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欧州バイオ産業協会 遺伝子組み換え作物の社会経済的影響に関する報告書を発表
ヨーロッパバイオテクノロジー産業連合は、欧州のバイオテクノロジー業界を代表する団体で1996 年に設立、バイオテクノロジーに関する情報提供などを行っています。
報告書は以下の構成でまとめられています。
1、イントロダクション
2、生産における世界的な影響
3、マクロ経済への世界的な影響
4、環境への世界的な影響
5、EUにおいて利用される2種のGM作物の影響
6、EUにおける経済的な機会損失
7、EUにおける流通管理等の影響
8、規制コスト
9、まとめ
イントロダクションでは、1996年の実用化以来、急速にGM作物が普及し、収量のアップや農薬の低減、CO2排出量の削減などに寄与していることに加えて、社会経済的にもGM作物の生産が影響を与えているため、その分析を行うことが重要であると述べています。
また、生産における影響については、ISAAAによる栽培状況の調査結果を取り上げ、2010年には29カ国15万人の生産者がGM作物の栽培に取り組み、それによって大規模・小規模両方の生産者が同様にその利益を受けていること、世界とEUの栽培面積や生産者数などの比較も掲載しています。
マクロ経済への世界的な影響については、主に開発途上国の小規模生産者において農薬の使用、労働、燃料コストの削減によって生産コストが削減されていること、人口の増加や耕地の減少に対して貢献していることが述べられています。また、トウモロコシ、ダイズ等の作物の価格についてもGM作物の導入が無ければ数%程度価格が上昇すると推定し、GM作物の利益は、生産者、消費者の間で共有されているとしています。さらにGM種子について、多国籍企業によって開発が行われ、インドや中国の会社が関わるBtワタなど、多くの開発に道が開かれていることを紹介しています。
環境への世界的な影響では、窒素利用効率が良いことから、非GMよりも肥料や水の利用が少なくて済むこと、土地の耕作を減らすことによるCO2排出量や農薬使用量の減少から、環境に対して貢献し、生物多様性に対しても、非GM作物の栽培と同様の影響となるとしています。
EUでは現在、害虫抵抗性GMトウモロコシと工業用のGMジャガイモの2種のGM作物が栽培されています。2010年にはGMトウモロコシを栽培したEU加盟国は8カ国でした(ISAAAより)。GMトウモロコシの大きな栽培国であるスペインを例に挙げ、状況やメリットを述べるとともに、天然デンプンを効率よく生産できるGMジャガイモについて、2010年の承認以来、生産地の社会経済的に大きな役割を果たすとともに、天然再生可能資源として有効に利用されていると説明しています。また、EUでもしGM作物を育てていた場合、社会経済的な機会損失の分析や、輸入などGM作物の流通管理等の分析も行っています。
最後に、GM作物がより生産効率が高いということは、持続可能な農業へ大きく貢献できるとして、栽培が承認された地域では、生産者は社会経済的に利益のあるGM作物を選ぶだろうとする結論をまとめています。
Europa Bio「GM crops :Reaping the benefits, but not in Europe」
http://www.europabio.org/positions/GBE/EuropaBio%20SocioEconomics%20May%202011.pdf#search='GMcrops reaping the benefits, but not in Europe'