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日本学術会議 提言「我が国における遺伝子組み換え植物研究とその実用化に関する現状と問題点」

日本学術会議は7月、日本における遺伝子組み換え技術を取り巻く現状についての状況や、今後の応用、実用化に向けての問題点と解決の重要性についての提言を発表しました。
今回の提言の背景として、人口増加、食料需要の急増、二酸化炭素濃度の増加など、地球的規模での危機や、これまで食料とされてきた作物が「エネルギー作物」として需要が高まり、競合が起こるとの予想から、供給の不安定化の要因の一つとなっていることがあります。そして、これらの問題を総合的に解決するためには、原材料である植物の潜在能力を解明し、効率よく利用することが必要であり、諸外国では多くのプログラムが実施されつつあるのに対し、国土が狭く人口の多い日本においても、植物の利用効率を上げること、すなわち植物科学研究における基礎研究とその応用研究が強く望まれているとしています。
現在、植物の利用効率を上げる技術の一つとして遺伝子組み換え(GM)が世界的標準技術となり、各国で急送に進行、今後諸問題の解決のための突破口になると考えられています。一方、日本においても、基礎研究において世界を先導する優れた研究実績が蓄積されているにもかかわらず、食用作物については自国での栽培、収穫はしておらず、大量に輸入して利用する状態にとどまっている現状が解説されています。そして、日本の研究成果を諸問題解決のために還元するためには、研究基盤を幅広くするとともに、科学者と多方面の関係者が協力し、国民の理解に向けて努力する必要があると述べられています。

それら問題点の解決するために求められる取り組みとして、
■植物遺伝子機能解析の戦略的な取組を目指す
■GM技術の安全性と野外圃場試験地の整備を行う
■若手人材育成を進める
があげられており、GM植物の社会的な需要に向けての取組を進める基礎的研究の更なる発展や、日本で主流とされる小規模方農業、地域特性に応じたオーダーメイドの品種改良の推進など実用化へ向けた研究戦略の重要性が述べられています。 また、科学技術の受容に対する適切な判断を養う教育を力を入れるべき課題の一つにあげ、GM植物利用に対して、科学者から生産者、消費者まで全てが共通の情報を得る体制を整え、科学的な認識の普及を図る必要がある、としています。
この他、31ページからなる提言では、日本におけるこれまでの植物科学技術の発展から、より詳細な、日本と各国のGM作物をめぐる現状、安全性評価の仕組みやカルタヘナ法の現状なども解説されています。

日本学術会議
「我が国における遺伝子組み換え植物研究とその実用化に関する現状と問題点」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t99-2.pdf

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