GMO Answers

質問

質問者 arex (アラスカ州、アンカレッジ)

大学や政府機関で研究を行うアカデミックな科学者は、新しいGMOの開発にどのように関わっているのでしょうか?より栄養素利用効率の高い作物や、より害虫に抵抗性をもつ作物などの開発に興味があるのは、バイテク企業に勤める科学者だけではないと思うのですが?

回答

アカデミックな研究者たちは微妙な存在です。彼らは(私たちは)、業界にいればもっと稼げたでしょうし、うまくいっても90%の割合で却下されてしまう補助金申請の作業もしなくて済んだでしょうし、また「論文を発表するか、あるいは消え去るか」の選択に悩まされることも無かったでしょう。それにも関わらず、私たちがアカデミックな研究者でいるのは、科学が公共の場に存在すること、そして州や国民のために働くことが、とても大切な使命であると考えているからなのです。

私たちは皆さんのために働いています。ですが、ご存知でしょうか?私たちは、遺伝子組み換え植物(GMO)という世界で戦うことはできないのです。多くの規制や試験にかかる莫大な費用、そして長年を要する検証、―私たちには、とてもこれらを実行できる予算はありません。

悲しいかな、私は、私が勤務する建物の同じ階で、科学者たちが葉酸や他のビタミンなどで栄養強化した食品をつくるためにGM技術を活用したり、殺虫剤や殺菌剤の散布を必要とせずに病気に耐えるGM作物や、(干ばつや洪水のような)環境ストレスに耐える植物を作り出したりした例を、幾つも挙げることができます。これらの例は、私の席から30メートルと離れていない所でのものです。このうちどれだけが商業化されると思いますか?一つとしてありません。ゼロなのです。

なぜかと言いますと、費用がかかりすぎるからです。仮に、私たちがこれらの技術を低コストで提供したり、流通させたりするとしても、市場化のための費用負担は、どうしたらいいのでしょうか?損をするのは誰でしょうか?それは、この技術を必要としている環境や農家の人々なのです。

とは言え、大きなバイテク企業が、自社が開発した形質や遺伝系統の使用許諾を、他者に与えた例がいくつかあります。私たちは、そのような(未知なものの)発見には大変優れています。自分たちで市場化できなければ、企業が費用を支払って利用することも無いわけではありません。ただし、そのような例はめったにありません。

大抵の場合、私たちは高い参入障壁に阻まれてしまいます。とても残念なことです。GMOパパイヤは、公共機関が開発した製品でした。このパパイヤは産業を救い、今日に至るまで大成功を収めています。これは、一連のプロセスがどう機能すべきかを示す、とても良い例だと言えるでしょう。

ただ、これが現在の公共機関で行われたとすれば、反GMO運動がつぶしてしまい、ハワイでのパパイヤ栽培は終焉を迎えていたことでしょう。皆さんは信じられないかも知れませんが、林檎や柑橘あるいは栗で、反GM運動がどれだけ必死に、あらゆるイノベーションを阻止しようとしているかをご覧ください。これらのイノベーションは、アカデミックな研究室が、農業や生態の手助けとなるように取り組んでいるものなのです。

このような状況が変わる可能性はありますし、変わってほしいものです。皆さんの州の農家の問題を解決するための方策を考え、実験研究を行い、実証を確認し、その後、商業化ができないがために、貯蔵庫で種子が死に絶えるのをただ見守るだけ、と言うような状況はつらいものです。

そして、噂にも関わらず、私たちのほとんど誰もが、企業からの支援を受けていません。私の勤める大学では1%ほどで、高々2-3の研究室への助成に過ぎませんでした。残りの人々は頑張り抜くだけです。すばらしい質問をありがとうございました。

回答者 ケビン・フォルタ

回答者

ケビン・フォルタ

Kevin Folta

フロリダ大学、園芸学科、教授兼学科長

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