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ウイルスが限られた宿主にしか感染しないしくみが発見される
農業生物資源研究所では、タバコの病害ウイルスであるタバコマイルドグリーンモザイクウイルス(TMGMV)が、同じナス科のトマトに感染しないしくみを解明しました。この研究は、米国科学アカデミー紀要のオンライン版で公開されています。
ウイルスは作物に対し、収量低下等の被害をもたらします。これまで、抵抗性遺伝子などを利用した作物の開発が行われてきましたが、同時に、抵抗性を打破する変異ウイルスの出現も問題とされてきました。一方で、各ウイルスは決まった植物種(宿主)にしか感染せず、その他の種(非宿主)には感染しないことが知られています。例えば、タバコに感染するTMGMVは、同じナス科のトマトには感染しません。これまで、宿主がウイルスに感染するしくみは多く研究されてきましたが、非宿主を用いて感染防御のしくみを明らかにした例はありませんでした。
研究所では、トマトモザイクウイルス(ToMV)について、宿主であるトマトの中でも抵抗性遺伝子tm-1を持つものは感染せず、tm-1のつくるタンパク質(tm-1タンパク質)が、ToMVの複製に必要なタンパク質に結合して、その機能を阻害することを明らかにしていました。この結果に注目し、TMGMVの非宿主であるトマトのtm-1 を発現するタバコを作製しました。このタバコにTMGMVを接種したところ、その増殖が阻害され、tm-1タンパク質がToMVの阻害のしくみと同様に、TMGMVの複製に必要なタンパク質に結合して機能を阻害することが分かりました。
これらの結果から、トマトにおいてTMGMVの増殖を抑制する主要な因子がtm-1タンパク質であることが考えられ、非宿主においてウイルスが増殖できない理由を初めて明らかにしました。また、トマトにはtm-1タンパク質による阻害に加えて、TMGMVの増殖を抑制する別のしくみが存在することが示唆されており、研究所では、独立した複数の抑制のしくみが存在することが、非宿主にウイルスが簡単に感染できない要因になっていると考えています。
非宿主に着目することによって、これまで有効な抵抗性遺伝子が見つかっていないウイルスに対して、新しい抵抗性遺伝子を発見できる可能性があります。また、ウイルスは、非宿主に感染できるような変異は簡単にはしないため、打破されにくい抵抗性を持った作物の作出にもつなげられると期待されています。
農業生物資源研究所プレスリリース
http://www.nias.affrc.go.jp/press/20090508/index.html
米国科学アカデミー紀要(PNAS)
http://www.pnas.org/content/early/2009/05/07/0809105106.full.pdf+html?sid=1a7d6258-710b-4f0a-a5ff-46c0eb3e3c77
