GMO Answers

質問

質問者 brec (ネバダ州、スチームボート)

遺伝子組み換えBt植物では、導入された遺伝子を含むDNAが、全ての細胞に存在するのですか?また、導入された遺伝子を含む細胞は、いつ、どのような条件で、殺虫剤タンパク質が発現するのですか?

回答

一目で分かる回答:

  • 稀な突然変異あるいは稀な染色体異常がなければ、植物の全ての細胞には同じDNAが存在します。
  • 植物体内には数多くのプロモーターが存在することが分っており、これにより、研究者は、特定の組織内にある対象遺伝子のコーディング領域(例えばBTタンパク質やラウンドアップレディータンパク質がコード化されている領域)を発現させることができます。
  • 組換えイベント(系統)が分離されると、研究者は、目指す組織だけに遺伝子が発現されているか否かを確認します。また、プロモーターは、そのプロモーターが発現する組織の種類によってだけではなく、発現する量によっても識別することができるため、発現の度合いについてもモニターします。
  • どの組織がBTタンパク質を発現するかは、プロモーターや試験対象である特定の組換えイベントによって異なります。植物組織の大部分が害虫に加害されやすいことを考慮すれば、植物組織の多くに発現するようなプロモーターが好都合でしょう。

 

 素晴らしい質問を二つお寄せいただき、ありがとうございます。まず、「組換えBt植物の中のすべての細胞に、Bt導入遺伝子が含まれているのですか?」という質問ですが、一般的な答えは「はい」です。稀な突然変異、あるいは稀な染色体異常がなければ、植物の中の全ての細胞には同じDNAが存在します。穀物の種子(トウモロコシ、小麦、オーツ、ライ麦、コメ等)の大半を占める部分は胚乳と呼ばれ、そこにはそれぞれの遺伝子が三つ分存在するのに対し、他の細胞や組織には、二つ分しか存在しません。しかしながら、すべての組織に存在するのは、同じ遺伝子の相補体です。生殖細胞(花粉や子房)には、それぞれの遺伝子は一部しかなく、これらの細胞を生産する植物が、ある遺伝子について種類や形の異なるものを二つ含むような場合には、これらの細胞は遺伝子学的に異なることになります。雑種強勢を用いるトウモロコシのような植物は、これに該当します。

植物に言えることは動物にも当てはまります。面白いことに、ヒトの鼻と舌は全く同じ遺伝子の組み合わせを持っていますが、それぞれの組織は異なる働きをしますし、大きさや形も異なります。これは、遺伝子の発現に違いがあるからなのです。たとえ組織が同じ遺伝子を持っていたとしても、組織によって、異なる遺伝子が発現したり、活性化されたりするのです。この差次的遺伝子の発現ネットワークになくてはならないのが、「プロモーター」と呼ばれる遺伝子の一部です。これはDNAの配列で、様々なタンパク質と特定の細胞にしか発現しない分子を結びつける働きをします。この配列が、舌にではなく鼻に、または心臓ではなく肝臓に、というように、遺伝子発現の指示を出しているのです。

同じことが植物でも起こります。このようなDNA配列(プロモーター)の多くは植物にも確認されており、これにより、研究者は、特定の組織内にある対象遺伝子のコード領域(例えばBtタンパク質やラウンドアップレディータンパク質がコード化されている領域)を発現させることができるのです。

つまり、組換え遺伝子には、大抵、異なるソース由来の部分が含まれているのです。もし研究者が、例えば穀物の胚乳にのみ、ある遺伝子を発現したいと考えた場合、以前の実験を通じて胚乳にのみ発現することが確認されたプロモーターを探し、そのプロモーターを採用するわけです。組換えイベント(系統)が分離されると、研究者は、目指す組織だけに、遺伝子が発現されているか否かを確認します。また、プロモーターは、それが発現する組織の種類によってだけではなく、発現する量によっても識別することができるため、発現の度合いについてもモニターします。

よって、Btタンパク質を発現する組織についての二番目の質問への答えは一つではありません。プロモーターや試験対象である特定の組換えイベントによって異なります。植物組織の大部分が害虫に加害されやすいことを考慮すれば、植物組織の多くに発現するようなプロモーターが好都合でしょう。

回答者 L.カーティス・ハナ博士

回答者

L.カーティス・ハナ博士

Dr. L. Curtis Hannah

フロリダ大学 教授

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