GMO Answers
質問
仮にもろもろの障壁が取り除かれたとして、10年後、20年後そして30年後に、GM作物はどのような役割を担っているでしょうか?
回答
この質問は個人的にとても興味があります。何故なら、米国の平和部隊に在籍していたとき、私は、厳しい環境がいかに作物を荒廃させるか、自給農業がいかに困難か、そしてリスク管理がいかに重要かを、じかに見聞したからです。発展途上国の農家には、セーフティネットが殆どありません。ですから、それぞれの栽培シーズンがとても重要なのです。一方、私は、バイオテクノロジーが農家や農村にとって、いかに大きな力になるかを知る機会にめぐまれました。それ以来、私は、バイオテクノロジーに大きな期待を持つようになり、将来的に、バイオテクノロジーは、1)食料や栄養の改善に役立つ、2)農家が土地や水、労働力をより上手く活用する手助けになる、そして3)地方の農家が自給農業を超えるために役立つ、ことを確信するに至りました。このような進歩は、次世代をになう若い人たちが、「農業に情熱をもち農家を続ける」ための手助けになることでしょう。往々にして世界では失われつつあることですが。
私たちは、すでに前進しています。科学者たちは、バイオテクノロジーが、プロビタミンA、鉄分や亜鉛の量および安定性を向上させ、ソルガムに含まれるタンパク質の消化率を引き上げるために役立つことを実証しています。ソルガムは伝統的に主要栄養素の含量が低く、この作物に依存するアフリカの人々には、近い将来、この技術がベネフィットをもたらすものと期待されています。また、「ゴールデンライス」も、栄養素が改善されたバイテク作物として期待されています。これは、ベータ・カロテンの含有量を遺伝子組み換え技術で改善したコメです。「ゴールデンライス」を食べることで、1歳から3歳の子供が、一日に必要なプロビタミンAの摂取量の半分を賄うことができます。またバイオテクノロジーを活用することで、育種家たちは、高品質のハイブリッドをより短期間で開発することができるようになります。これは、農業の生産性や持続可能性の速やかな改善に役立ちます。科学者たちは、現在、発展途上国の人々が毎日の食事として摂る主食作物を、更に改善するために取り組んでいます。実際に消費される国々で、食糧生産量を引き上げることは、これらの国々の食料安全確保にも役立ちます。
バイオテクノロジーは、また、農家が少ない資材投入で、より多くの収穫をあげる手助けにもなります。米国農務省のデータでは、世界のトウモロコシ栽培面積は1981年以降31%増えたのに対し、生産量は93%も増加しています。これは、過去30年で、凡そ2億4,000万エーカーのトウモロコシ畑が増えたに等しい生産量なのです。このような増加傾向は、増大する食料需要を満たす必要がある限り、今後も変わることがないでしょう。他方、私たちは、食料の増産を、干ばつや土壌養分の低下、害虫による被害といった条件の中で、達成しなくてはなりません。多くの専門家は、これらの問題は、今後ますます深刻になると予測しています。ですから、次世代のバイテク作物は、より乾燥耐性のある品種がより多くの地域で活用できるよう、作物が土壌養分の足りない土地でも栽培できるよう、また、ますます強まる病害虫の加害にも耐えられるよう、といった視点で開発されています。
私と同じような思いをお持ちであれば、バイオテクノロジー導入を発展途上国で更に推進することは、素晴らしいことだと同意いただけるのではないでしょうか。アフリカへの生物強化ソルガム導入プロジェクトやゴールデンライスについて、お知りになりたい場合は、WEBでご覧いただけます。また、バイテク作物の今後について、別の見解をお知りになりたい場合は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の発行した、世界のバイテク/GM作物の商業栽培状況:2012のエグゼクティブ・サマリーをご覧ください(サマリーの最後に「将来展望」が記されています)。
回答者 ジム・ギャフニー博士回答者
ジム・ギャフニー博士
Jim Gaffney
バイテク関係規制部門、ストラテジー・リーダー、デュポン・パイオニア社