え大豆を与えていないグループでも、発育不良が多くみられるので、栄養状態や飼育管理そのものに問題があったことをうかがわせる結果である」と分析しました。

最後にコメンテーターとして、東京大学名誉教授の唐木英明氏は、「審査」と「再現性の検証」によって科学界が認めた内容のみが正しい科学であると語り、正しい科学の見分け方について、知識と経験がある専門家が内容を「審査」した論文や、多くの研究者によって「再現性が検証」できた実験結果かどうかなどを見るべきであるとアドバイスしました。このような点からエルマコバ博士の実験の内容には疑問点が非常にあり、これは科学の質の問題であると強調しました。

質疑応答では、「たとえ実験条件に不備があったとしても、今回の結果から、なんらかの傾向を示していると読むことは出来るのか?」との記者の問いに対し、講師は「統計学的観点から、3-4例では何も言えない」「この結果からは何もくみとれない」と答えました。

本セミナーは東京のほか、福岡、大阪、札幌でも開催され、参加者からは遺伝子組み換え作物の安全性評価や動物試験の方法について理解を深める良い機会となったなどの感想が寄せられました。

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