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マックス・プランク研究所など国際研究チーム、テンサイ(sugar beet)の塩基配列及びゲノム構造を初めて解明
ドイツのマックス・プランク研究所などからなる国際研究チームは、テンサイ(Beta vulgaris ssp. vulgaris)の塩基配列を初めて解読し、ゲノム構造解析の成果を、2014年1月23日付けのNature誌に掲載しています(オンライン版:2013年12月18日)。
テンサイは世界の砂糖生産の約30%を供給する重要な作物で、バイオエタノールや家畜飼料の原料としても利用されています。テンサイはナデシコ目(Caryophyllales)に属する染色体数18の2倍体植物です(2n = 18)。ゲノムサイズは714-758メガベース(Mb;百万塩基)と推定されており、他の真正双子葉植物と同様、古代にゲノムの3倍体化が起こったことが知られています。同じナデシコ目アカザ科フダンソウ属のフダンソウ(リーフ・ビート)は、ローマ時代から栽培されていますが、テンサイは近年になって栽培化された作物の中の1つです。テンサイは18世紀末に、フダンソウと飼料用ビートの掛け合わせにより、貯蔵根に糖を蓄積する系統が選抜されたことから品種改良が更に進みました。
今回、研究チームは比較ゲノミクス及び系統発生的解析を更に発展させ、バラ亜綱、キク亜綱以外の真正双子葉植物ゲノムとして初めて、テンサイゲノムの詳細な解析を行いました。その結果、テンサイのゲノム配列は567Mbからなり、うち85%が染色体に帰属すると考えられました。また、キク亜綱及びバラ亜綱の分岐前にナデシコ目の分岐が起こっており、系列特異的な遺伝子ファミリーの拡大や喪失も明らかになりました。
さらに研究チームは、ナデシコ目アカザ科に属するホウレンソウ(Spinacia oleracea)の塩基配列についても解析し、バラ亜綱及びキク亜綱のクレード(分岐群)からの分岐の特徴を確認しました。また、ビート作物全ての祖先であるハマフダンソウ(Beta vulgaris ssp. maritima)や別の4つのテンサイ系統 のゲノム塩基配列をもとに種内ゲノム変異について解析したところ、700万の変異箇所が同定され、人為的選抜を示唆する変異性の低い広い領域の存在も確認されました。
研究チームは、ビートの甘い遺伝子(sweet genes of beetroot)の塩基配列の解読と構造解析が、世界で初めて実現できたことは大きな成果であるとコメントしています。
テンサイのゲノム配列の解読は、農業上重要な形質に影響するする遺伝子の同定を可能にし、分子育種の更なる進展に貢献するだけでなく、エネルギー生物工学分野における植物利用の可能性を最大化させるものと期待されます。
詳細はこちらのサイトでご覧ください(英語):
Nature. Volume:505, Pages:546-549, Date published:23 January 2014
http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7484/full/nature12817.html
Max Planck Institute for Molecular Genetics. ‘Deciphering the secret of the sugar beet’.
http://www.molgen.mpg.de/2397262/2013_12_18_sugarbeet_genome