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食品安全委員会「GMトウモロコシの安全性に新たな懸念はない」ことを確認
食品安全委員会は、2009年12月にフランスの学識者が発表した論文中に、GMトウモロコシを与えたラットの毒性試験をめぐって、その安全性に懸念があるのではないかとして海外でも議論になっていることから、第320回食品安全委員会の議題にこの問題を取り上げて検討を行い、安全性について問題がないことを確認しました。
この論文は、フランスのSeralini教授らが、開発企業が提出したGMトウモロコシ飼料に関するラットの毒性試験について異なる統計手法を用いて再解析を行ったところ、試験結果に有意差が認められたとして発表したものです。この内容が、同系統のGMトウモロコシの安全性に係る審議結果に影響するかどうか、食品安全委員会遺伝子組み換え食品専門調査会において検討を行った結果、「この論文の指摘は妥当ではなく、ヒトの健康に悪影響を及ぼすことを示す新たな懸念は無いと考えられる」として、第320回食品安全委員会においても確認されました。
今回論文中で指摘されたのは、除草剤耐性トウモロコシNK603系統、害虫抵抗性トウモロコシMON810系統及びMON803系統で、これら3系統は2001,2002年に厚生労働省において既に安全性審査の手続きが終了したものです。また、これらの掛け合わせ品種9品種について、食品安全委員会では改めて安全性の確認を必要とするものではないと判断しています。
この議論を遡ると、07年3月にSeralini教授らが、別のGMトウモロコシであるMON863を餌に混ぜた飼料を与えたラットの90日間反復投与毒性試験で得られたデータ(開発企業提出)を異なる統計手法を用いて再解析すると、非組み換えトウモロコシと比較して、複数の検査値で優位な差が認められるという論文発表になります。この論文も当時、欧州では議論となりましたが、欧州食品安全機関(EFSA)及びオーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は安全性に問題は無いと結論付けています。当時も食品安全委員会は、用いた統計解析方法は個体差と反復測定における相関を考慮しておらず適当ではないこと等から「指摘な妥当ではなくヒトへの新たな懸念はない」と確認しています。
今回のSeralini教授ら論文も、この時と同様の手法でデータ解析を行ったものですが、食品安全委員会遺伝子組み換え専門調査会は、検討結果についてはは容量相関性がなく、腎臓・肝臓に認められたとする統計学的有意差は毒性学的意義に乏しいものと考えられるとして、3系統の摂取が血液、肝臓および腎臓に毒性を示すことを示唆する新しい証拠を提示しているとは言えないとしました。さらに、安全性評価指針に基づく審議結果を考慮すると、これら3系統のラット90日間反復投与毒性試験データがヒトの健康に悪影響を示唆するというseralini教授らの指摘は妥当ではないと考えられるとして、ヒトの健康に悪影響を及ぼすことを示す新たな懸念はないと考えられると結論づけました。この結果について食品安全委員会でも確認されました。
当日の議論の詳細については、http://www.fsc.go.jp/iinkai/i-dai320/dai320kai-siryou7.pdf をご参照ください。