GMO Answers
質問
米国では毎年厖大な量の食品ロスが発生しています。一方、世界の食糧供給問題を解決するにはGMO食品が必須であるかのように言われています。これら2つの点の関連性について、資料からの抜粋ではなく専門家としての率直な意見を聞かせてください。
回答
食品ロスは、豊かな国々においても発展途上諸国においても、解決しなければならない問題ですが、どのように解決すべきかは、国や地域によって大きく異なります。あらゆる食品ロスを無くすことができたとしても、持続可能な方法での更なる食糧増産は、依然として必要ですし、バイオテクノロジーはそのための多くの解決策をもたらします。
初めに食品ロスについて考えてみましょう。米国のような先進経済諸国では、食品全体の30%ほどが食品ロスと推定されており、これら食品の大部分は購入後に捨てられています。例えば、調理された後に捨てられる食品、あるいは賞味期限が過ぎるまで冷蔵庫で長期間保存された後に捨てられる食品などです。一方、発展途上諸国では、収穫後、調理されるまでに起こる食品ロスが最も大きく、穀物は、例えば貯蔵施設内で病害虫の被害を受け、失われています。どちらのタイプの食品ロスについても、低減を目指して様々な取り組みがされてはいますが、食糧の生産性向上は、尚も極めて重要な課題です。
アフリカ大陸に目を向ければその理由が良く解ります。アフリカ大陸の人口は、1980年から2010年にかけ、およそ2倍に増えました。そして2050年前後までには、更に倍増するとみられています。一方、アフリカ大陸の2大主要穀物であるトウモロコシとソルガムの生産量は、同じ期間に、それぞれ50%と15%しか増えておらず、明らかに人口増加率とのバランスが取れていません。
この問題は、単に生産性の向上を図るだけでは済みません。私たちは、持続可能な方法でそれを成し遂げる必要があることを忘れてはなりません(Tilmanetal,2011年)。また、労働力の不足も多くの国々で大きな問題になりつつあります。これは人口が大都市に集中する一方、地方では過疎化が進行しているからです。つまり、限りある土地や労働力、水資源を有効に利用するためには、農地1ヘクタール当たりの生産性、そして農業人口1人当たりの生産性を高めていかなければならないということです。
バイオテクノロジーは、私たちがこれら様々な課題を解決する上で、手助けとなる手段の一つです。かつてGM技術はハワイのパパイア産業を壊滅の危機から救いました。現在では、傷に強いジャガイモや(皮をむいても)褐変しにくいリンゴといった新たなGM技術も生まれており、これらの技術が商業化され広く普及すれば、食品ロスの低減につながるものと期待されています。米国以外では、特に小規模農家における過酷な労働の軽減、病害虫・雑草管理の改善、更に主食用作物の栄養成分改善などに、GM技術は幅広く活用される可能性があります。最近発表されたある報告書は、GM作物の最大の受益者は発展途上国の小規模農家であると指摘しています。
もちろん、バイオテクノロジーが、食品ロス問題の唯一の解決策というわけではありません。しかしながら、生産性と持続可能性の双方の改善を目指す総合生産システムにおいて、バイオテクノロジーは不可欠な要素と言えるでしょう。
回答者 ジム・ギャフニー博士回答者
ジム・ギャフニー博士
Jim Gaffney
バイテク関係規制部門、ストラテジー・リーダー、デュポン・パイオニア社