GMO Answers
質問
国連貿易開発会議の最近の報告には、モンサント社、BASF社、バイエル社、カーギル社、デュポン社、シンジェンタ社、ダウケミカル社は、農業の持続可能性を妨げており、巧みな操作で食料安全保障をも脅かしているとの主張が記されています。例えば、「モンサントとその関連会社は1990代に、インドネシア当局に対し遺伝子組み換え作物を支持するよう働きかけた。2005年には、インドネシア環境省高官に賄賂を渡し、海外汚職行為防止法に違反した罪で、米国司法省に150万ドルの罰金を支払っている。」 [http://www.fool.com/investing/general/2013/09/24/un-these-7-companies-impede-global-food-security.aspx] これらの疑惑を、あなた方はどうとらえているのでしょうか?
回答
私もこの記事を「Motley Fool(WEBサイト)」で読み、言葉を失うほど驚きました。なぜなら私もここに名前の上がっている多国籍企業の社員の一人であり、私の妻の親戚にはアフリカの都市や農村に住む者も少なくないからです。私は、彼らが食料を生産し毎日の食事をまかなうために、どんなに苦労しているかを知っていますので、この記事で、その私が食料安全保障の妨げになっていると指摘されたのには、とても驚きました。 しかしながら、Motley Foolではじめて目にして以来、私はその記事の情報源がどこにあるのかを探しました。その結果、ご質問にあるように「国連から正式に承認された、あるいは発行されたレポート」ではなく、様々な寄稿者からの記事を編集した「貿易と環境報告、2013」と呼ばれるものの中にある、一人の筆者が書いた文章であることを突き止めました。また、その免責文には、「この報告書の記事に述べられた意見は、筆者個人の見解である」と記されているのです。
ご質問のMotley Foolの記事について言えば、その中の幾つかの記述は間違ってはいません。世界の需要を満たすための食料は十分生産されている、と指摘した2002年のFAO報告は、その時点では、恐らく間違いではなかったでしょう。また、世界の食を支えるための農耕地も多分足りていたでしょう。しかし、2008年、そして2012年にも発生した米国の干ばつは、世界の穀物備蓄量を過去最低の水準にまで低下させ、私たちの食料供給が、きわめて脆弱で、世界的に結びついたものであることを明らかにしました。これから先、(世界の人口が増え続ければ)私たちは、農耕地にとてつもない圧力をかけることになるでしょう、おそらくもっと重要なことは、世界の水資源が不足することかもしれません。
このことは、私たちの課題が、より多くの栄養に富む食料を、それが最も必要とされ、消費される国々で、環境的に持続可能な方法によって生産することにあることを示しています。 最も人口の密集する地域では、引き続き人口が増加すると予想されており、作物の収量が低く、慢性的に収量の低迷にあえいでいます。痩せた農地、水分効率の悪い作物、高い温室効果の排出、そして農業資材や市場へのアクセスが困難であることなどは、共通する課題です。また、これらの地域は、都市部であれ農村部であれ、歴史的に貧困率が高く、栄養や健康状態も良いとは言えません。
農業研究への投資は、成長への一貫した原動力となってきました。私たちは、私たち自身のビジネスへの投資や公的研究組織とのコラボレーションを通して、大規模な農家やアフリカやアジアにおける小規模農家の双方に利益をもたらすような、規模によらない技術の開発に取り組んでいます。ちなみに、記事に述べられていた様々な「有機農業」の手法は、何も有機栽培に特有なものではなく、多くの健全な農場経営手法の一部でもあるのです。他の農業資材と併せて使用することで、農業の持続可能性の強化や食料供給の改善が実現可能になるのです。
以上が、公私にわたって私が取り組んでいる事柄です。この20年間に、10億もの人々が極度の貧困から脱しましたが、私たちは、引き続き、その勢いを維持できるようにしたいと思っています。このためには、支援が必要です。農業研究を推し進めるための公的資金、より生産性の高い様々な形のコラボレーション、そして、技術革新に向けた、より科学ベースのルールや規制、などです。私は、着実に前進していると考えています。 「食料安全保障を妨げている」という記述からは程遠く、私たちは、食料供給をより確実にし、生態学的に強い世界に向け、着実に前進しています。
回答者 ジム・ギャフニー博士回答者
ジム・ギャフニー博士
Jim Gaffney
バイテク関係規制部門、ストラテジー・リーダー、デュポン・パイオニア社