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名古屋大学 イネの収量を劇的に増加させる遺伝子を発見、応用にも期待

名古屋大学生物機能開発利用研究センター(以下、研究センター)の芦苅教授らの研究グループは、イネの収量を劇的に増加させる遺伝子の同定に成功したと発表しました。この発見は、同じイネ科のコムギ、トウモロコシの収量増加にも寄与できるもので、今後起こりうる食糧危機に対して大いに貢献できると期待されています。この成果は、5月23日に米国科学誌nature genetics電子版に掲載されました。

イネは穂の軸から何回か枝分かれを重ね、その先に花をつけます。1回目の枝分かれでついた穂を1次枝梗といいますが、日本の一般的なイネ品種「日本晴」と、研究センターが保存する収量の多い系統「ST-12」を比較したところ、コメの着粒数の多さは、1次枝梗の数の多さに依存していました。そこで、1次枝梗を制御する遺伝子の同定を試みたところ、12本あるイネの染色体の第8染色体に、枝梗数の違いを導く遺伝子があることを発見しました。この遺伝子はWFP(WEATHY FARMER’S PANICLE)と名づけられ、日本晴に比べST-12では、幼穂をつくる段階でWFPの発現量が10倍近く上昇していることも明らかとなりました。

また、WFPがどの程度収量を増加させるかを調査したところ、一般の日本晴の1次枝梗が約11.6本だったのに対し、日本晴にWFPを導入した系統では2倍の約21.4本に増加しました。また着粒数も、2232粒に対し3142粒と約41%増加しました。加えて、既に研究センターが同定していた着粒数を増加させる遺伝子Gn1と同時に導入すると、1次枝梗が23.8本、着粒数は3396粒と約51%増加しました。

穀類の収量増加を目指した取り組みは広く行われ、数%上昇させるのも大変なことだとされていますが、今回のWFP遺伝子を利用することで、イネの収量を劇的に増加させることが明らかになりました。病害虫に強い遺伝子、不良環境地適応性のある遺伝子との同時の導入など、栽培環境に合わせた「テーラーメード分子育種」の可能性も出てくるなど、今後、今回発見した遺伝子を活用することで、食糧危機の回避の一躍を担うことができると期待されています。

名古屋大学プレスリリース
http://www.nagoya-u.ac.jp/pdf/research/news/20100524_nubs.pdf?20100525

Nature Genetics
http://www.nature.com/ng/journal/v42/n6/full/ng.592.html

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